絆創膏

ジョー

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絆創膏

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昼休みの空き教室。
「ごちそうさまでした」
俺は母親に作ってもらった大盛りの焼き肉弁当と2倍サイズで半額だったチョコクリームチョコチップメロンパンを食べ終えてもまだ、何か食べたいなと思いながら向かいに座って、黙々と弁当を食べる2つ隣のクラスの男子『滝本』を見ていた。
滝本は、美術の教科書に載っていたどこかの国の絵画に描かれた神様的な風貌の人間だった。
きっと、こういう人間を綺麗だというのだろうか。
俺には分からないけれど。
滝本は花柄でピンク色の丸い2段の弁当箱に、ほとんど肉にしてくれとリクエストした俺とは違って、バランスよく詰められたおかずとおにぎりを綺麗に食べる。
「可愛い」
思わず口から出た言葉に、滝本は顔を上げた。
「弁当箱、可愛いやつだなって……余計なこと言ってごめん」
俺は頭をかいて言った事を後悔していると、なぜか赤くなった滝本は首を振ると箸を置き、スマホのメモに打ち込んでいく。
『これ、妹の弁当。間違われた』
「そっか……」
『俺も、焼き肉弁当の方が良い』
「そうだよな」
大して面白い事も言えずにいても、滝本は微笑む。
俺も笑いながら、滝本の事を考えてみる。
原因は知らないけれど、滝本は話せない。
俺が会った時には声が出せなかった。話したい時は俺が勝ってに話して、滝本はスマホを使えばいいだけで、さほど困る事はない。
俺は話をするのが得意ではないから、静かな空間に2人で居ることがほとんどだったけれど、学校に友達を作らない俺には、不思議と居心地は悪くなかった。
滝本の事を他人が簡単に言ってはいけないかもしれないけれど、日常生活は大変だろうなと思う。
俺だったら……と考えていると滝本は首を傾げた。
「何でもないよ」
滝本は頷き、弁当箱を片付けた。
俺は残りわずかになった麦茶を計算しながら飲んだ。
帰りまでに残りそうにないから、勿体ないけど自販機で買うかと考えていると、滝本が隣に座った。
そして、白く長い指を差し出す。
そこには俺が昨日貼った、リアルなキリンが葉を食べるイラストの絆創膏が巻かれている。
あんまりというか、全く滝本には合わないなかったけれど、朝、姉から押し付けられたキリンの絆創膏しか手持ちが無かった。
決して嫌がらせではない。
保健室へ行けば普通の絆創膏があるのに、俺に貼れと言う。そもそも自分で持ってきた方が早いんじゃないか。
「1日貼ってるの、不衛生じゃない?」
滝本の口が『いいんだ』と言った。
いつからか、滝本は俺に絆創膏を貼れと言ってきた。スマホに打ち込まれたのは強い文面ではなかったけれど、断れない圧があった。
理由は分からないまま、俺は深く考えずに、そんな滝本に付き合っている。
暇だし、嫌なことではないのでいいけれど。
ただ俺は不器用なので、上手く貼れずにしわが寄ってキリンの顔が歪んでいる。
きっと今日も、多分明日も上手く貼れる気がしない。
それでも、俺は目玉焼きのイラストの絆創膏を持ってきた。半額で50枚も入ってたから、お得感につられて買ってしまった。
滝本を見れば、嬉しそうに待っている。
俺は滝本の手に触れた。

そういえば、いつからこんな事を始めたんだっけ。
あれは、2週間前……
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