クラスのあの子は妖怪男子!?~彩美町防衛戦~

山羊坂たまり

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一章 クラスのあの子は妖怪男子!?

1話

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「私達が住むこの彩美町あやみまちにはね、ずっと昔は妖怪が住んでいたんだよ」

 おばあさんは得意とくいげにそう言った。
 聞いているのは、彩美東あやみひがし中学校一年三組の男女八人グループ。選択授業で地域に伝わる昔話を選んだメンバーで、今日は老人ホームへ社会見学に来ている。実際に長く彩美町に住む人々に話を聞こうという取り組みだ。
 私、渡辺わたなべハルは妖怪という単語にぴくりと反応した。そしておもわず前の方に座っている男子、冬野ふゆのユキトの方を見てしまう。
 ユキトくんはちょうど一週間前にこのクラスへ来た転校生。背が高くすらっとしていて、顔立ちも整っている。

「ちょっとハル、どうしたの? ユキトくんの方をじっと見て。たしかにめちゃくちゃ格好良いけどさ、仲良くなるのは難しいと思うよ~。だれが話しかけてもほとんどしゃべらないし」

 隣に座る親友、夏目なつめリサが小声でそう言った。
 たしかにユキトくんは女子に人気だけど、私がユキトくんを見た理由は別なのに。絶対かんちがいしている。

「ち、ちがうの! ちがうから!」

 げっ、やばい。
 あわてて否定しようとしたら、つい声が大きくなってしまった。

「こら、人の話はちゃんと聞かないと鬼が出るよ」
「すみません……」

 話をしてくれているおばあさんに注意され、さらに恥ずかしい思いをしてしまった。
 もう、リサのせいだから。そんな気持ちで隣をにらむと、リサが両手を合わせてごめん、とジェスチャーを作った。
 悪気がないからにくめないんだよなぁ、リサは。

「今言った『悪いことすると鬼が出るよ』という言葉は、彩美町で生まれ育ったあなた達なら聞いたことがあるでしょう。これも昔妖怪が住んでいたなごりで、中でも鬼はとびきり凶暴きょうぼうだった。とても強い力で人間を襲って、彩美町を自分達のものにしようとしていたんだよ」

 それからおばあさんは、彩美町で暴れていた鬼達は先祖せんぞによって封印ふういんされたこと。そして他の妖怪達も、時代が進むにつれて姿を見せなくなったことを、すこし悲しそうな表情で教えてくれた。

***

 帰り道。
 私はリサと並んで夕方の彩美町を歩く。

「おばあさんがしてくれた妖怪の話、けっこう面白かったよね」
「うん、ちょっと怖かったけど。でも鬼が出るっていう言葉とか、たしかに私も小さいころよく言われた」
「それで、ずばりハルはユキトくんねらいなの?」
「だからちがうよ。ぼーっとしてたら、たまたまそこに目がいってただけ」
「うーん、本当かな?」
「じゃあ私こっちだから、また明日」
「逃げるところがあやしい……」
「リサ、いい加減に怒るよ?」
「あはは、ごめんごめん。また明日ね」

 家への方向が分かれる場所に着いたので、私はリサに手をふったあと、一人で慣れない道を進む。学校からの帰り道とは違うので、普段あまり歩いて通らない田舎道いなかみちだ。
 周りに建物や人の気配はなく、虫の声だけが響いている夕方。
 うぅ、なんかちょっと怖いな。鬼の話なんて聞いたあとだからかも。
 私は歩くペースを速めて、出来るだけ早く通り慣れた道へ出ようとした。するとちょうど、少し先にある神社の階段をのぼっていく人影が見えた。
 うしろ姿しか見えなかった、でもその背格好には見覚えがある。

「……え? ユキト、くん?」

 おもわず声が出てしまう。だってあれはきっと、転校生のユキトくんだったから。
 入っていったのは名前も知らない神社。
 どきん、と自分の心臓が跳ねたのが分かった。
 もちろんリサが茶化したように、ユキトくんが格好いいからとか、そういう理由とは違う。
 それは今日も妖怪という言葉を聞いた時、ついユキトくんの方を見てしまった原因。あの日からずっと思っていたこと。

 ――冬野ユキトは、人間じゃないかもしれない。
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