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2・『クラスメート殺し』と『愛の言霊』
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…中学一年の入学式の後、隣の席になった女の子に校舎裏に呼び出された。
「ねぇ。鳳さん」
可愛らしい笑顔…未だ、こどもらしさを見せる表情には無邪気さが溢れている。
しかし、
「死んで。」
手に持ったカッターナイフで葵に切り付ける。が、難なく躱し距離を置く。
諦める様子のない少女…今度は、露出している急所…首元を狙うも、これも回避。
「仕方ない」
葵の瞳に光が宿り出すが、気にする事もなく、対峙する少女が大振りで切り払うも、頭を下げて少女の懐に入り込む葵。彼女の胸元に手を置く。
途端、少女が衣服やカッターナイフと共に赤い液体となり、バシャンと地面に弾ける。
…息を整える為に大きく息を吐くと、土の露出している箇所に少女だった赤い液体を流し込む。無論、葵に付着した返り血も…
今日は帰宅するだけ。荷物を取りに教室に戻る。
「‼」
一瞬、硬直してしまうが、構う事なく、自分の席の荷物を持って帰路に付く。
…隣の席には、殺したはずの少女が、同じ小学校の友達と語り合っていた…
この一節は、アニメ化された『青い不死鳥の物語』通称『ブルふぇに』の第一弾の冒頭のシーンである。ただ、本編にはこのシーンは描かれてないのだが…
『足元に広がる血溜まりは三回殺したクラスメイトである。』
このト書きで始まる第二章は、『ブルふぇに』マニアの間では、『クラスメイト殺し』と呼ばれている…実際は、一行空けているだけなのだが…
この章では当時の普通の中学生と、超能力者の闘いが描かれている。とは言っても、中学生の方は途中から武装し葵を襲撃するのだが…
入学式にこんな事があったかは不明だが、葵への襲撃は、当初人目を忍んだ一対一であったが、二週間目から二人、三人の集団戦となり、三週目からクラスメイトの殆どが葵を襲撃、四週目から担任も加わった襲撃となった…幾度となくクラスメイトを殺したが、何度も彼らは元の姿、元の笑顔、元の殺意のまま、葵の前に現れる…
この描写が克明に記されており、葵の陥った狂気的状況をじわじわと読者の心に滲ませる…
だが、葵は何とか自らの正気を保てていた。葵を襲撃しない唯一の存在。前の席の緑と名乗る少女である。緑と一緒にいると、クラスメイトの襲撃が止む。この状況を利用して、葵は緑が嫌がらない限り、行動を共にすることにした。当然、二人の間には友情が芽生える。他のクラスメイトの間ではレズなんじゃないか?との噂もされる程に、べったりだった。ゴールデンウィークは緑の家にお泊りに行って、夜更かし…彼女の姉の大学生の茜と共に徹夜のパジャマパーティとなった。
実は葵自身、緑の存在に、不信感を持っていた…それは彼女が葵を襲撃しない事だけでなく、緑がいる間の襲撃がなくなる事…襲撃の首謀者?…殺意も敵愾心も感じない目の前の少女に友情こそ感じていたが、信頼までは預けられなかった…
五月以降は連携が取れて行き、六月からは拳銃の発砲があり、七月には自動小銃の十字砲火が加えられた…銃程度の衝撃なら障壁で防げたが、近接戦闘も含めた複数・多方面の相手では苦戦を強いられた…
「じゃあ、三時に、教室で‼」
人目の付かない体育館裏…二学期修了式直後の体育館裏で、クラス一のモテ男に呼び出され、告げられた言葉だった…
「決戦だ‼」
教室で全員が襲って来る事態が、明確に理解でき、身が引き締まる。
一端、隠れ家のアパートに戻って、部屋を片付ける…逃亡の準備だ…
問題はクラスメイト全員を相手にできるか。どう効率的に倒すか…いや、緑が出て来た時にどう対処しようか?敵対した時、彼女を殺せるか?…もしかしたら、彼女に殺さるのもアリだろうか…?
「あれ?」
涙が零れている。常に感情を表に出さない様に制御しているのに…?
