【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん

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第55話 風と花の収穫祭

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朝。
牧場の空は晴れ渡り、
風が花の香りを運んでいた。

丘の上では、ギンが嬉しそうに走り回り、
リューは荷車を引いて畑の方へ向かっている。
フィーネは鼻先で花の輪を編み、
モチョはその足元をくるくると回りながら光を灯していた。
レオルが空から見下ろし、
柔らかい風の道を牧場全体に広げていく。

エアルはその中央で翼を広げた。
彼の羽ばたきに合わせて風が流れ、
畑の穂が黄金色に揺れた。

――今日は、牧場の収穫祭。

   ◇ ◇ ◇

「いい出来だな」
僕が手に取ったのは、
陽の光をたっぷり浴びた小麦の束。

初めての種まきからひと月。
エアルの風が大地を撫で、
命を育ててくれた。

町からも人々が訪れていた。
子どもたちがギンを追いかけて笑い、
旅の商人たちがリューの大きな翼に目を丸くしている。
フィーネは花を配り歩き、
モチョは手のひらでぷるぷると跳ねて、
子どもたちの笑顔を映していた。

エアルは空の高みで、
風を整えるように旋回していた。

   ◇ ◇ ◇

「見ろよ、パンが焼けたぞー!」

誰かの声がして、
焚き火の方から香ばしい匂いが流れてきた。
麦を挽いて練り、
石窯で焼いたパン。
バターの代わりに蜂蜜を塗り、
温かな香りが牧場を包んだ。

僕が一口食べると、
ほんのり甘くて、風の味がした。

「うまいな」
思わず笑うと、
隣で老人も笑った。

「この味を覚えておけ。
 風のある土地のパンは、どれも命の味がする」

その言葉に、胸がじんわりと温かくなった。

   ◇ ◇ ◇

夕暮れ。
祭りの終わりを告げる風が吹いた。
焚き火の炎がゆらめき、
空が茜に染まっていく。

町の人々が帰り、
静けさが戻った牧場に、
エアルの羽音だけが優しく響いた。

彼は丘の上に降り立ち、
花の冠をくわえていた。
フィーネが編んでくれたそれを、
僕の頭にそっと乗せる。

「ありがとう、エアル」
僕がそう言うと、彼は小さく鳴いた。
「ぴぃ」

風が吹いた。
牧場の花が一斉に揺れ、
草の海が波のように光った。

その光の中で、
仲間たちが寄り添っていた。
リューが空を見上げ、
ギンが眠り、
フィーネが静かに嘶き、
モチョが星の光を映していた。
レオルはその上を旋回し、
夜の空に風の軌跡を描いた。

   ◇ ◇ ◇

――風と花の収穫祭。
それは、命への感謝の日。

今日という日がある限り、
明日もまた、風はこの牧場を包むだろう。

そして僕たちは、
その風の中で生きていく。
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