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焼き肉屋にて
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「俺、男が好きなんだ」
騒がしい店内の中、俺はかぼちゃを落とさないように慎重に網にのせていた。
無事、3枚のかぼちゃが綺麗に並べられた。
焼き肉屋に来ておいて、肉に興味がない俺は食べ放題なのに野菜ばかり焼いている。
さっき食べたなすは最高に美味しかったから、あと5皿ぐらい食べたい。
「あの……聞いてた?」
向かいに座っていた、10年ぶりに会う友達の田中はかぼちゃに夢中の俺に心配そうに聞いてくる。
「もう1回、言う。ちゃんと聞いててよ」
田中はウーロン茶を1口飲み、座り直してトングを掴んだままの俺に再度、説明をしようとしたのを俺は制した。
「いいんじゃない」
「はぁ?」
俺はかぼちゃを返し、日頃飲まないのにフリードリンクだから選んだコーラを飲んで、顔をしかめた。
「やっぱり、ウーロン茶のが良かったかも。でもウーロン茶も飲み慣れてないんだよな。オレンジジュースは白飯と合わないし。やっぱり水だな。冷えそうだけど、水にしとこ」
残すことに罪悪感があるので、ウーロン茶を飲み干してグラスをテーブルの端へやった。
「言うこと、それだけ?」
少し焦げたかぼちゃを全て救出すると、フルーツがなんちゃらと書いてあるタレをかけた。
「そりゃ驚いて、心の中はてんやわんやだけど、あちっ!!」
熱々のかぼちゃを囓ったら、熱すぎて皿に落とした。
「やんちゃん、ごめん」
俺は全てのかぼちゃを細かくしだした。
「何で俺、謝られてんの?」
「こんな、あの……聞かされても困る事言って」
田中は俯いたまま続ける。
「俺、友達やんちゃんしかいないし、1人で考えてたら体調悪くなるし。どうしたら良いか分からなくなって。迷惑だと思ったけど……ごめん。自分勝手だった。帰るよ」
「ちょっと、待て」
立ち上がった田中を止め、数分後に戻ってきた俺は、玉ねぎときゃべつの皿と水、それと田中が好きだったミックスジュースを持ってきた。残念ながら、なすは取られてしまって無かった。
「まだ時間はある。勿体ないから、食べよう」
俺は玉ねぎを網にのせ、水を飲んで冷めたかぼちゃを食べる。
田中も座り、ミックスジュースを飲んだ。
「何で、焼き肉屋で話そうと思ったんだ?どっちかの家のが話しやすくないか?」
「家だと、なかなか話し出せないと思って」
田中はここに来てから、30分は黙っていた。
「そうか」
玉ねぎを返した時、ばらけたがかまわず焼き続ける。
俺はかぼちゃの残骸が浸かったタレを白飯にかけ、かき込んだ。
俺は飲み込み、箸を置いた。
「死ぬなよ」
田中は、はっとした表情になった。
ばらばらになった玉ねぎを皿にのせ、別のフルーツダレをかけた。
「死ななきゃいいよ。死ななきゃいけないようなことじゃないから。俺が言えるのはそれだけ。自分で死を選ばなくていい。どうせ人間はいつか死ぬんだから」
残りの白飯と玉ねぎを食べ終え、おかわりへと向かう。
戻ってくると、田中は泣いていた。
「チョコアイス、あったよ」
田中が高校の時から好きだったのを前に置き、俺は大盛りの白飯となすを2皿にワカメスープを持ってきた。
なすが焼き上がる頃、田中が呟いた。
「……死なないよ」
スープを飲みながら、溶けるアイスを俺は見ていた。
人の心は簡単に壊れてしまうのを知っている。
タレかけ白飯を食べながら、兄の事を考えた。
俺の兄は10年前に死んだ。
兄には彼氏がいた。
家族にも黙って付き合ってた。
上手く隠せていた。
海岸に打ち上げられて変わり果てた姿になっても。
兄の葬儀に彼氏が来るまで秘密のままだった。
俺らは驚いたけど、兄に偽りの姿でいさせたことを悔やんだ。
けれど、告白されたら受け入れられただろうか。
結局のところ兄の本心は分からない。
兄がいなくなって家族は変わった。あまり良くない方に。仕方がないけれど、元には戻らないだろう。
それでも俺の中では何かが変わり、兄の彼氏との交友が続いていた。
兄の彼氏は良い人で、心配をしてくれる。俺と家族の事を気遣ってくれる。今もたまにあっては高校の時よく食べてたフルーツのカップに入ったアイスをくれる。段ボール1箱分も。来週もくれる予定なので、冷凍庫を買わないといけないかもしれない。1人暮らしなのに。
スープに白飯を入れ、漬け物を囓る。
こんな話をした方が田中の力になるだろうか?