…約束の時間が来た…
…部活の声が校庭から聞こえて来る…教室は静寂…だが、誰かは居る気配はある…
覚悟を決めて、引き戸の取っ手を持ち、開け放つ。
「⁈」
見渡す限りの赤の世界…文字通り血の海…彼女の目の前にはその中に佇む少女…最後の担任を『液化』させた直後で、彼の血を頭から浴びている…
緑だった。
「終わったよ」
彼女特有の愛らしい声でこちらに微笑むと、周囲の血の海が一人ひとりの人型に戻り…
「…じゃあ、気を付けて帰れよ~」
担任が葵の脇を抜け、続く様に、クラスメイト達が彼女の脇を通り抜ける…
「帰ろっか」
呆然としている葵に、緑は告げて、彼女達は校舎を後にした。
葵の中学一年一学期はこうして終わったのだが、これでこの章は終わりではない。
向かった先は緑の家…と言うより、アパートだった。
「おかえり」
茜が待っていた。葵と同伴なのは既知の様だ。
葵を置いて、緑は茜と別の部屋に向かう…取り残された葵は呆然自失から復帰。誘われるまま付いて来た事に反省しつつも、敵意のない緑を信頼していた…いや、信頼してしまったのかもしれない…油断したか?しかし、何故、あたしを助ける?あたしを狙っていた組織が彼女達の敵対組織だった?
そんな事を考えていると、二人が戻って来た。
「葵ちゃん。ちょっと…」
緑が葵の視線を遮る様に手を翳す…
「今までごめんね」
緑の声が、僅かな間に別の人物の声に変わっていく…いや、聞き覚えのある声…
「…え?」
遮られえていた光景が晴れると、目の前には、自分がいた…自身を鏡でしか見ていなかった事で多少の違和感があったが、間違いなく、自分。
そう認識した途端、目の前の光景が揺らぎ、現在から中学校入学以前の鳳葵になる前の自分の記憶…本当の自分の記憶が甦る…
…どこかの研究所…芽生えた自我…耐え切れずに、培養ポッドを破壊し、逃げ出した…自分にこの衝動…この感情を与えたモノに会いたい…研究所から飛び出して、その存在を探す…探す…探す…探す‼あった‼あそこだ‼……いたっ‼何か…何か…‼
「あああぁあぁあ‼」
…研究所の異常を察知した葵と茜の前に感情が芽生えたばかりの少女は降り立った…先日降った雪が路地裏の隅に残る中、何かを求めるように葵に手を伸ばしている…彼女から培養液の異臭が彼女から漂っていることから、研究所の関係者…いや、実験体である事を察知し、彼女の保護を決める…落ち着かせる為に、少し離れた公園に連れて行き、彼女の記憶を覗くが、記憶からは大した情報は得られなかった…非情かも知れないが、処分する事も茜から提案されたが、こちらの動向を知られている可能性を考慮し、彼女に葵を演じてもらう事にする…これも、非情な判断だが、葵が見張りと言う名の護衛として張り付く事で茜を納得させる…渋々ながら了承を得た事で、彼女に葵の記憶を転写…アパートと中学校の手続きも済ませ…
「…そういう事なの…」
最近の記憶の中にある今までの中学校生活も思い出し、葵だった少女の記憶が混乱から覚めた。と同時に、少女に不安の表情が浮かぶ…自分はいったい何者なのか…?
