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第40話 揺れる議会
隣国グラディエルの議会堂。
ふたたび、重々しい扉が開かれる。
灰色の瞳の令嬢――マリエール=ド=ヴィエルが入場すると、議員たちの視線が一斉に注がれた。
「辺境商会を再度審議する」
議長の声が響く。
「市場における影響があまりに大きく、無視できぬと判断した」
◇ ◇ ◇
議員のひとりが苛立たしげに言った。
「だが、王都の商人ギルドは“危険”と繰り返している。
今、取引を許せば我が国は裏切り者と見なされる恐れもある」
別の議員は腕を組み、首を横に振る。
「いや、民衆があれほど熱狂している品を退けるのは得策ではない。
我らが動かねば、闇市場に流れ、余計に治安を乱すだろう」
場内にざわめきが広がる。
◇ ◇ ◇
そこへ、ギルドの密使が立ち上がった。
「辺境商会は信用ならぬ! 王都の混乱を見よ!
奴らを受け入れれば、必ず災いがもたらされる!」
だが議場の扉が乱暴に開き、声が割って入った。
「災い? 笑わせるな!」
入ってきたのは、昨日の試食会を主導した商人たちだった。
「辺境の品はすでに我らが味わった! これほどの品質は見たことがない!
もし議会が許さぬなら、我らが私財を投じてでも取引する!」
議員たちはどよめき、密使の顔は引きつった。
◇ ◇ ◇
議長が深く息をつき、槌を打つ。
「……結論を出す時だ」
沈黙ののち、彼は宣言した。
「辺境商会との通商を“条件付きで”許可する。
今後は品質を定期的に検査し、記録を議会に提出せよ」
マリエールは静かに一礼し、応じた。
「承知いたしました。私たちは誠実を何よりの武器といたします」
◇ ◇ ◇
議場を後にしたマリエールを、外の広場で民衆が迎えた。
「万歳! 鈴の花の商会だ!」
「彼女が来てから、街の空気が変わった!」
ノラは涙ぐみ、袖で目を拭った。
「お嬢様……本当に、ここまで……」
マリエールは帳面を開き、震える指で文字を刻んだ。
――「隣国との通商=承認」
――「課題:条件管理・品質証明」
「……扉は開いた。
ならば、あとは広げ続けるだけ」
◇ ◇ ◇
その光景をバルコニーから見つめる紳士は、瞳を細めていた。
「彼女はついに国を動かした。
次に必要なのは――“守る力”だ」
従者が問う。
「殿下、いよいよ……」
紳士はゆっくりと頷いた。
「近いうちに、直接言葉を交わすことになるだろう」
ふたたび、重々しい扉が開かれる。
灰色の瞳の令嬢――マリエール=ド=ヴィエルが入場すると、議員たちの視線が一斉に注がれた。
「辺境商会を再度審議する」
議長の声が響く。
「市場における影響があまりに大きく、無視できぬと判断した」
◇ ◇ ◇
議員のひとりが苛立たしげに言った。
「だが、王都の商人ギルドは“危険”と繰り返している。
今、取引を許せば我が国は裏切り者と見なされる恐れもある」
別の議員は腕を組み、首を横に振る。
「いや、民衆があれほど熱狂している品を退けるのは得策ではない。
我らが動かねば、闇市場に流れ、余計に治安を乱すだろう」
場内にざわめきが広がる。
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そこへ、ギルドの密使が立ち上がった。
「辺境商会は信用ならぬ! 王都の混乱を見よ!
奴らを受け入れれば、必ず災いがもたらされる!」
だが議場の扉が乱暴に開き、声が割って入った。
「災い? 笑わせるな!」
入ってきたのは、昨日の試食会を主導した商人たちだった。
「辺境の品はすでに我らが味わった! これほどの品質は見たことがない!
もし議会が許さぬなら、我らが私財を投じてでも取引する!」
議員たちはどよめき、密使の顔は引きつった。
◇ ◇ ◇
議長が深く息をつき、槌を打つ。
「……結論を出す時だ」
沈黙ののち、彼は宣言した。
「辺境商会との通商を“条件付きで”許可する。
今後は品質を定期的に検査し、記録を議会に提出せよ」
マリエールは静かに一礼し、応じた。
「承知いたしました。私たちは誠実を何よりの武器といたします」
◇ ◇ ◇
議場を後にしたマリエールを、外の広場で民衆が迎えた。
「万歳! 鈴の花の商会だ!」
「彼女が来てから、街の空気が変わった!」
ノラは涙ぐみ、袖で目を拭った。
「お嬢様……本当に、ここまで……」
マリエールは帳面を開き、震える指で文字を刻んだ。
――「隣国との通商=承認」
――「課題:条件管理・品質証明」
「……扉は開いた。
ならば、あとは広げ続けるだけ」
◇ ◇ ◇
その光景をバルコニーから見つめる紳士は、瞳を細めていた。
「彼女はついに国を動かした。
次に必要なのは――“守る力”だ」
従者が問う。
「殿下、いよいよ……」
紳士はゆっくりと頷いた。
「近いうちに、直接言葉を交わすことになるだろう」
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