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『アケオメ』山の『コトヨロ』湖畔に到着‼
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ここは、霊峰アケオメ山の麓にある魔境コトヨロ湖畔。ふざけた名前だが、王国と近隣の国々の最強冒険者がいつかは攻略を…と夢見る超危険領域。棲息する魔物は凶悪かつ凶暴で、その歯牙や爪を冒険者に向けては彼らの命を喰らい、そこを治める精霊は悪戯に冒険者達を惑わし死地へと誘うと言われている禁足の聖域…
我々は今、そんな未踏の大地に足を踏み入れた‼…訳ではない…実は、このコトヨロ湖畔、昔、ウチの両祖父母とヒナギク様の祖父母が何度も訪れている場所。そう、魔王討伐のついでにリゾート感覚で。もう少し子供の頃、夏の避暑地として僕達の家族と王家ご一家で向かった事があったけど、あの時は道中、魔物や精霊など一度も見掛けなかった。多分、ドラゴン婆ちゃんの覇気に押されたんだろう…そう言えば、湖畔に到着するや、湖のヌシと婆ちゃんのバトルが始まって、僕達が帰るまでドカドカと闘りあっていたっけ。結局、ドローだったけど…でも、夜にはバトルをやめて、七人で酒盛りを始めていたんだよなぁ…ああ見えて、あの湖のヌシさん、婆ちゃんとは仲良しなのだろう…
「そんな事、良く覚えているわね?」
僕の傍らにはヒナギク様がいる。いや、逃避行してきた訳でなく、王妃様からのお願いで一緒だったりする。理由はヒナギク様の『呪い』を解く為。
ヒナギク様に掛けられた『呪い』は命に係わる『呪い』ではない。事実、健康体で、道中もその健脚で湖畔までの道を踏破された。普段、王宮でお稽古づけの日々で良くそれだけ体力があるなぁ…と思っていたら、疲労軽減の魔法を掛けているらしい。僕も掛けてもらったが、確かに身体が軽くなる。でも、魔法を掛ける時、鼻先が付くくらい顔を近付けるのは恥ずかしいので、普通に手を翳すだけにしてほしい…はい、鼻息が…
え~と…ヒナギク様に掛けられた『呪い』の正体は、実は『不妊』。まぁ、本来なら魔法的に掛ける事も可能なんだけど、何故か『呪い』として、ヒナギク様に掛けられてしまった。原因は王様。ヒナギク様以外にもご兄弟・ご姉妹はいるのだけれど、王様がヒナギク様だけは結婚相手を決めなかった。それどころか、断固、嫁にはやらん‼と国内外に向けて発信。すぐ様、王妃様にシバかれて撤回したが、王様はヒナギク様を『これでもか‼しぶとい奴め‼』とばかりに溺愛した。そりゃあもう溺愛しまくった‼結果、ヒナギク様のデリケートな部分に触れてしまい、「お父様キライ‼」発言を受けて、その状態が現在まで続いているそうだ…そんな事が王宮であったと前王妃様がウチに愚痴りに来た事を覚えている。何でもグズったヒナギク様の気分転換だとか…その時、ヒナギク様は僕に抱き着いて離してくれなかった…あまりに離してくれないので漏らしそうになった…
この『お父様キライ‼』事件を機に王様が暴走‼…いや、政治方面は、内政・外交、滞りなかったけど…この暴走の方向がいけなかった。それは自分が嫌われない方向ではなく、自分を好きになって欲しい方向の暴走‼そこで世に賢王と称される王様がやらかす。悪魔との契約を結んでしまった。それが現在までヒナギク様に掛けられている『呪い』である…ってか、良くこの程度で済んだな?と思うけど、どうも契約条件が特殊だったらしく、全ての契約条件が整えば『お父様スキスキ♡将来お父様と結婚する♡♡』となる筈だったが、悪魔との契約条件を三回でギブアップしてしまった…その為に、ヒナギク様に『不妊』までしか『呪い』が掛けられなかったらしい。ちなみに悪魔が出した契約条件は、悪魔に『苦悦』を与える事…何でも三回以上は色々と道具が必要で極秘案件に出来なくなるので、止めたらしい…後でこの件がバレた時、「これが女の悪魔なら…‼」と王様が呟いて、王妃様にブチ切れられたとか…ちなみに、その悪魔、ズタ袋に詰められて、川に流されたらしい…「こ、これは世に言う『放置プレイ』かぁ‼」と流れるズタ袋から悪魔の声が聞こえて来たとか…その響きは何とも満足げだった…と、教会発行の最新『悪魔辞典』には掲載されているらしい…
そんな事情を思い出しているのには、現在の状況にある。
コトヨロ湖畔には僕達が幼少の頃に訪れて、寝泊まりしたコテージがある。何でも、たまにドワーフ爺ちゃんがドラゴン婆ちゃんと素材採取に来ているらしい。あ、エルフ婆ちゃんもニンゲン爺ちゃんを連れ立って薬草採取に来ていたっけか…?