「じゃあ、緑で‼」
多少の思案の後、葵が提案。自分の名前に拘りはないので、そのまま、彼女が葵でも構わないとも提案したが、戸惑う葵だった少女…
「あたしの使い古しじゃイヤ?」
「…あたし、緑で良いの?」
泣きの声色の葵だった少女に
「緑で良いんだよ」
腕を広げる葵。
答える様に、葵だった少女…緑が、葵の胸に飛び込む。
「ありがとう‼ありがとう‼」
何度も、泣きながら感謝の言葉を伝える緑を抱き寄せる葵…
いつ廃棄されても、おかしくない存在…ただの実験体でしかなかった彼女に、一番の親友の名前を譲られた事が緑には嬉しかった…それと同時に、あの優しかった緑にもう会えない事に悲しさもある…葵にお願いすればもう一度会えるのかも知れない。でも、それは、あの場に確かに存在した彼女ではない。幻と知ってしまった緑であり、戻れないと理解してしまった今の自分を再認識するだけだと、新たな緑は気付いていた。葵から受け継いだ記憶の影響もあったと思う。その強い彼女のままでありたい。自分が葵でなくなっても。緑になったとしても。だから、今だけ、泣きたい。泣いていたい。憧れの強い葵の腕の中で、優しかった緑だった人の胸で…
…名前。それは親から子へ送られる、最大にして最強の愛の言霊…
このト書きで第二章は締め括られる。
この舞台となった中学校は東京島の埼玉地区にあるらしい。この『らしい』と言うのは全国の中学で同じような現象が起きていた為である。時代の転換期に起きる凶事の一つとして当時は語られていたが、『ブルふぇに』の登場で事態が一転。当時の教育省に、原因と責任追及のメールが殺到し、幾度となく教育省のサーバーがダウンする事態となった…結局、凶事のあった当時の大臣の議員辞職だけで、表面上は納まった…と言うのも、当時の世界は、未だに超能力の発現による混乱が収まっていなかったのと、既に、教育省内部が発覚当時の大臣の手によって粛清されていた為だろう…その中学校の葵のクラスメイト達と担任は、一年の夏休みから卒業までの間に亡くなっている…死因は事故死が大半で、急性白血病、骨肉腫も数人、担任はステージ4の胃がんで、発覚は一年の夏休み後…二年の終わりに亡くなっている…事故については修学旅行の三年のバス事故で、二台が崖下に転落、一台が爆発炎上すると言う重大事故…最後に残った一人は三年の夏休み中に飛び降り自殺した。遺書はないが、「何で俺は生きてる?」と飛び込む前に呟いていたと言う。
自殺に関しては不明だが、これらの事案に不自然な点はなかったものの、一クラス全員が結果的に死亡と言う事態はマスメディアが見逃さなかった。幾つかの出版社スキャンダル専門サイトが企画を立てるものの、各編集部の上層部がストップを出す…メディア関係に箝口令が敷かれたとの噂もあるが、真実は時間の彼方に置き去りにされた…
現在、葵たちが通っていたであろう学校は統廃合を繰り返し、学校としてではなく宿泊施設として残っている…校舎が残っている理由はノスタルジーブームの名残…と言うより、解体が進んでいないのが現状で、まず、新宿方面の高層ビル群が最優先と言う話はニュースや情報サイト等で報じている…
この章で葵は、緑と言う相棒を手に入れた。おそらく、葵が最も信頼する親友…そして、葵が一部で『悪魔』と呼ばれる原因となる少女である…
「ねぇ。鳳さん」
可愛らしい笑顔…未だ、こどもらしさを見せる表情には無邪気さが溢れている。
しかし、
「死んで。」
手に持ったカッターナイフで葵に切り付ける。が、難なく躱し距離を置く。
諦める様子のない少女…今度は、露出している急所…首元を狙うも、これも回避。
「仕方ない」
葵の瞳に光が宿り出すが、気にする事もなく、対峙する少女が大振りで切り払うも、頭を下げて少女の懐に入り込む葵。彼女の胸元に手を置く。
途端、少女が衣服やカッターナイフと共に赤い液体となり、バシャンと地面に弾ける。
…息を整える為に大きく息を吐くと、土の露出している箇所に少女だった赤い液体を流し込む。無論、葵に付着した返り血も…
今日は帰宅するだけ。荷物を取りに教室に戻る。
「‼」
一瞬、硬直してしまうが、構う事なく、自分の席の荷物を持って帰路に付く。
…隣の席には、殺したはずの少女が、同じ小学校の友達と語り合っていた…
この一節は、アニメ化された『青い不死鳥の物語』通称『ブルふぇに』の第一弾の冒頭のシーンである。ただ、本編にはこのシーンは描かれてないのだが…
『足元に広がる血溜まりは三回殺したクラスメイトである。』
このト書きで始まる第二章は、『ブルふぇに』マニアの間では、『クラスメイト殺し』と呼ばれている…実際は、一行空けているだけなのだが…
この章では当時の普通の中学生と、超能力者の闘いが描かれている。とは言っても、中学生の方は途中から武装し葵を襲撃するのだが…
入学式にこんな事があったかは不明だが、葵への襲撃は、当初人目を忍んだ一対一であったが、二週間目から二人、三人の集団戦となり、三週目からクラスメイトの殆どが葵を襲撃、四週目から担任も加わった襲撃となった…幾度となくクラスメイトを殺したが、何度も彼らは元の姿、元の笑顔、元の殺意のまま、葵の前に現れる…
