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ニンゲン爺ちゃんの武勇伝?と服作り
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…一応、袋には野菜の名前と、葉野菜・根野菜等の大体の種類が書かれてあった…種を手配したのは、カズラ姉さんだろうが、これを書いたのは僕の母方の祖父、ニンゲン爺ちゃんこと、タイム爺ちゃんだろう。こう言った細やかな心遣いの出来るヒトなんだ…ただ、異常なまでの、巻き込まれ体質らしいけど…
タイム爺ちゃんの『巻き込まれ』は、田舎の教会で授かった『天恵』だった。前代未聞の『天恵』に、ひとまず、王都に行って調べて貰おうと言う事になり、王都へと延びる街道に一歩踏み出した。そこを歩いていた同い年くらいの青年…当時の王子…今の先王様の仲間になって、マオウ国遠征のお忍び旅の第一号パーティ要員となった。
「…正体を知られたからには、マオウ国遠征に同行して貰うぞ…‼」
…何か見られてはいけないモノでも見えたのだろうか…?…ナイフを喉元に突き付けられて脅されたらしく、未だに何を見聞きしたのか分からないらしい。その後も通り掛かった父方の祖父母、先王のお妃様に刃物付きの脅しを受け、お忍びマオウ国遠征パーティは人数を増やし、最後の一人である見ず知らずの美人さんに、
「…正体を知られたからには、結婚して貰うぞ…」
と、脅されたそうだ…はい。当時のカズラ姉さんです…街道に出て、僅か百メートル程の間の出来事だったとか…その後も、タイム爺ちゃんが目にした人物は隠していた事を何も言わずに暴露すると言う事態が続き、堪らず、タイム爺ちゃんは目隠ししながら、旅を続ける事となった…カズラ姉さんが甲斐甲斐しく寄り添っていたらしいが、時折、草むらに連れて行かれて押し倒される事もあったとか…
「魔法で膂力を高められたエルフに抗えると思うか?」
誰もその言い訳を聞いてはくれなかった。
旅も中盤になると、マオウ国軍側の諜報員や刺客を見付けるのには重宝したらしいが、村や街の偉い人達の不正や謀反、武装蜂起計画や幾股もの不倫情報の暴露に、パーティの全員が辟易し始める…が、しかし、何もないならないで、暇を持て余すと、ワザとタイム爺ちゃんの目隠しを取って騒ぎが起きる事を期待していたらしい…
「よっしゃあ‼あのねぇちゃん、やっぱ、刺客だぁ‼」
「ええぇえ⁈マオウ国軍の四天王の配下じゃないのぉ⁈」
「くっそぉ…四股はイっていると、思ったのにぃ‼」
カズラ姉さん胴元の元、賭けが始まっていた。ちなみに、一番的中率が高かったのは先王妃様で、一番負けていたのは先王様だったとか…
旅も終盤になると、ダンジョンアタックが多くなり、いよいよタイム爺ちゃんもお荷物になるかと思いきや、手を付いた壁が崩れて、隠し部屋を発見したり、複雑な構造の迷宮踏破を目標に掲げて、いざ入口の一歩目の石畳を踏んだら転移が発動し、その転移先が寛いでいる迷宮のボスの待機部屋だったり、難攻不落と称されたマオウ国軍の砦が、そこを治める幹部と不倫関係にあった部下数名との争いで壊滅していたり…と、タイム爺ちゃんを先頭に立たせての戦いは、戦いにすらならない状態での進軍が続き、最終的に、タイム爺ちゃんを先頭にして、マオウ国の国家元首と対峙する事となった‼
「⁈お、お前は⁈」
マオウ国の王様はタイム爺ちゃんの隣の家に住んでいた幼馴染だった。王様業がイヤになって、城を飛び出し、子供のいない夫婦の子供に擬態して、農村でのんびり暮らそうと画策していたらしい。
「…まぁ、将来、結婚するのも、アリかなぁ…なんて思ってたけど…」
マオウ国の女王様は照れながら、独白するが、これに怒ったのはカズラ姉さん。
「タイムは、あたしの伴侶だ‼勝手な事を抜かすな‼」
「妄想エルフが‼抜かすのは、お前の方だろうが‼」