「む⁈何奴⁈」
こっちの台詞です。と言う訳で、誰か居た。
それは家の梁に亀甲縛りでぶら下がっているネクタイの男性…ネクタイ以外はブーメランパンツの穿いているだけで、ご丁寧に亀甲模様が見える様にエビ反り状態でぶら下がっている…何か、この状況…イヤな予感がする…
「どちら様でしょう?ここは私達の関係者が使っている建物なのですが?」
ヒナギク様が丁寧に対応しているが、僕を盾にしながら背後に隠れている。確かに、この状況は一般人には恐怖でしかない…いや、僕も、その道を通って来た訳ではないので詳しくは分かりませんが…‼
「バレてしまっては止むを得ません‼」
と、縛られていた男性が、自ら結束を解いて降りて来る。その際に、ビシッと決まったスーツ姿に変身‼僕の前に降り立つと、
「どうか、湖のヌシ殿にはご内密に‼」
土下座した。頭を撃ち付けるゴン‼って音がした。
「どうか‼あの方に知られると、五回は殺されますので‼」
苦痛を楽しんでいらっしゃる様なので殺されるのは本望では?
「苦痛は生きている間にこそ味わうモノです‼美しいお嬢様‼」
あ、そこで僕をお嬢様呼ばわりするのは良くないです…
「うん‼大丈夫‼まだ、怒ってない‼あたし、怒ってないよ‼」
そう言う人って大概、怒っています‼そして、折伏系最大級の魔法の準備をしない‼
「ほう?何やら、面白そうな事が始まりそうだな?」
コテージの入口に佇んでいたのは、妖艶な一人の女性…マーメードドレスを艶やかに着こなし、僕達には微笑みを、もう一人の悪魔らしい男性には冷徹な目線を向けている…湖のヌシ様だ…お変わりない様で何よりです…
「ハハハ!どうやら噂は本当らしいな‼セージが『聖女』になったってのは‼」
笑い事じゃない事態が二件、重なっているのですが‼
「おう‼そうだな‼そこの変態を片付けないとな‼」
あ、ここで、元に戻るのは止めて下さい‼とりあえず、悪魔さん‼外に出て‼それとも、ヒナギク様に吹き飛ばされますか⁈
「え?吹き飛ばして良いの?粉々にするレベルでヤるけど良い?⁈」
ヒナギク様の狂気を宿した目が据わっている‼本気だ‼
「合わせるぞ‼娘‼」
ヌシ様が、元の龍の姿になっている‼って、合わせるの⁈ヌシ様‼
「任せて‼」
ヒナギク様の応答で、龍のブレスとヒナギク様の魔法が、悪魔を挟んで激突‼
光と水の衝突の前に、コテージは、跡形もなく吹き飛んだ。
「娘‼腕を上げたな‼」
人姿に戻ったヌシ様が右手を差し出すと、
「主様もお変わりなく‼」
その手を取るヒナギク様。友情の握手は良いんですが、コテージどうするんです?
