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キオン編
鋭い針には、 二
しおりを挟む鉱岩蜂の雄の討伐が完了したことをギルド支部に報告する。とどめを刺したのはキオンだが、報酬は今回の討伐に参加した冒険者全員で山分けだ。当然だろう、彼らが凶暴化した鉱岩蜂の雌と対峙してくれたおかげで、こうして無事に討ち取れたのだから。
さらには鉱山夫たち、さらに彼らの家族からのご厚意として、街で一番の温泉宿に無料で一泊しても良いとのこと。
冒険者たちは報酬の金額よりも、そっちの方で歓喜に湧いた。この一番宿、たった一泊だけで五年分の依頼報酬料が吹っ飛んでいくらしい。その分極楽かつ至高の一時を味わえる、とのことではあるが。
温泉宿は、客から取るエグい料金にふさわしい外観をしていた。街の中以上にあたりにもうもうと湯気が立ちこめているのは、源泉が近いからなのだそうだ。
部屋に荷物を置き、キオンはさっそく戦闘の名残を落としに露天風呂へと向かった。鉱岩蜂の返り血や鉱山内部の砂埃を浴びて、どこもかしこも汚れてきっている。こんな状態で煌びやかな宿の中を歩き回るのは、居心地が悪すぎた。
湯水の源泉は、傷にもよく効くらしい。服を脱ぎ、その拍子に布地が掠めたのかピリッと痛んだ左腕に、宿の案内人が教えてくれたことを思い出した。
キオンは治癒術を使えない。参戦した冒険者たちも同様だった。怪我をしたら効果の高い薬に頼るしかない。しかし薬もタダではないのだ。傷はそんなに深くないようだし、湯で癒えるならそれに越したことはない。
露天風呂は広かった。体格の良い男が百人同時に入ってもなお余裕があるのではないか、と思えるくらいに。──実際のところ、時間が早いのか利用者はキオンただ一人だけなのだけれど。
貸切状態の浴場で、しっかりと汚れを落としてから湯に浸かる。
「ふぁぁ……」
熱すぎず、ぬるくなく。心地良い温度が肌に染み入って、じわじわと全身の疲労を溶かしていった。なるほど、これは。縁に頭を預けながら、キオンは気の抜けた吐息をこぼす。極楽だ。
くったりと力を抜ききって、ただただひたすらに身を揺蕩わせる。気持ちいい。風呂でこんな気分になったのは初めてだ。キオンが知る気持ちいいことと言えば、ふかふかのベッドでたっぷり寝ることと、憧れの冒険者ギルドエース・ヒメロスとのセックスくらいだ。この温泉は、三本の指の一つに入れても良いかもしれない。
「おい、ボウズ。大丈夫か?」
「え……、あ?」
ペチペチと頬を軽く叩かれ、キオンは瞼を持ち上げた。傷の痕だろうか。歪な盛り上がりが目立つ立派な筋肉が目の前にある。
ゆっくりと頭を持ち上げると、少々目眩がした。熱い。喉が渇いている気がする。なんだか視界が白っぽい。
「これ、のぼせてない? 上がらせたら?」
別の声が鼓膜に届いたところでドッと記憶が押し寄せた。キオンは慌てて縁に伏せていた上半身を起こす。
「だ、大丈夫です!」
そうだ。温泉に浸かっていたんだった。
あんまり気持ちが良すぎて、うっかり寝入ってしまったらしい。数分から数十分の間くらいだろうか? 正確な時間はわからないが、空の明るさを見たところさほど経っているようには思えなかった。
周囲を見渡せば、誰もいなかったはずの空間に服を脱ぎ捨てた冒険者たちの姿がちらほらとある。埃やモンスターの体液で汚れきった体や髪を洗いながら、ちらちらとこちらに視線を向けていた。この二人同様、心配させてしまったようだ。
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