食べ終えた俺は、フルーツとアイス3種盛をテーブルの真ん中に置き、溶けたチョコアイスを飲み、バニラアイスにスプーンを突き刺した。
「せめて、アイスぐらい食べろよ」
カレースプーンを握らせた。
「でかすぎない?」
「たくさん掬えていいじゃん」
田中はようやく笑い、チョコアイスを大口を開けて食べ出した。
「それで、相手はどんな人?」
「取引先の人だけど、気持ちは伝えないよ。自分の中にだけの気持ちで良いんだ」
「そうか」
「やっぱり、やんちゃんに相談して良かった。ありがとう」
田中は晴れやかな顔をして、アイスを食べた。
俺はそれだけで良かった。
騒がしい店内の中、俺はかぼちゃを落とさないように慎重に網にのせていた。
無事、3枚のかぼちゃが綺麗に並べられた。
焼き肉屋に来ておいて、肉に興味がない俺は食べ放題なのに野菜ばかり焼いている。
さっき食べたなすは最高に美味しかったから、あと5皿ぐらい食べたい。
「あの……聞いてた?」
向かいに座っていた、10年ぶりに会う友達の田中はかぼちゃに夢中の俺に心配そうに聞いてくる。
「もう1回、言う。ちゃんと聞いててよ」
田中はウーロン茶を1口飲み、座り直してトングを掴んだままの俺に再度、説明をしようとしたのを俺は制した。
「いいんじゃない」
「はぁ?」
俺はかぼちゃを返し、日頃飲まないのにフリードリンクだから選んだコーラを飲んで、顔をしかめた。
「やっぱり、ウーロン茶のが良かったかも。でもウーロン茶も飲み慣れてないんだよな。オレンジジュースは白飯と合わないし。やっぱり水だな。冷えそうだけど、水にしとこ」
残すことに罪悪感があるので、ウーロン茶を飲み干してグラスをテーブルの端へやった。
「言うこと、それだけ?」
少し焦げたかぼちゃを全て救出すると、フルーツがなんちゃらと書いてあるタレをかけた。
「そりゃ驚いて、心の中はてんやわんやだけど、あちっ!!」
熱々のかぼちゃを囓ったら、熱すぎて皿に落とした。
「やんちゃん、ごめん」
俺は全てのかぼちゃを細かくしだした。
「何で俺、謝られてんの?」
「こんな、あの……聞かされても困る事言って」
田中は俯いたまま続ける。
「俺、友達やんちゃんしかいないし、1人で考えてたら体調悪くなるし。どうしたら良いか分からなくなって。迷惑だと思ったけど……ごめん。自分勝手だった。帰るよ」
「ちょっと、待て」
立ち上がった田中を止め、数分後に戻ってきた俺は、玉ねぎときゃべつの皿と水、それと田中が好きだったミックスジュースを持ってきた。残念ながら、なすは取られてしまって無かった。
「まだ時間はある。勿体ないから、食べよう」
俺は玉ねぎを網にのせ、水を飲んで冷めたかぼちゃを食べる。
田中も座り、ミックスジュースを飲んだ。
「何で、焼き肉屋で話そうと思ったんだ?どっちかの家のが話しやすくないか?」
「家だと、なかなか話し出せないと思って」
田中はここに来てから、30分は黙っていた。
「そうか」
玉ねぎを返した時、ばらけたがかまわず焼き続ける。
俺はかぼちゃの残骸が浸かったタレを白飯にかけ、かき込んだ。
俺は飲み込み、箸を置いた。
「死ぬなよ」
田中は、はっとした表情になった。
ばらばらになった玉ねぎを皿にのせ、別のフルーツダレをかけた。
「死ななきゃいいよ。死ななきゃいけないようなことじゃないから。俺が言えるのはそれだけ。自分で死を選ばなくていい。どうせ人間はいつか死ぬんだから」
残りの白飯と玉ねぎを食べ終え、おかわりへと向かう。
戻ってくると、田中は泣いていた。
「チョコアイス、あったよ」
田中が高校の時から好きだったのを前に置き、俺は大盛りの白飯となすを2皿にワカメスープを持ってきた。
なすが焼き上がる頃、田中が呟いた。
「……死なないよ」
スープを飲みながら、溶けるアイスを俺は見ていた。
人の心は簡単に壊れてしまうのを知っている。
タレかけ白飯を食べながら、兄の事を考えた。
俺の兄は10年前に死んだ。
兄には彼氏がいた。
家族にも黙って付き合ってた。
上手く隠せていた。
海岸に打ち上げられて変わり果てた姿になっても。
兄の葬儀に彼氏が来るまで秘密のままだった。
俺らは驚いたけど、兄に偽りの姿でいさせたことを悔やんだ。
けれど、告白されたら受け入れられただろうか。
結局のところ兄の本心は分からない。
兄がいなくなって家族は変わった。あまり良くない方に。仕方がないけれど、元には戻らないだろう。
それでも俺の中では何かが変わり、兄の彼氏との交友が続いていた。
兄の彼氏は良い人で、心配をしてくれる。俺と家族の事を気遣ってくれる。今もたまにあっては高校の時よく食べてたフルーツのカップに入ったアイスをくれる。段ボール1箱分も。来週もくれる予定なので、冷凍庫を買わないといけないかもしれない。1人暮らしなのに。
スープに白飯を入れ、漬け物を囓る。
こんな話をした方が田中の力になるだろうか?
食べ終えた俺は、フルーツとアイス3種盛をテーブルの真ん中に置き、溶けたチョコアイスを飲み、バニラアイスにスプーンを突き刺した。
「せめて、アイスぐらい食べろよ」
カレースプーンを握らせた。
「でかすぎない?」
「たくさん掬えていいじゃん」
田中はようやく笑い、チョコアイスを大口を開けて食べ出した。
「それで、相手はどんな人?」
「取引先の人だけど、気持ちは伝えないよ。自分の中にだけの気持ちで良いんだ」
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田中は晴れやかな顔をして、アイスを食べた。
俺はそれだけで良かった。
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