女同士の醜い泥仕合が展開された。堪らず、抑えたのはタイム爺ちゃんと、女王の側近のイケメンさん。女王を羽交い絞めにしながら、イケメンさんが女王に愛の告白‼
お惚気空間が展開され、闘う雰囲気が消失…マオウ国女王との和解が成立した…
凱旋…って訳でもないが、カップル同士がハネムーン気分で国に戻ると、魔王国との国交を結んだ者達として大歓迎。国賓として招かれたマオウ国女王と元側近さんも篤い歓待を受け、今後の友好関係の永続と和平条約を締結して、マオウ国女王一行は、お帰りになったらしい。ちなみに、帰りの旅程で、自分を含む男性全員が日に日にヤツれ、女性陣全員の肌がツヤピカになったらしい…今のヒナギク様もお肌ツヤピカ状態なのだろうなぁ…
現在はカズラ姉さんと共に王都で静かに暮らしているが、異変が一つ。王都帰還から見た目年齢の変化が見られず、二十代程の姿のままらしい。
「…あいつ、どこかのタイミングで盛ったな…‼」
カズラ姉さんは未だに白状していないが、不老不死系の錬金薬の錬成に成功したかも…と、タイム爺ちゃんは、僕に、時折、遠い目をしながら呟き掛けていたな…
ちなみに、『マオウ国』と言っているが、ここで語られたのは『魔界』の『魔王』ことマリーさんが治めている国の事ではなく、別大陸の魔法適性の高いヒト族が治める国の事で、『マオウ』とは正確な発音が難しいので、最も近い発音の『マオウ』と言う発音にしているだけ…まぁ、これで通じるので問題なし…と思いたい…
そんな事を思い出しながら、袋に書かれた文字を目で追う。この国の識字率はそれ程高くないが、僕はこの世界…と言うか、この国の文字が読める。鍛冶や錬金術の手伝いで、文字が読めないと不便だったから…と言うのもあるが、時折届けられるヒナギク様のお手紙の返事も書かないとならなかった為、とにかく勉強した。その努力の成果か、ウチの中で字を書くのが一番上手くなり、鍛冶や錬金の両工房の注文書や請求書、謝罪文やお礼状、貴族様向けの目録や、挑戦状…いわゆる外向けの文章を書かされる事となった。事情を知っている相手からは、ヒナギク様と文を交わしている人物の書く文面と言う事で有難がられていたが、丁寧な文面と綺麗な文字、また、相手を不快にさせない程度の装飾語はこちらへの対応を柔和にしてくれる効果があった…まさか『聖女』の『浄化の気』の影響だとか…そんな事はないと思いたい…
問題が発生した。カズラ姉さんの送った植物の種の中に、植物系の魔物の種が混じっていた。しかも、多い物では、一つの袋に百粒程…凶暴な食肉植物や魔法を使って人や獣を惑わす草花、幻の実を付ける果樹から、世界樹まで…ん?世界樹?その袋の中にタイム爺ちゃんのメモが入っていた。
「コワくなったら、煮るなり焼くなり、好きにして良いからな」
…タイム爺ちゃん。この種が育ってなかったら、怒られる事が分かっているのに…
ひとまず、一般的な野菜を育てようと、僕は決意した。
朝食が終わって、一日のお仕事開始‼の前に、送られて来た種の扱いを相談。
「え~?野菜じゃなくて、肉が良い‼」
「管理方法を間違えなければ、大丈夫でしょう」
「美味しいモノなら大歓迎‼」
「やった‼粉モンの元、ある?それ優先したって‼」
『魔王城』の面々は好きな事を言ってくれる。
「ご主人様、ご主人様‼」
め~の声と共に聞こえてくる、タンポポの声。
「悪さする植物は僕が食べちゃうから、安心して‼」
…そうか…悪いな、タンポポ…済まないが、しばらくヒナギク様の相手をしてくれ…抱き着いて、モフモフしているだけだから…苦しかったら嫌がる様にな…
次に、支給する衣服について。当面はこれから作る服を着てもらうけど強制はしない。大人三人分の体形はヒナギク様より若干大きめとする。いや、他の人のサイズなんて、知らないから…レンゲちゃんの分は…お腹周りだけ触らせてくれるかな…?
