灯り売り

風太

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灯り売り

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 街が灯りにつつまれ、人々の心も次第に明るくなっていくなか、ずっと暗い紺に閉ざされていた空の向こうが少しずつ、赤紫に、朱色に、黄金色に明るくなっていきます。

 その光景はとても美しく、しかしとても切なくなるようなそんな光景でした。

 夜が明けることのなかったこの街の夜明けに人々はとても喜び、また涙するのでした。

「きっとあんたのおかげだ!ありがとう商人さん」

 誰かがそう言って彼の方を向くと彼の変化に気がつきました。

「あんた…どうしたんだい!」

  なんと空が明るくなるにつれて、彼の体はどんどん薄く、透明になっていくのです。それはまるで日差しに照らされ溶けていくように。

「わたしは、この街に…この街の人々の心に朝を、灯りを売るためにこの街に来たのです。役目を終えればわたしはこの街に必要のない存在になるのです。」

「そんなことない!あなたが必要ないなんて絶対にない!お願い…消えないで…ここにいてよ!」

 少女はその瞳いっぱいに涙をたたえて彼を止めようと訴えかけます。
 
「いいえ…それは出来ません。もう十分あなたたちだけでもこの街を照らせます。それにわたしはおたずね者。今でなくてもいずれこの街を去ることになるでしょう。」

 彼は少女の涙を優しく拭い、こう続けます。

「泣かないで。わたしがいなくなってもわたしたちが心に灯した灯りはきっと消えません。…不安なら最後にもう一度わたしたちで心に灯る灯りを灯しましょう。」

 そういうと彼はまた灯りを取り出しパフォーマンスを始めます。

 色とりどりに光る輝き、踊るライトに揺らめく炎、影だって楽しそうに踊ります。

 朝焼けに照らし出された薄闇が輝く灯りにつつまれます。

 そうして日が昇るにつれてどんどん、どんどん彼は朝に溶けていくのです。

「わたしがいなくなってもこれだけは忘れないでください」

「どんなに暗い世界でも、決して心の灯火だけは絶やしてはなりません!」


「わたしはそれを伝えるためにここに来たのです。」

 その言葉を最後にして彼は消えてしまいました。
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