【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん

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第8話 妨害の影

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市が終わった翌日、館の広間は活気に満ちていた。
ノラが机に硬貨を広げて数え、トマスが帳簿に書き込んでいる。
銀貨の山は小さいが、辺境の人々にとっては大金だった。

「嬢様、全部で銀貨二十四枚!」
ノラの声は弾んでいた。
「初めてにしては、大成功です!」

マリエールは微笑み、帳面に書き記す。
――「初販売、完売」
――「収益:銀貨二十四」
――「課題:保存・物流」

「ええ、上出来よ。でも……これで終わりではないわ」
彼女の瞳は冷静に光っていた。
「必ず“目をつける者”が現れるはず」

◇ ◇ ◇

数日後。
村にやって来たのは、王都の商人ギルドに属する男たちだった。
豪奢な毛皮の外套に、派手な羽飾り。
彼らの背後には屈強な護衛が並び、場の空気を圧迫する。

「辺境で奇妙な実を売っていると聞いたが……」
先頭の商人が鼻を鳴らした。
「お嬢さん、王都に無断で商いを広げるつもりか? この辺りの商品流通は、すべて我らの管理下にある」

「……管理下?」
マリエールは静かに問い返した。

「そうだ。勝手に取引をすれば“密売”と見なされる。罰金を払うか、商いをやめるか、選べ」
商人は唇を歪め、銀の指輪を光らせた。

村人たちがざわめき、不安げな目を向けてくる。
狼のときと同じ――恐怖に揺れる瞳。
マリエールは一歩、前に出た。

「……なるほど」
彼女はかすかに微笑んだ。
「つまり、私たちの商品に“それほどの価値がある”と認めてくださったのですね」

商人たちが一瞬言葉を失う。
「な、何だと?」

「価値がなければ、誰も妨害などしないでしょう?」
マリエールの声は澄みきっていた。
「ご安心ください。私たちは密売人ではありません。正式に許可を得るための“交渉”を、これから始めるだけです」

その言葉に、村人たちの顔色が少し戻った。
恐怖ではなく、誇りを持てるように――。

◇ ◇ ◇

夜。帳面を開き、マリエールは記す。

――「王都商人からの妨害」
――「価値が認められた証」
――「次:交渉材料を整える」

「妨害は恐れるものじゃない。利用するもの」
彼女はインクの光を見つめながら囁いた。

窓の外、冬の星々が静かに瞬く。
その光は、鈴の花の白と同じ。
――逆境をも、輝きに変えるための光。
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