「いきなり、変態的な事ぉ、言うなぁ」
そういう事じゃなくて、レンゲちゃんの分の下着の大きさを決めるのに必要だから。うん。あの三人程、太くないでしょ?お腹周りとか…
「我々は太くないぞ‼むしろ標準体型だ‼」
非難の声が上がる中、レンゲちゃんのお腹周りの太さを計測する…誰ですか?ロリコンとか言っているのは?仕方ないでしょ。僕のベルトくらいしか胴回りを測るものがないんだから‼ズボンが擦り落ちるのは仕方ないんです‼基本、庶民が着る服は古着で、サイズ的に大きめのモノを着ているだけなんです‼え?僕の胴回りが自分達より細く見える…それは皆さんの不摂生の影響でしょうね…抓み食いは控えた方が良いですよ…
レンゲちゃんのサイズを測り終えたので、皆さんが森に向かう。ヒナギク様はタンポポを相当気に入ったらしく、最後まで、抱き着いて、頬擦りしていた…
さて、僕の今日の仕事は畑作りと『魔王城』の皆の衣類作り‼
まず、湖に浮かんでいるタンポポの羊毛の一部を毟り取り、洗濯用の川辺に向かう。
寝具を作製した手順で、洗浄・ブロック化し、服にするのだが…ズボンの様な腹回りの調整用の紐を通す穴を、どうやって処理するか?で悩む事となる…首回りなら、穴を開けて紐を通せばお終いだが、腹回りは絞る様に締めなければならない…
…悩みながら、羊毛ブロックを抱えていると、一狩り終えて、獲物を担いでくるヒナギク様と遭遇。今回は鹿っぽい魔獣で、角が複雑に絡まり伸びている…
「ヨシノが針とか持ってなかった?」
その言葉に解体の準備を始めているヨシノさんの元へ。
「あれ?お持ちじゃなかったのですか?」
持っていません‼女の子だったら、持っていたかも知れませんが、僕は男ですから‼
ちょっと、からかわれたのか?とも思ったが、ヨシノさんは解体の準備の手を止めて、自分の部屋に向かってくれた。代わりと言っては何だけど、獲物の解体の準備は僕が担当する。まぁ、獲物を捌き易くする為の三脚櫓を立てるだけなのだが…
そう言えば、貴族のメイドさんは主人の服のサイズが変わってしまった時の為に、着替えの時には裁縫道具を持って、主人や夫人の着替えを手伝っていると聞いた事がある…まぁ、どうしても入らない時は仕立て屋さんを呼んで新しく作って、入らなくなった衣服を古着屋さんに下取りしてもらうらしいけど…
櫓を立て終わった頃に、ヨシノさんが裁縫道具を持って来てくれた。
「え?物干しに干す様にはしないのですか?」
いや、吊るし切りにした方が肉も纏め易いですから…ああ、頭は下に‼まずは血抜きです‼昨日のクマみたいな獣の解体で気になっていたので…あっちはもう良いです…臭みは燻煙で誤魔化せるかと思いますが…ダメだったら香辛料を多用しましょう…
基本的な解体方法を二人に教えて、僕は羊毛ブロックに向き合う。縫い針があるのは助かった。一時は縫い目のないシームレスな服をどうやって作るか?と本気で脳内検討していたくらいだったから。その前に、この針がダメになる可能性もあったので、取り置いてある金属の塊を少し取り出し、針を錬成する…形自体は問題なし。強度的にはどうだろう?試しに、自分の服の裾を縫うが、問題はないようだ。
すぐに服の作成に入る。まずは、寝具作りのシーツを作った要領で布を織って行く。二メートル幅の長さは百メートル程。ナマモノじゃないので余れば保管できる。
次に三人の体形を思い浮べて…こんなカンジだろうか…上半身用の裾長めのロングTシャツ用の生地と、股下丈が一メートル程、胴回りが七十センチになるくらいの下半身用のズボン生地を裁断し、それぞれを縫い合わせる。
度々、手を止めさせて、申し訳ないが、ヒナギク様に試着をお願い。
「…うん…問題ないね…」
