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3話 「突然のプロポーズ」
しおりを挟む「こんにちわ、ケイ=ロレーヌ嬢。私はルタ=クラレンスと申します。突然ですが、本日は貴女様と婚約させて頂きたく此方へ参りました」
突然の申し出に体が固まる。
「お、お初にお目にかかります。ケイ=ロレーヌと申します」
ルタと名乗るその男は、歳は私より少し上ぐらいに見える。
容姿はというと、サラサラの艶やかな黒髪に、血のように深く赤い瞳が特徴的でよく見なくてもわかる美しい造形の顔立ちと、しっかりとした体つきはとても魅力的だった。
「申し訳ありませんが、突然の事に状況が読めないのですが……」
「実は先日、貴女様がフォルクング侯と婚約破棄をされたと伺いました。突然ではありますが、ケイ様が宜しければ是非私と婚約して頂きたいのです」
私と……こん……やく?
こんな地味な私と婚約してくれる人がいる……?
しかもこんなに美しい男性が私と婚約したいと言ってくれている。
もう何でもいい、私を求めてくれているという事実があるだけで。
クラレンス家はロレーヌ家と同等の侯爵家。政略結婚としては安牌すぎる選択な気がする。
まあ突然こんな私と婚約したいだなんて不思議すぎるが、彼がどんな人物が知る必要は無い。妹が妊娠していなければ、あのモラハラ気質のラインハルト様と結婚していたんだから。クラレンス様には申し訳ないけど彼と結婚するよりは良さそうだし、どうにでもなれ。
「クラレンス様の申し出、受け入れさせて頂きたいと思います」
「……本当ですか?嬉しいです。実はお父様にはケイ様がいいならと許可は頂いております。明日にでもクラレンス家にお越しください」
私の了承を受けて微笑む彼の笑顔には裏は無さそうだが、何故彼は私なんかを妻に娶りたいと思ったのだろうか。
理由は分からないが、傷物の侯爵家令嬢として売れ残らずには済みそうなので良かった。
私の価値観では、どんなに最低な人でも夫としてそばにいて欲しい。
一生独りでいるのは寂しいから。
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