「ああ、そうだな」
周辺をどこに…ともなく見渡すヌシ様…と、
「おい‼迷惑料でコテージを復元しろ‼」
これまた虚空に声を向ける。途端に、コテージが復元‼…あ、悪魔さんがやったのか‼
「それとお前にはもう用はない‼何処へとなり去れ‼」
再び虚空に怒鳴りつけると、風が舞って出入口に吹き抜ける…
「良し‼まずは歓迎しよう‼者共‼宴の準備をせい‼」
と、声を上げると、ヌシ様に従う、魔物や精霊が湖から出現し、周辺から僕達が食べられる果物や野草、淡水性の魚や近くで狩って来たジビエ、そして、どこで作られたのか?お酒らしい液体の入った壺がコテージ横のバーベキュースペースに並べられていく。あの壺、ドワーフ爺ちゃんの作かな?僕とヒナギク様が余裕で入れる大きさだ。
「我らは生でもイケるが、お前達は腹をこわすとイカン。火の用意はあるか?」
鍋は婆ちゃん達が寝泊まりしている時に置きっぱなしにしていると聞いているので、コテージの台所付近を捜索…あ、バーベキュー用の網もあった。ドワーフ爺ちゃん特製の焼き物がくっ付かない焼き網‼周辺に生えている一本の木をヌシ様が切り倒し、薪用に切断、乾燥させてくれる。これで、すぐに使える。
火は誰でも使える生活系火魔法で、僕が担当…バーベキュー用の焼き台にも火の準備をして、まずは火を育てる…着火剤なんてない世界、その辺に落ちている枯れ葉でも濡れていない物を厳選…魔法の火を移していく…確か、前世で見たテレビだと、細く割いた薪を羽根の様に削って、それを火口する方法もあったけど、初級の魔法の火でも十分な火力があるので却下‼…でも、いつかはやってみたい…次々に落ち葉に火が燃え移り、枝や細く割いた薪、通常サイズの薪へと火を移していく…こう言うのは男の仕事‼その間に女性陣は食材の下拵え…あれ?ヒナギク様って、お姫様だから料理って出来る?
「あたしはこの山菜を切りますから、ヌシ様はジビエを解体、部位ごとに分けて下さい。今回食べきれない分は燻製にしますので。あ、その根菜、二個はスライスして水にさらして‼サラダに使うので‼多分そのまま食べると辛いので‼残りの三個は櫛切りにして鍋に入れて下さい。こっちのお魚、誰か捌く予定は…ああ、じゃあ、あたしがやっちゃいます‼毒はないですね?全身丸焼き可能?ワタが抜きますよ‼食中毒がコワいんで‼」
うん。即席の厨房で、指示を飛ばしている。山菜も灰汁抜きしているし…何か、手伝った方がいいのかな…?…こう言う所で何もしないと、後でグチグチ言われそうだけど…
「あ。セージ‼焚火の方、準備できたらサカナ焼くから‼」
僕の動きも良く見ている‼…焚火も準備しないと…
ヒナギク様の手際と的確な指示の下、三十分程で準備完了‼現在、網では肉が音を立てていて、焚火の周りには魚が串に刺さって遠火の強火の位置、その焚火の上にある鍋のスープは食べ頃に煮えている。三本の細い木を組んで鍋を吊るしています。
「味見」
と、火の番をしている僕の元に、ヒナギク様がお玉を持ってやってくる。
ヒナギク様の味に任せますが…?
