【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん

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第48話 はじめての空

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朝露が光る牧場に、
小さな鳴き声が響いた。

「ぴぃ……ぴぃ……」

スピリット・バードの雛が、
巣の中で小さく翼を動かしている。
まだ羽ばたくには幼く、
でもその瞳は、もう“外の光”を求めていた。

   ◇ ◇ ◇

「おはよう」
僕が声をかけると、雛は首をかしげた。
その仕草があまりにも愛らしくて、
リューが思わず頬を寄せてしまう。

「きゅぅ……(かわいい)」
ギンが嫉妬したように尻尾を振り、
モチョがぷるんと跳ねて「ぼくも!」とばかりに寄っていく。
雛は驚いて小さく羽を広げた。

すると――
その羽から、虹色の風がふわりと広がった。

牧場の花が一斉に揺れ、
フィーネの鬣に光が宿る。
レオルがその風を感じて翼を広げ、
空気全体が一瞬、柔らかくなった。

まるで春の精が通り過ぎたようだった。

   ◇ ◇ ◇

「外に出てみるか」

僕がそっと手を差し伸べると、
雛はちょこんと乗った。
羽毛は陽だまりのように温かく、
小さな心臓が指先に伝わってきた。

外の光に触れた瞬間、
雛は大きく目を見開いた。
その瞳に映るのは、
青空と、風と、仲間たちの笑顔。

リューが翼をひらき、
「こうやって飛ぶんだよ」と見せてみせる。
ギンはその下で尻尾を振り、
「がんばれー!」と走り回る。
フィーネが花を咥えて近づき、
雛の足元にそっと置いた。

モチョは足元で淡い光を放ち、
温かな空気を送り続ける。
レオルは丘の上から見守りながら、
風の流れを調えていた。

   ◇ ◇ ◇

「大丈夫。ゆっくりでいい」

僕の声に合わせて、雛が羽を動かす。
ぱた、ぱた……。
最初はたどたどしく、
それでも諦めずに風を掴もうとする。

リューが風を送る。
モチョが足元を照らす。
ギンが声を上げ、フィーネが花を揺らす。

そして――
ふわり、と雛の体が浮いた。

わずかに、ほんの少し。
けれど確かに、空に触れた。

「ぴぃっ!」

その声は、風の音よりも澄んでいた。

   ◇ ◇ ◇

雛は一度だけ空を舞い、
僕の肩に降り立った。
小さな羽が震え、光の粉が散る。

「よくがんばったな」
その言葉に、雛は「ぴぃ」と鳴いて答えた。
リューが嬉しそうに胸を張り、
ギンとモチョが跳ねて喜ぶ。
フィーネは微笑み、
レオルは空から翼を打って風を送った。

牧場の上に、虹のような気流が描かれた。

   ◇ ◇ ◇

――新しい命が、初めて風を掴んだ日。

それは、牧場の誰もが胸に刻むだろう。
命の小さな羽音が、
今日もこの空の下で鳴っていた。
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