ズボンの裾を捲くり、腰の部分を持ち上げながら、ヒナギク様は僕達の前に姿を現してくれた。その場で一回転してポーズを決めてくれる。はい、可愛いです。
その後、ポケットやベルト通しを縫い付けて、一組分の衣装が完成した。
タイム爺ちゃんの『巻き込まれ』は、田舎の教会で授かった『天恵』だった。前代未聞の『天恵』に、ひとまず、王都に行って調べて貰おうと言う事になり、王都へと延びる街道に一歩踏み出した。そこを歩いていた同い年くらいの青年…当時の王子…今の先王様の仲間になって、マオウ国遠征のお忍び旅の第一号パーティ要員となった。
「…正体を知られたからには、マオウ国遠征に同行して貰うぞ…‼」
…何か見られてはいけないモノでも見えたのだろうか…?…ナイフを喉元に突き付けられて脅されたらしく、未だに何を見聞きしたのか分からないらしい。その後も通り掛かった父方の祖父母、先王のお妃様に刃物付きの脅しを受け、お忍びマオウ国遠征パーティは人数を増やし、最後の一人である見ず知らずの美人さんに、
「…正体を知られたからには、結婚して貰うぞ…」
と、脅されたそうだ…はい。当時のカズラ姉さんです…街道に出て、僅か百メートル程の間の出来事だったとか…その後も、タイム爺ちゃんが目にした人物は隠していた事を何も言わずに暴露すると言う事態が続き、堪らず、タイム爺ちゃんは目隠ししながら、旅を続ける事となった…カズラ姉さんが甲斐甲斐しく寄り添っていたらしいが、時折、草むらに連れて行かれて押し倒される事もあったとか…
「魔法で膂力を高められたエルフに抗えると思うか?」
誰もその言い訳を聞いてはくれなかった。
旅も中盤になると、マオウ国軍側の諜報員や刺客を見付けるのには重宝したらしいが、村や街の偉い人達の不正や謀反、武装蜂起計画や幾股もの不倫情報の暴露に、パーティの全員が辟易し始める…が、しかし、何もないならないで、暇を持て余すと、ワザとタイム爺ちゃんの目隠しを取って騒ぎが起きる事を期待していたらしい…
「よっしゃあ‼あのねぇちゃん、やっぱ、刺客だぁ‼」
「ええぇえ⁈マオウ国軍の四天王の配下じゃないのぉ⁈」
「くっそぉ…四股はイっていると、思ったのにぃ‼」
カズラ姉さん胴元の元、賭けが始まっていた。ちなみに、一番的中率が高かったのは先王妃様で、一番負けていたのは先王様だったとか…
旅も終盤になると、ダンジョンアタックが多くなり、いよいよタイム爺ちゃんもお荷物になるかと思いきや、手を付いた壁が崩れて、隠し部屋を発見したり、複雑な構造の迷宮踏破を目標に掲げて、いざ入口の一歩目の石畳を踏んだら転移が発動し、その転移先が寛いでいる迷宮のボスの待機部屋だったり、難攻不落と称されたマオウ国軍の砦が、そこを治める幹部と不倫関係にあった部下数名との争いで壊滅していたり…と、タイム爺ちゃんを先頭に立たせての戦いは、戦いにすらならない状態での進軍が続き、最終的に、タイム爺ちゃんを先頭にして、マオウ国の国家元首と対峙する事となった‼
「⁈お、お前は⁈」
マオウ国の王様はタイム爺ちゃんの隣の家に住んでいた幼馴染だった。王様業がイヤになって、城を飛び出し、子供のいない夫婦の子供に擬態して、農村でのんびり暮らそうと画策していたらしい。
「…まぁ、将来、結婚するのも、アリかなぁ…なんて思ってたけど…」
マオウ国の女王様は照れながら、独白するが、これに怒ったのはカズラ姉さん。
「タイムは、あたしの伴侶だ‼勝手な事を抜かすな‼」
「妄想エルフが‼抜かすのは、お前の方だろうが‼」
女同士の醜い泥仕合が展開された。堪らず、抑えたのはタイム爺ちゃんと、女王の側近のイケメンさん。女王を羽交い絞めにしながら、イケメンさんが女王に愛の告白‼