「いいから‼」
多少強引にお玉を近付けられたので、端から汁を啜る…問題ありません。
「うん。あたしの味で大丈夫ね」
小走りしながら鍋の元に戻る…その背中がカワイイ…
「では、新たな仲間を歓迎して‼」
ヌシ様の一声で乾杯‼壺のお酒は酒精が強いので、僕達は搾りたての果汁ジュース。一気に飲み干すのがルール‼この盃に毒がない事を信じます‼の証‼…数秒後、「ぷは~」の声が一斉に響く…一般的な宴のルールはこの程度。あとはご自由に…
「セージだったら、あの酒は飲めるんじゃないのか?」
止めて下さい。料理を楽しみたいんです。
「その内、酒しか興味がなくなるんじゃないか?」
背格好的にドワーフ的な要素は強いでしょうけど…どうでしょう?内臓器官的にもドワーフ系でしょうか?僕の場合、膂力が強いと言っても瞬発的ですし。
「本気で、こんな場所に移り住むのか?」
止むを得ません。王妃様のお願いもありますが、何でも、こっちの方でも『聖女』の力が必要と言う話をお婆ちゃん達から聞いています。
そう。僕達はここに『移住』するのだ。
我々は今、そんな未踏の大地に足を踏み入れた‼…訳ではない…実は、このコトヨロ湖畔、昔、ウチの両祖父母とヒナギク様の祖父母が何度も訪れている場所。そう、魔王討伐のついでにリゾート感覚で。もう少し子供の頃、夏の避暑地として僕達の家族と王家ご一家で向かった事があったけど、あの時は道中、魔物や精霊など一度も見掛けなかった。多分、ドラゴン婆ちゃんの覇気に押されたんだろう…そう言えば、湖畔に到着するや、湖のヌシと婆ちゃんのバトルが始まって、僕達が帰るまでドカドカと闘りあっていたっけ。結局、ドローだったけど…でも、夜にはバトルをやめて、七人で酒盛りを始めていたんだよなぁ…ああ見えて、あの湖のヌシさん、婆ちゃんとは仲良しなのだろう…
「そんな事、良く覚えているわね?」
僕の傍らにはヒナギク様がいる。いや、逃避行してきた訳でなく、王妃様からのお願いで一緒だったりする。理由はヒナギク様の『呪い』を解く為。
ヒナギク様に掛けられた『呪い』は命に係わる『呪い』ではない。事実、健康体で、道中もその健脚で湖畔までの道を踏破された。普段、王宮でお稽古づけの日々で良くそれだけ体力があるなぁ…と思っていたら、疲労軽減の魔法を掛けているらしい。僕も掛けてもらったが、確かに身体が軽くなる。でも、魔法を掛ける時、鼻先が付くくらい顔を近付けるのは恥ずかしいので、普通に手を翳すだけにしてほしい…はい、鼻息が…
え~と…ヒナギク様に掛けられた『呪い』の正体は、実は『不妊』。まぁ、本来なら魔法的に掛ける事も可能なんだけど、何故か『呪い』として、ヒナギク様に掛けられてしまった。原因は王様。ヒナギク様以外にもご兄弟・ご姉妹はいるのだけれど、王様がヒナギク様だけは結婚相手を決めなかった。それどころか、断固、嫁にはやらん‼と国内外に向けて発信。すぐ様、王妃様にシバかれて撤回したが、王様はヒナギク様を『これでもか‼しぶとい奴め‼』とばかりに溺愛した。そりゃあもう溺愛しまくった‼結果、ヒナギク様のデリケートな部分に触れてしまい、「お父様キライ‼」発言を受けて、その状態が現在まで続いているそうだ…そんな事が王宮であったと前王妃様がウチに愚痴りに来た事を覚えている。何でもグズったヒナギク様の気分転換だとか…その時、ヒナギク様は僕に抱き着いて離してくれなかった…あまりに離してくれないので漏らしそうになった…
この『お父様キライ‼』事件を機に王様が暴走‼…いや、政治方面は、内政・外交、滞りなかったけど…この暴走の方向がいけなかった。それは自分が嫌われない方向ではなく、自分を好きになって欲しい方向の暴走‼そこで世に賢王と称される王様がやらかす。悪魔との契約を結んでしまった。それが現在までヒナギク様に掛けられている『呪い』である…ってか、良くこの程度で済んだな?と思うけど、どうも契約条件が特殊だったらしく、全ての契約条件が整えば『お父様スキスキ♡将来お父様と結婚する♡♡』となる筈だったが、悪魔との契約条件を三回でギブアップしてしまった…その為に、ヒナギク様に『不妊』までしか『呪い』が掛けられなかったらしい。ちなみに悪魔が出した契約条件は、悪魔に『苦悦』を与える事…何でも三回以上は色々と道具が必要で極秘案件に出来なくなるので、止めたらしい…後でこの件がバレた時、「これが女の悪魔なら…‼」と王様が呟いて、王妃様にブチ切れられたとか…ちなみに、その悪魔、ズタ袋に詰められて、川に流されたらしい…「こ、これは世に言う『放置プレイ』かぁ‼」と流れるズタ袋から悪魔の声が聞こえて来たとか…その響きは何とも満足げだった…と、教会発行の最新『悪魔辞典』には掲載されているらしい…
そんな事情を思い出しているのには、現在の状況にある。
コトヨロ湖畔には僕達が幼少の頃に訪れて、寝泊まりしたコテージがある。何でも、たまにドワーフ爺ちゃんがドラゴン婆ちゃんと素材採取に来ているらしい。あ、エルフ婆ちゃんもニンゲン爺ちゃんを連れ立って薬草採取に来ていたっけか…?