この描写が克明に記されており、葵の陥った狂気的状況をじわじわと読者の心に滲ませる…
だが、葵は何とか自らの正気を保てていた。葵を襲撃しない唯一の存在。前の席の緑と名乗る少女である。緑と一緒にいると、クラスメイトの襲撃が止む。この状況を利用して、葵は緑が嫌がらない限り、行動を共にすることにした。当然、二人の間には友情が芽生える。他のクラスメイトの間ではレズなんじゃないか?との噂もされる程に、べったりだった。ゴールデンウィークは緑の家にお泊りに行って、夜更かし…彼女の姉の大学生の茜と共に徹夜のパジャマパーティとなった。
実は葵自身、緑の存在に、不信感を持っていた…それは彼女が葵を襲撃しない事だけでなく、緑がいる間の襲撃がなくなる事…襲撃の首謀者?…殺意も敵愾心も感じない目の前の少女に友情こそ感じていたが、信頼までは預けられなかった…
五月以降は連携が取れて行き、六月からは拳銃の発砲があり、七月には自動小銃の十字砲火が加えられた…銃程度の衝撃なら障壁で防げたが、近接戦闘も含めた複数・多方面の相手では苦戦を強いられた…
「じゃあ、三時に、教室で‼」
人目の付かない体育館裏…二学期修了式直後の体育館裏で、クラス一のモテ男に呼び出され、告げられた言葉だった…
「決戦だ‼」
教室で全員が襲って来る事態が、明確に理解でき、身が引き締まる。
一端、隠れ家のアパートに戻って、部屋を片付ける…逃亡の準備だ…
問題はクラスメイト全員を相手にできるか。どう効率的に倒すか…いや、緑が出て来た時にどう対処しようか?敵対した時、彼女を殺せるか?…もしかしたら、彼女に殺さるのもアリだろうか…?
「あれ?」
涙が零れている。常に感情を表に出さない様に制御しているのに…?
…約束の時間が来た…
…部活の声が校庭から聞こえて来る…教室は静寂…だが、誰かは居る気配はある…
覚悟を決めて、引き戸の取っ手を持ち、開け放つ。
「⁈」
見渡す限りの赤の世界…文字通り血の海…彼女の目の前にはその中に佇む少女…最後の担任を『液化』させた直後で、彼の血を頭から浴びている…
緑だった。
「終わったよ」
彼女特有の愛らしい声でこちらに微笑むと、周囲の血の海が一人ひとりの人型に戻り…
「…じゃあ、気を付けて帰れよ~」
担任が葵の脇を抜け、続く様に、クラスメイト達が彼女の脇を通り抜ける…
「帰ろっか」
呆然としている葵に、緑は告げて、彼女達は校舎を後にした。
葵の中学一年一学期はこうして終わったのだが、これでこの章は終わりではない。
向かった先は緑の家…と言うより、アパートだった。
「おかえり」
茜が待っていた。葵と同伴なのは既知の様だ。
葵を置いて、緑は茜と別の部屋に向かう…取り残された葵は呆然自失から復帰。誘われるまま付いて来た事に反省しつつも、敵意のない緑を信頼していた…いや、信頼してしまったのかもしれない…油断したか?しかし、何故、あたしを助ける?あたしを狙っていた組織が彼女達の敵対組織だった?
そんな事を考えていると、二人が戻って来た。
「葵ちゃん。ちょっと…」
緑が葵の視線を遮る様に手を翳す…
「今までごめんね」
緑の声が、僅かな間に別の人物の声に変わっていく…いや、聞き覚えのある声…
「…え?」
遮られえていた光景が晴れると、目の前には、自分がいた…自身を鏡でしか見ていなかった事で多少の違和感があったが、間違いなく、自分。
そう認識した途端、目の前の光景が揺らぎ、現在から中学校入学以前の鳳葵になる前の自分の記憶…本当の自分の記憶が甦る…
…どこかの研究所…芽生えた自我…耐え切れずに、培養ポッドを破壊し、逃げ出した…自分にこの衝動…この感情を与えたモノに会いたい…研究所から飛び出して、その存在を探す…探す…探す…探す‼あった‼あそこだ‼……いたっ‼何か…何か…‼
「あああぁあぁあ‼」
…研究所の異常を察知した葵と茜の前に感情が芽生えたばかりの少女は降り立った…先日降った雪が路地裏の隅に残る中、何かを求めるように葵に手を伸ばしている…彼女から培養液の異臭が彼女から漂っていることから、研究所の関係者…いや、実験体である事を察知し、彼女の保護を決める…落ち着かせる為に、少し離れた公園に連れて行き、彼女の記憶を覗くが、記憶からは大した情報は得られなかった…非情かも知れないが、処分する事も茜から提案されたが、こちらの動向を知られている可能性を考慮し、彼女に葵を演じてもらう事にする…これも、非情な判断だが、葵が見張りと言う名の護衛として張り付く事で茜を納得させる…渋々ながら了承を得た事で、彼女に葵の記憶を転写…アパートと中学校の手続きも済ませ…
「…そういう事なの…」
最近の記憶の中にある今までの中学校生活も思い出し、葵だった少女の記憶が混乱から覚めた。と同時に、少女に不安の表情が浮かぶ…自分はいったい何者なのか…?
