婚約者を腹違いの妹に寝取られ婚約破棄されましたが、何故か騎士様に求婚されたので幸せです!〜むしろ溺愛されすぎて困惑しています〜

るん。

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57話「思惑」(1)☆ルタ視点

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(……ラインハルトは何処だ)



第3騎士団をマーシュとケイに任せ、新兵を率いてラインハルト達を追ってきたが、彼らは何処にもいなかった。

例え少数での偵察とはいえ、重装備の兵による鎧の足跡や草木を掻き分けて進んだ跡など多少なりとも痕跡が残るはず。

しかし、それが全く無い。
途中までは確認できたのに、突然消えてしまっている。先程までケイも感じていた異様な気配すらも気味が悪いほどに消えてしまった。


「団長……。フォルクング団長は何処に行かれたのでしょうか」


新兵達は不安げな表情をして問う。
”国と民を守る騎士団の兵士がそんな顔をしてはいけない──”とも伝えたくなるが、彼らは3ヶ月程前に第2騎士団へ配属されたばかりの新兵で保有魔力の多さと入団時のテストで能力の高さを評価され我が団第2騎士団へ配属されたとはいえ、戦闘経験は無し。

本来ならば本日の役割としては第3騎士団を主導に行われる戦闘を後衛から見て学び必要時サポートに回る役回りであったのに、ラインハルトとロージュ嬢によって混乱する現場。

壊滅した先輩達を目の辺りにし、その前に自分とマーシュがいたとしても前衛に駆り出され危険な魔物の脅威に晒される。

今のところ彼らに大きな怪我は無いが、心に負った傷は大きく不安も募るだろう。


「……痕跡が途中で消えてしまっている。魔物と戦った様な痕跡も見当たらないから、無事であるとは思うが……」
「そうですか……」


そう答える以外に返す言葉が無い。
例え連絡要員だとしてもそんな彼らを率いてラインハルトを捜索するしかない状況にしてしまった自分を不甲斐なく思った。





新兵達との会話は殆ど無いまま森の奥へと足を進めていく。

ただでさえ整備された入口と比べて草木が生い茂り視界が悪いのに、奥へ進むに連れて森は荒れていき前方は殆ど見通せない。

深い森の中はとても暗く上を見渡しても木々の葉の隙間からは視界をほんの少し照らす程度の光が差し込むだけ。

光が入らない為か地面はぬかるんでおり、泥に足を取られて歩きにくい。

周囲の魔力も酷くよどんでいる為、空気も悪く少し息苦しい。


『───!!!』


突然何処からか聞こえた声と同時に何か黒い霧の様なものに視界を奪われる。

周囲を動く複数の気配。人の気配もするが魔物の様な感じもする。新兵達の叫び声が聞こえるが、辺りが見えず闇雲に魔法を放つ事も出来ない。

その場に立ちすくんでいると、背後から頭部に冷たい金属を押し付けられ、聞き覚えのある声がした。



「──おう、ルタ。変な気は起こすなよ……? 新兵を殺すぞ」

「……ラインハルト」



黒い霧が消え、視界が晴れる。
黒装束に身を包んだ者達と居なくなった第3騎士団数名が周囲を取り囲んでいる。目に見えるだけで数にして黒装束10名、第3騎士団5名。

そして、その者達の一部は新兵達を拘束し彼らの頭へと拳銃を突き付けていた。



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