「む⁈何奴⁈」
こっちの台詞です。と言う訳で、誰か居た。
それは家の梁に亀甲縛りでぶら下がっているネクタイの男性…ネクタイ以外はブーメランパンツの穿いているだけで、ご丁寧に亀甲模様が見える様にエビ反り状態でぶら下がっている…何か、この状況…イヤな予感がする…
「どちら様でしょう?ここは私達の関係者が使っている建物なのですが?」
ヒナギク様が丁寧に対応しているが、僕を盾にしながら背後に隠れている。確かに、この状況は一般人には恐怖でしかない…いや、僕も、その道を通って来た訳ではないので詳しくは分かりませんが…‼
「バレてしまっては止むを得ません‼」
と、縛られていた男性が、自ら結束を解いて降りて来る。その際に、ビシッと決まったスーツ姿に変身‼僕の前に降り立つと、
「どうか、湖のヌシ殿にはご内密に‼」
土下座した。頭を撃ち付けるゴン‼って音がした。
「どうか‼あの方に知られると、五回は殺されますので‼」
苦痛を楽しんでいらっしゃる様なので殺されるのは本望では?
「苦痛は生きている間にこそ味わうモノです‼美しいお嬢様‼」
あ、そこで僕をお嬢様呼ばわりするのは良くないです…
「うん‼大丈夫‼まだ、怒ってない‼あたし、怒ってないよ‼」
そう言う人って大概、怒っています‼そして、折伏系最大級の魔法の準備をしない‼
「ほう?何やら、面白そうな事が始まりそうだな?」
コテージの入口に佇んでいたのは、妖艶な一人の女性…マーメードドレスを艶やかに着こなし、僕達には微笑みを、もう一人の悪魔らしい男性には冷徹な目線を向けている…湖のヌシ様だ…お変わりない様で何よりです…
「ハハハ!どうやら噂は本当らしいな‼セージが『聖女』になったってのは‼」
笑い事じゃない事態が二件、重なっているのですが‼
「おう‼そうだな‼そこの変態を片付けないとな‼」
あ、ここで、元に戻るのは止めて下さい‼とりあえず、悪魔さん‼外に出て‼それとも、ヒナギク様に吹き飛ばされますか⁈
「え?吹き飛ばして良いの?粉々にするレベルでヤるけど良い?⁈」
ヒナギク様の狂気を宿した目が据わっている‼本気だ‼
「合わせるぞ‼娘‼」
ヌシ様が、元の龍の姿になっている‼って、合わせるの⁈ヌシ様‼
「任せて‼」
ヒナギク様の応答で、龍のブレスとヒナギク様の魔法が、悪魔を挟んで激突‼
光と水の衝突の前に、コテージは、跡形もなく吹き飛んだ。
「娘‼腕を上げたな‼」
人姿に戻ったヌシ様が右手を差し出すと、
「主様もお変わりなく‼」
その手を取るヒナギク様。友情の握手は良いんですが、コテージどうするんです?
