1 / 4
灯り売り
しおりを挟む
お日さまの灯りも届かずいつになっても夜の明けない暗い街がありました。
そんな街の暗さはいつしか、街の人々の心さえも暗く閉ざしてしまっていたのでした。
ある時そんな街にランプ、電灯、ろうそく…とたくさんの灯りを背負った男がやって来ました。
「とても暗い街!こんな街には灯りが御入り用でしょう!」
そう言って背負っていたランプを持ち街を回っていたるところに取りつけました。
しかし、暗く閉ざされた人々の視線は冷ややかなものでした。
「勝手にランプなぞつけおって…こんなもの邪魔なだけだ」
「なにあの人…怖い」
「気持ち悪いんだよ…とっととどっか行ってくれ」
しかし彼はそんな人々の視線などどこ吹く風といわんばかりの笑顔で街中をランプで飾りつけて行きます。
ついに彼は街中をランプで飾りつけ暗闇に閉ざされた街は光輝く街へと変わったのでした。
しかし、それでも人々の心は変わる気配を見せないのでした。
そこで彼は、いちばん派手にランプを飾りつけた場所へ向かい高らかにこう謳います。
「お日さまの昇らぬこの街をもっと明るく照らして見せましょう!」
そう言って飾りつけたランプの灯りを一度全て落とすと彼は自分の持っていたランプやろうそく、電灯、火…様々な灯りを使ったショーを始めました。
ライトを手に持ち暗闇の中で光が舞うダンス、飾りつけたランプを自在に操り幻想的な世界を作り出すライトアップショー、暗闇の中に世界を写す投影パフォーマンス。あるいは光の中に影で物語を描く影絵劇。
しかし人々はそんな彼を冷たい目で一瞥するとなにも見なかったという風に通りすぎるのでした。
それでもめげずに彼はショーを続けます。時折失敗しその失敗でさえも目もくれない人々。そんな中でも彼は笑顔を崩すことはありませんでした。
しばらくすると彼は大きな失敗をしてしまいます。それは松明ジャグリングの最中でした。
手を滑らせて松明の火が彼の服に燃え移ってしまったのです。
「あっ熱いっ!皮膚が焼けるぅ!」
灯りのプロフェッショナルである彼も流石の連続ショーには疲れがたまっていたのでしょうか…それとも単に彼の技術にあまるショーをしてしまったのでしょうか…。真偽のほどは定かではありませんがこれには流石の彼も大慌て。火を消すために傍らにおいていた水をはったバケツを自らの上にひっくり返します。
「うぅっ…さぶっ」
「…ぷふっ」
そんな彼の一部始終を見ていた少女が彼を見てついに吹き出したのです!彼がこの街に来て初めて見たこの街の人の笑顔でした。
そんな街の暗さはいつしか、街の人々の心さえも暗く閉ざしてしまっていたのでした。
ある時そんな街にランプ、電灯、ろうそく…とたくさんの灯りを背負った男がやって来ました。
「とても暗い街!こんな街には灯りが御入り用でしょう!」
そう言って背負っていたランプを持ち街を回っていたるところに取りつけました。
しかし、暗く閉ざされた人々の視線は冷ややかなものでした。
「勝手にランプなぞつけおって…こんなもの邪魔なだけだ」
「なにあの人…怖い」
「気持ち悪いんだよ…とっととどっか行ってくれ」
しかし彼はそんな人々の視線などどこ吹く風といわんばかりの笑顔で街中をランプで飾りつけて行きます。
ついに彼は街中をランプで飾りつけ暗闇に閉ざされた街は光輝く街へと変わったのでした。
しかし、それでも人々の心は変わる気配を見せないのでした。
そこで彼は、いちばん派手にランプを飾りつけた場所へ向かい高らかにこう謳います。
「お日さまの昇らぬこの街をもっと明るく照らして見せましょう!」
そう言って飾りつけたランプの灯りを一度全て落とすと彼は自分の持っていたランプやろうそく、電灯、火…様々な灯りを使ったショーを始めました。
ライトを手に持ち暗闇の中で光が舞うダンス、飾りつけたランプを自在に操り幻想的な世界を作り出すライトアップショー、暗闇の中に世界を写す投影パフォーマンス。あるいは光の中に影で物語を描く影絵劇。
しかし人々はそんな彼を冷たい目で一瞥するとなにも見なかったという風に通りすぎるのでした。
それでもめげずに彼はショーを続けます。時折失敗しその失敗でさえも目もくれない人々。そんな中でも彼は笑顔を崩すことはありませんでした。
しばらくすると彼は大きな失敗をしてしまいます。それは松明ジャグリングの最中でした。
手を滑らせて松明の火が彼の服に燃え移ってしまったのです。
「あっ熱いっ!皮膚が焼けるぅ!」
灯りのプロフェッショナルである彼も流石の連続ショーには疲れがたまっていたのでしょうか…それとも単に彼の技術にあまるショーをしてしまったのでしょうか…。真偽のほどは定かではありませんがこれには流石の彼も大慌て。火を消すために傍らにおいていた水をはったバケツを自らの上にひっくり返します。
「うぅっ…さぶっ」
「…ぷふっ」
そんな彼の一部始終を見ていた少女が彼を見てついに吹き出したのです!彼がこの街に来て初めて見たこの街の人の笑顔でした。
0
あなたにおすすめの小説
青色のマグカップ
紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。
彼はある思い出のマグカップを探していると話すが……
薄れていく“思い出”という宝物のお話。
隣のじいさん
kudamonokozou
児童書・童話
小学生の頃僕は祐介と友達だった。空き家だった隣にいつの間にか変なじいさんが住みついた。
祐介はじいさんと仲良しになる。
ところが、そのじいさんが色々な騒動を起こす。
でも祐介はじいさんを信頼しており、ある日遠い所へ二人で飛んで行ってしまった。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
瑠璃の姫君と鉄黒の騎士
石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。
そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。
突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。
大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。
記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる