絆創膏

ジョー

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絆創膏2

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「ペンケースがない!!」
高校生活の中で何とか作った数少ない友達の1人である山田が後ろの席で俺に聞こえるぐらいの声で騒いでいる。
「机の奥に入ってないのか。前は突っ込んだ教科書の間に挟まってただろ」 
「探したんだけど、無いんだよね。どうしよう……買ったばっかなんだけど」
「……美術室なんじゃない?移動したのはそこぐらいだし。でも、さっきまで授業受けてただろう?」
山田は数学のプリントも全て埋めていた。
「……ペンケースだけが無いんだ」
山田を見ると、目を泳がせている。
「どうしたんだ?」
「西、放課後一緒に取りに行ってくれ」
「山田、美術部だろう」
俺にはよく分からないけれど、山田は賞を獲れるほどの才能があるらしい。
「いいじゃん。すぐに終わるから」
「行っても良いけど、本当の理由は何だ?」
「それが言えたら、初めから言ってるよ」
山田はバッグからペンケースを出して、机に置いた。
「まぁ、来てくれるなら良かった」
山田が安堵した表情になったところで、英語教師が入って来た。
授業も終わり、トイレ掃除の最中もそわそわしている山田に、俺は行くのが嫌になってきた。
「山田……」
「何?」
「何でもない」
断れないまま、刻一刻と美術室へ行く時間が近付いてくる。
一体、何をさせられるんだろう。
「行くぞ」
バッグを掴んだ山田は、飛び出さんばかりの勢いで教室を出ようとする。
「分かったよ」
渋々、立ち上がった俺はリュックを背負い、山田について行った。

「ようこそ、西君」
山田がドアを開けた瞬間、俺は美術部員の1人だけに謎の歓迎を受けた。確か2年の先輩だ。
他に部員は数人いたけれど、関わらないようにしているのか関心が無いのかそれぞれの作業をしている。
「あの……俺に何の用ですか?」
「モデルをお願い……」
「嫌です」
「少しは考えてくれないのか?」 
「俺、帰るんで失礼します」
「待ってくれ」
先輩は回り込んでドアの前に立ち塞がった。
「来月までに仕上げないとならない人物画のモデルが決まらないんだ」
「大変ですね」
「大変なんだ。本当はこうやって話している時間も無いくらいに。先生も苛立ってるし、非常にまずい状況なんだ」
「それなら、早く別の奴を見つけた方が良いのでは?」
「皆から断られたんだ」
ようやく、山田が話に入ってきた。
「部長は細かい指示を出しすぎなんですよ。だから皆、逃げて行くんです」
「最高傑作を描き上げるためには妥協はしない。山田、西君なら引き受けてくれるんじゃなかったのか?」
「保証はないって言いましたよ」
「どうしたらいいんだ」
俺は、頭を抱える部長の奥に見えた人物に目が止まった。
「あの鉛筆を削っている人はだめなんですか?」
騒がしい中、隅っこの方で黙々と鉛筆を削り続けている人物がいる。
「滝本は里見のモデルだから頼めないんだ」
「残念ですね。俺だったら1番に頼むだろうな」
鉛筆が落ちる音が響く。
「滝本君」
皆が声のする方を見た。
部員達が駆け寄る中、俺はどうしたらいいの分からず突っ立っていた。
「部長が騒ぐから滝本君、指切っちゃったじゃないですか」
「ごめんな。僕も必死だったんだよ」
「絆創膏は……矢野が使い切ったんだった」
「清潔なハンカチで押さえたら?清潔なハンカチってどこ?」
「保健室に行った方が良いよ」 
俺は我に返り、ポケットに手を入れた。
「私がついて行くよ」
「あの、良かったら使いますか」
俺は、この場に相応しくないふざけた顔をしたヘビのキャラクターの絆創膏を差し出した。
靴擦れをしたときに、従兄弟から貰った余りが手帳の中に入れっぱなしだった。
「絵が嫌かもしれないけど、保健室までならいいかなと」
相手は黙って、こっちを見上げている。
「あの……」
傷口を見ないようにしていたけれど、思わず見てしまった。
「ひっ」
ちょっとだけの血だったけれど、俺は血の気が引いた。
まだ受け取ろうとしない。
「お、俺がやるよ」
声を震わせながら、怪我人に跪くと絆創膏の紙を剥がした。
顔を引きつらせながら、傷にひびかないように今まで生きてきた中で1番優しく左手の薬指に巻いた。
「どうしたの?」
教師が来て、部員達は状況説明を始めた。
モデルの事より怪我人の事が優先順位が変わったので、部員ではない俺は帰ることにした。
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