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第二章
21.診療所(5)
しおりを挟む「さて、午後も頑張りますか!!」
「お願いします!」
午後の診療が再開され、続々と患者さんが訪れた。
ソフィアさんはこれまた的確に主訴のある患部にポイントを絞って治療している。
午後の患者さんの波が少し途切れたところで、ソフィアさんへ素朴な疑問を投げかけた。
「魔力切れとかってこの世界はないんですか?」
気になっていたのは魔力切れ。
魔力節約の為にポイントを絞って治療しているとはいえ、休みなく患者さんを治療をしていくソフィアさんは魔力が切れる気配が一向にない。
「魔法切れ?あはは!あるよぜんぜん!面白いこと言うね!!」
「そう、ですよね……。ソフィアさんを見てると魔力って底なしにある物の様に感じてしまって」
「実はねこう見えて凄い努力したんだよー。最初は結構治癒をかける場所を絞れなくて、対象全体を光で包んでてね。効率が悪すぎて一日3人ぐらいが限界だったのよ!」
「え、凄すぎませんか!3人だったのが、今日既に50人は治療してますよ!!」
「ね!!我ながらほんとすごいと思うわ!!後は、ご飯を食べると魔力が回復するんだよねー!」
ご飯を食べてMP回復だなんてゲームみたいだけどそんなことあるのかな?気の持ちようって話かな……?
「ご飯を食べると元気が出ますよね!!」
「それもあるけど、ご飯を食べると本当に魔力が回復するのよ!
あ、スミレは魔法がない別の世界から来たんだっけ」
「そうですね。魔法は空想の世界の物でした」
「そっかそっか!そしたら知らないよね!
この世界の全ての物にはね、魔力が含まれているのよ。
空気、水、お日様の光、土、動植物や魚などの生物全てにね。
だからね、体内の魔力を消費した時は寝たりして自然に回復するのを待ったりするけど、それだけじゃなくて食事を摂っても魔力が回復するのよ!」
ソフィアによると、この世界に存在する全ての物質・生物は魔力を含んでいるらしい。
前の世界で例えるなら……水に近いだろうか。
海で蒸発した水は雲となり雨として地上に落ちる。地上に落ちた水は土へ吸収され蒸発して空気中へと戻るか植物へと吸い取られる。植物は草食動物や虫に食べられ、それを食べる肉食動物がいる。そして、その動植物の死骸から抜け出た水分は空気中へと還元され、また雨となって地に戻る。魔力もそうして巡り巡って世界の何処にでも含まれているそうだ。
「例えば、今座っている椅子の木材にだって微妙であるけれど魔力は含まれているのよ!」
「本当に何処にでも含まれているんですね……」
この世界が魔力で満たされているのであれば、私が魔法を使えなかったのは前の世界での体が魔力に適していなかったということなのか……?聖女様が使えたのは元々魔力のある別の世界から召喚されたから……?わからない……。
ふとそんな疑問が頭に浮かんでいた時、
「──こんにちはスミレ様。お話中すみませんが、僕が考えた仮説があるので試してみたいのですがよろしいですか?」
マーシュ先生がひょっこりと診察室へ顔を出した。
「──っあ!!先生!!!またサボってるでしょ!!!」
「ソフィア、そんなことはありませんよ。それよりスミレ様に少しお話があるのですがお借りしてもよろしいですか?」
「本当に突然ね!!いいけどスミレが辛くないように手短にね?」
「ええもちろんですよ。ではスミレ様、こちらへよろしいですか」
「あっ、はい。行きます」
突然現れたマーシュ先生へ連れられて誰も入院していない病室へ入った。
「スミレ様、早速ですが、先程のソフィアの話理解できましたか?」
「あっ、えっと理解できましたよ。水のような物だと感じました。水分は気体となり液体となり空気中や生物の中にまでと何処にでも存在しますよね」
「さすが理解が早い。まあそんなところです。そしてですね、それは魔力も同じなのです」
「つまり……?」
「スミレ様は魔法を使えるかもしれません」
──突如、マーシュ先生から私は魔法が使えるかもしれないと告げられた。
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