「じゃあ、緑で‼」
多少の思案の後、葵が提案。自分の名前に拘りはないので、そのまま、彼女が葵でも構わないとも提案したが、戸惑う葵だった少女…
「あたしの使い古しじゃイヤ?」
「…あたし、緑で良いの?」
泣きの声色の葵だった少女に
「緑で良いんだよ」
腕を広げる葵。
答える様に、葵だった少女…緑が、葵の胸に飛び込む。
「ありがとう‼ありがとう‼」
何度も、泣きながら感謝の言葉を伝える緑を抱き寄せる葵…
いつ廃棄されても、おかしくない存在…ただの実験体でしかなかった彼女に、一番の親友の名前を譲られた事が緑には嬉しかった…それと同時に、あの優しかった緑にもう会えない事に悲しさもある…葵にお願いすればもう一度会えるのかも知れない。でも、それは、あの場に確かに存在した彼女ではない。幻と知ってしまった緑であり、戻れないと理解してしまった今の自分を再認識するだけだと、新たな緑は気付いていた。葵から受け継いだ記憶の影響もあったと思う。その強い彼女のままでありたい。自分が葵でなくなっても。緑になったとしても。だから、今だけ、泣きたい。泣いていたい。憧れの強い葵の腕の中で、優しかった緑だった人の胸で…
…名前。それは親から子へ送られる、最大にして最強の愛の言霊…
このト書きで第二章は締め括られる。
この舞台となった中学校は東京島の埼玉地区にあるらしい。この『らしい』と言うのは全国の中学で同じような現象が起きていた為である。時代の転換期に起きる凶事の一つとして当時は語られていたが、『ブルふぇに』の登場で事態が一転。当時の教育省に、原因と責任追及のメールが殺到し、幾度となく教育省のサーバーがダウンする事態となった…結局、凶事のあった当時の大臣の議員辞職だけで、表面上は納まった…と言うのも、当時の世界は、未だに超能力の発現による混乱が収まっていなかったのと、既に、教育省内部が発覚当時の大臣の手によって粛清されていた為だろう…その中学校の葵のクラスメイト達と担任は、一年の夏休みから卒業までの間に亡くなっている…死因は事故死が大半で、急性白血病、骨肉腫も数人、担任はステージ4の胃がんで、発覚は一年の夏休み後…二年の終わりに亡くなっている…事故については修学旅行の三年のバス事故で、二台が崖下に転落、一台が爆発炎上すると言う重大事故…最後に残った一人は三年の夏休み中に飛び降り自殺した。遺書はないが、「何で俺は生きてる?」と飛び込む前に呟いていたと言う。
自殺に関しては不明だが、これらの事案に不自然な点はなかったものの、一クラス全員が結果的に死亡と言う事態はマスメディアが見逃さなかった。幾つかの出版社スキャンダル専門サイトが企画を立てるものの、各編集部の上層部がストップを出す…メディア関係に箝口令が敷かれたとの噂もあるが、真実は時間の彼方に置き去りにされた…
現在、葵たちが通っていたであろう学校は統廃合を繰り返し、学校としてではなく宿泊施設として残っている…校舎が残っている理由はノスタルジーブームの名残…と言うより、解体が進んでいないのが現状で、まず、新宿方面の高層ビル群が最優先と言う話はニュースや情報サイト等で報じている…
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