お惚気空間が展開され、闘う雰囲気が消失…マオウ国女王との和解が成立した…
凱旋…って訳でもないが、カップル同士がハネムーン気分で国に戻ると、魔王国との国交を結んだ者達として大歓迎。国賓として招かれたマオウ国女王と元側近さんも篤い歓待を受け、今後の友好関係の永続と和平条約を締結して、マオウ国女王一行は、お帰りになったらしい。ちなみに、帰りの旅程で、自分を含む男性全員が日に日にヤツれ、女性陣全員の肌がツヤピカになったらしい…今のヒナギク様もお肌ツヤピカ状態なのだろうなぁ…
現在はカズラ姉さんと共に王都で静かに暮らしているが、異変が一つ。王都帰還から見た目年齢の変化が見られず、二十代程の姿のままらしい。
「…あいつ、どこかのタイミングで盛ったな…‼」
カズラ姉さんは未だに白状していないが、不老不死系の錬金薬の錬成に成功したかも…と、タイム爺ちゃんは、僕に、時折、遠い目をしながら呟き掛けていたな…
ちなみに、『マオウ国』と言っているが、ここで語られたのは『魔界』の『魔王』ことマリーさんが治めている国の事ではなく、別大陸の魔法適性の高いヒト族が治める国の事で、『マオウ』とは正確な発音が難しいので、最も近い発音の『マオウ』と言う発音にしているだけ…まぁ、これで通じるので問題なし…と思いたい…
そんな事を思い出しながら、袋に書かれた文字を目で追う。この国の識字率はそれ程高くないが、僕はこの世界…と言うか、この国の文字が読める。鍛冶や錬金術の手伝いで、文字が読めないと不便だったから…と言うのもあるが、時折届けられるヒナギク様のお手紙の返事も書かないとならなかった為、とにかく勉強した。その努力の成果か、ウチの中で字を書くのが一番上手くなり、鍛冶や錬金の両工房の注文書や請求書、謝罪文やお礼状、貴族様向けの目録や、挑戦状…いわゆる外向けの文章を書かされる事となった。事情を知っている相手からは、ヒナギク様と文を交わしている人物の書く文面と言う事で有難がられていたが、丁寧な文面と綺麗な文字、また、相手を不快にさせない程度の装飾語はこちらへの対応を柔和にしてくれる効果があった…まさか『聖女』の『浄化の気』の影響だとか…そんな事はないと思いたい…
問題が発生した。カズラ姉さんの送った植物の種の中に、植物系の魔物の種が混じっていた。しかも、多い物では、一つの袋に百粒程…凶暴な食肉植物や魔法を使って人や獣を惑わす草花、幻の実を付ける果樹から、世界樹まで…ん?世界樹?その袋の中にタイム爺ちゃんのメモが入っていた。
「コワくなったら、煮るなり焼くなり、好きにして良いからな」
…タイム爺ちゃん。この種が育ってなかったら、怒られる事が分かっているのに…
ひとまず、一般的な野菜を育てようと、僕は決意した。
朝食が終わって、一日のお仕事開始‼の前に、送られて来た種の扱いを相談。
「え~?野菜じゃなくて、肉が良い‼」
「管理方法を間違えなければ、大丈夫でしょう」
「美味しいモノなら大歓迎‼」
「やった‼粉モンの元、ある?それ優先したって‼」
『魔王城』の面々は好きな事を言ってくれる。
「ご主人様、ご主人様‼」
め~の声と共に聞こえてくる、タンポポの声。
「悪さする植物は僕が食べちゃうから、安心して‼」
…そうか…悪いな、タンポポ…済まないが、しばらくヒナギク様の相手をしてくれ…抱き着いて、モフモフしているだけだから…苦しかったら嫌がる様にな…
次に、支給する衣服について。当面はこれから作る服を着てもらうけど強制はしない。大人三人分の体形はヒナギク様より若干大きめとする。いや、他の人のサイズなんて、知らないから…レンゲちゃんの分は…お腹周りだけ触らせてくれるかな…?
