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第59話 偽帳簿の影を追え
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王都の夜。
石畳の路地裏で、ひそやかな足音が響く。
王子の密偵たちが暗闇を駆け、広場に撒かれた“偽帳簿”の束を回収していた。
宿舎の一室。
机の上に並べられた帳簿を、マリエールは灰色の瞳で細かく読み解いていく。
「……数字の整合性が取れていない。計算式も粗雑。
けれど――ここ、見てください」
指先で示されたのは、辺境から王都へ荷を運ぶ正確な日程表。
ノラが目を見開く。
「そんな……これ、私たちしか知らないはずの数字じゃないですか!」
マリエールは帳面を開き、記した。
――「偽帳簿=粗雑」
――「だが輸送日程は本物」
――「内部情報=漏洩確実」
「……つまり。これは単なる偽造ではありません。
辺境商会の内部に近い情報が使われている。
“裏切り”は疑いではなく、ほぼ確実です」
◇ ◇ ◇
ジークフリートが眉を吊り上げる。
「獅子身中の虫め!」
大剣の男は壁に寄りかかり、短く言った。
「……足取りを辿れば、噛み跡は残る」
◇ ◇ ◇
王子は蒼の瞳を鋭く光らせた。
「その通りです。ならば、奴らを誘い出すしかない。
――囮を仕掛けましょう」
ノラが不安そうに身を乗り出す。
「囮……?」
王子は机上の紙束を取り上げた。
「本物に似せた“偽の帳簿”をこちらから流すのです。
その情報に食いついた者を追えば、黒幕に辿り着ける」
ジークフリートは唸り声を漏らした。
「危険な賭けだな」
王子は頷いた。
「ええ。しかし、ここで動かなければ民衆の信頼は瓦解する」
◇ ◇ ◇
マリエールはしばし沈黙し、帳面に記した。
――「裏切り=確実」
――「囮=唯一の手段」
――「リスク:高」
やがて静かに顔を上げる。
「……やりましょう。
真実を示すためなら、危険も受け入れるべきです」
王子の表情がわずかに和らぐ。
「やはり貴女は強い。
ならば私も、この手のすべてを使って支えましょう」
◇ ◇ ◇
こうして王都の夜に、“偽の偽帳簿”が放たれた。
罠を仕掛けた者を、逆に罠にかけるために。
鈴の花は暗闇に香りを放ち、真実の光が届くその時を待っていた。
石畳の路地裏で、ひそやかな足音が響く。
王子の密偵たちが暗闇を駆け、広場に撒かれた“偽帳簿”の束を回収していた。
宿舎の一室。
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「……数字の整合性が取れていない。計算式も粗雑。
けれど――ここ、見てください」
指先で示されたのは、辺境から王都へ荷を運ぶ正確な日程表。
ノラが目を見開く。
「そんな……これ、私たちしか知らないはずの数字じゃないですか!」
マリエールは帳面を開き、記した。
――「偽帳簿=粗雑」
――「だが輸送日程は本物」
――「内部情報=漏洩確実」
「……つまり。これは単なる偽造ではありません。
辺境商会の内部に近い情報が使われている。
“裏切り”は疑いではなく、ほぼ確実です」
◇ ◇ ◇
ジークフリートが眉を吊り上げる。
「獅子身中の虫め!」
大剣の男は壁に寄りかかり、短く言った。
「……足取りを辿れば、噛み跡は残る」
◇ ◇ ◇
王子は蒼の瞳を鋭く光らせた。
「その通りです。ならば、奴らを誘い出すしかない。
――囮を仕掛けましょう」
ノラが不安そうに身を乗り出す。
「囮……?」
王子は机上の紙束を取り上げた。
「本物に似せた“偽の帳簿”をこちらから流すのです。
その情報に食いついた者を追えば、黒幕に辿り着ける」
ジークフリートは唸り声を漏らした。
「危険な賭けだな」
王子は頷いた。
「ええ。しかし、ここで動かなければ民衆の信頼は瓦解する」
◇ ◇ ◇
マリエールはしばし沈黙し、帳面に記した。
――「裏切り=確実」
――「囮=唯一の手段」
――「リスク:高」
やがて静かに顔を上げる。
「……やりましょう。
真実を示すためなら、危険も受け入れるべきです」
王子の表情がわずかに和らぐ。
「やはり貴女は強い。
ならば私も、この手のすべてを使って支えましょう」
◇ ◇ ◇
こうして王都の夜に、“偽の偽帳簿”が放たれた。
罠を仕掛けた者を、逆に罠にかけるために。
鈴の花は暗闇に香りを放ち、真実の光が届くその時を待っていた。
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