「ああ、そうだな」
周辺をどこに…ともなく見渡すヌシ様…と、
「おい‼迷惑料でコテージを復元しろ‼」
これまた虚空に声を向ける。途端に、コテージが復元‼…あ、悪魔さんがやったのか‼
「それとお前にはもう用はない‼何処へとなり去れ‼」
再び虚空に怒鳴りつけると、風が舞って出入口に吹き抜ける…
「良し‼まずは歓迎しよう‼者共‼宴の準備をせい‼」
と、声を上げると、ヌシ様に従う、魔物や精霊が湖から出現し、周辺から僕達が食べられる果物や野草、淡水性の魚や近くで狩って来たジビエ、そして、どこで作られたのか?お酒らしい液体の入った壺がコテージ横のバーベキュースペースに並べられていく。あの壺、ドワーフ爺ちゃんの作かな?僕とヒナギク様が余裕で入れる大きさだ。
「我らは生でもイケるが、お前達は腹をこわすとイカン。火の用意はあるか?」
鍋は婆ちゃん達が寝泊まりしている時に置きっぱなしにしていると聞いているので、コテージの台所付近を捜索…あ、バーベキュー用の網もあった。ドワーフ爺ちゃん特製の焼き物がくっ付かない焼き網‼周辺に生えている一本の木をヌシ様が切り倒し、薪用に切断、乾燥させてくれる。これで、すぐに使える。
火は誰でも使える生活系火魔法で、僕が担当…バーベキュー用の焼き台にも火の準備をして、まずは火を育てる…着火剤なんてない世界、その辺に落ちている枯れ葉でも濡れていない物を厳選…魔法の火を移していく…確か、前世で見たテレビだと、細く割いた薪を羽根の様に削って、それを火口する方法もあったけど、初級の魔法の火でも十分な火力があるので却下‼…でも、いつかはやってみたい…次々に落ち葉に火が燃え移り、枝や細く割いた薪、通常サイズの薪へと火を移していく…こう言うのは男の仕事‼その間に女性陣は食材の下拵え…あれ?ヒナギク様って、お姫様だから料理って出来る?
「あたしはこの山菜を切りますから、ヌシ様はジビエを解体、部位ごとに分けて下さい。今回食べきれない分は燻製にしますので。あ、その根菜、二個はスライスして水にさらして‼サラダに使うので‼多分そのまま食べると辛いので‼残りの三個は櫛切りにして鍋に入れて下さい。こっちのお魚、誰か捌く予定は…ああ、じゃあ、あたしがやっちゃいます‼毒はないですね?全身丸焼き可能?ワタが抜きますよ‼食中毒がコワいんで‼」
うん。即席の厨房で、指示を飛ばしている。山菜も灰汁抜きしているし…何か、手伝った方がいいのかな…?…こう言う所で何もしないと、後でグチグチ言われそうだけど…
「あ。セージ‼焚火の方、準備できたらサカナ焼くから‼」
僕の動きも良く見ている‼…焚火も準備しないと…
ヒナギク様の手際と的確な指示の下、三十分程で準備完了‼現在、網では肉が音を立てていて、焚火の周りには魚が串に刺さって遠火の強火の位置、その焚火の上にある鍋のスープは食べ頃に煮えている。三本の細い木を組んで鍋を吊るしています。
「味見」
と、火の番をしている僕の元に、ヒナギク様がお玉を持ってやってくる。
ヒナギク様の味に任せますが…?
「いいから‼」
多少強引にお玉を近付けられたので、端から汁を啜る…問題ありません。
「うん。あたしの味で大丈夫ね」
小走りしながら鍋の元に戻る…その背中がカワイイ…
「では、新たな仲間を歓迎して‼」
ヌシ様の一声で乾杯‼壺のお酒は酒精が強いので、僕達は搾りたての果汁ジュース。一気に飲み干すのがルール‼この盃に毒がない事を信じます‼の証‼…数秒後、「ぷは~」の声が一斉に響く…一般的な宴のルールはこの程度。あとはご自由に…
「セージだったら、あの酒は飲めるんじゃないのか?」
止めて下さい。料理を楽しみたいんです。
「その内、酒しか興味がなくなるんじゃないか?」
背格好的にドワーフ的な要素は強いでしょうけど…どうでしょう?内臓器官的にもドワーフ系でしょうか?僕の場合、膂力が強いと言っても瞬発的ですし。
「本気で、こんな場所に移り住むのか?」
止むを得ません。王妃様のお願いもありますが、何でも、こっちの方でも『聖女』の力が必要と言う話をお婆ちゃん達から聞いています。
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