「いきなり、変態的な事ぉ、言うなぁ」
そういう事じゃなくて、レンゲちゃんの分の下着の大きさを決めるのに必要だから。うん。あの三人程、太くないでしょ?お腹周りとか…
「我々は太くないぞ‼むしろ標準体型だ‼」
非難の声が上がる中、レンゲちゃんのお腹周りの太さを計測する…誰ですか?ロリコンとか言っているのは?仕方ないでしょ。僕のベルトくらいしか胴回りを測るものがないんだから‼ズボンが擦り落ちるのは仕方ないんです‼基本、庶民が着る服は古着で、サイズ的に大きめのモノを着ているだけなんです‼え?僕の胴回りが自分達より細く見える…それは皆さんの不摂生の影響でしょうね…抓み食いは控えた方が良いですよ…
レンゲちゃんのサイズを測り終えたので、皆さんが森に向かう。ヒナギク様はタンポポを相当気に入ったらしく、最後まで、抱き着いて、頬擦りしていた…
さて、僕の今日の仕事は畑作りと『魔王城』の皆の衣類作り‼
まず、湖に浮かんでいるタンポポの羊毛の一部を毟り取り、洗濯用の川辺に向かう。
寝具を作製した手順で、洗浄・ブロック化し、服にするのだが…ズボンの様な腹回りの調整用の紐を通す穴を、どうやって処理するか?で悩む事となる…首回りなら、穴を開けて紐を通せばお終いだが、腹回りは絞る様に締めなければならない…
…悩みながら、羊毛ブロックを抱えていると、一狩り終えて、獲物を担いでくるヒナギク様と遭遇。今回は鹿っぽい魔獣で、角が複雑に絡まり伸びている…
「ヨシノが針とか持ってなかった?」
その言葉に解体の準備を始めているヨシノさんの元へ。
「あれ?お持ちじゃなかったのですか?」
持っていません‼女の子だったら、持っていたかも知れませんが、僕は男ですから‼
ちょっと、からかわれたのか?とも思ったが、ヨシノさんは解体の準備の手を止めて、自分の部屋に向かってくれた。代わりと言っては何だけど、獲物の解体の準備は僕が担当する。まぁ、獲物を捌き易くする為の三脚櫓を立てるだけなのだが…
そう言えば、貴族のメイドさんは主人の服のサイズが変わってしまった時の為に、着替えの時には裁縫道具を持って、主人や夫人の着替えを手伝っていると聞いた事がある…まぁ、どうしても入らない時は仕立て屋さんを呼んで新しく作って、入らなくなった衣服を古着屋さんに下取りしてもらうらしいけど…
櫓を立て終わった頃に、ヨシノさんが裁縫道具を持って来てくれた。
「え?物干しに干す様にはしないのですか?」
いや、吊るし切りにした方が肉も纏め易いですから…ああ、頭は下に‼まずは血抜きです‼昨日のクマみたいな獣の解体で気になっていたので…あっちはもう良いです…臭みは燻煙で誤魔化せるかと思いますが…ダメだったら香辛料を多用しましょう…
基本的な解体方法を二人に教えて、僕は羊毛ブロックに向き合う。縫い針があるのは助かった。一時は縫い目のないシームレスな服をどうやって作るか?と本気で脳内検討していたくらいだったから。その前に、この針がダメになる可能性もあったので、取り置いてある金属の塊を少し取り出し、針を錬成する…形自体は問題なし。強度的にはどうだろう?試しに、自分の服の裾を縫うが、問題はないようだ。
すぐに服の作成に入る。まずは、寝具作りのシーツを作った要領で布を織って行く。二メートル幅の長さは百メートル程。ナマモノじゃないので余れば保管できる。
次に三人の体形を思い浮べて…こんなカンジだろうか…上半身用の裾長めのロングTシャツ用の生地と、股下丈が一メートル程、胴回りが七十センチになるくらいの下半身用のズボン生地を裁断し、それぞれを縫い合わせる。
度々、手を止めさせて、申し訳ないが、ヒナギク様に試着をお願い。
「…うん…問題ないね…」
ズボンの裾を捲くり、腰の部分を持ち上げながら、ヒナギク様は僕達の前に姿を現してくれた。その場で一回転してポーズを決めてくれる。はい、可愛いです。
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