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第二章
24.お礼周りとパーンケーキ(5)
しおりを挟む「んで……注文は決めたのか?」
「あんじぇはいちごパーンケーキにするの」
「俺様はアンジェと同じものを頼む。ダヴィッドさんはどーするんだ?」
「私はバナナチョコホイップパーンケーキでお願いします!!」
「私は思い切って、カサブランカパンケーキにします!!!」
「……スミレは意外と色物を頼むんだな」
「……べっ別に前の世界になかったから気になっただけです!」
注文はダヴィッドさんがしてくれた。
因みに、席はダヴィッドさんと王女様が隣、テーブルを挟んで反対側に私とルー様が並んで座っている。
ルー様の距離感はとても近くて、今だって話す時の顔の距離感はこぶし2つ分ぐらいしかない。
パーソナルスペースが近すぎるし、無意識に放っているだろうとてつもない色気になんだか少しクラクラしてきた。赤面していた店員さんや卒倒する侍女さん達の気持ちがわかる気がする。
「あ、そういえばルー様。ベットはありがとうございました。とてもフカフカで毎日安眠です」
「ならよかった。俺様いいセンスしてるだろ?ちゃんと2人で使えよ?」
「本当にいいセンスしてます……って誰とですか。私ひとりで広々使ってますよ」
へぇーとニヤニヤしているルー様。
「……そういえば、レイのこと気になってるんだろ?」
「……気になっていないと言えば嘘になりますが、レイなら心配は不要だと聞いていますので」
「それはそうだが、忘れられてないか……とか思ってたりしてるだろ?」
飲んでいた紅茶を思わず吹き出しそうになる。
「そ、そんなことありませんよ。仮に忘れられたとしてもたった2週間の付き合いでしたし自然なことなので仕方ないです」
「はは。分かりやすい奴だな。
……まあ実際のところ、予想以上に魔物が活性化していて長引いているらしい。第1騎士団から定期的に送られてくる状況報告書には、魔物を殲滅しても殲滅してもどんどん湧いてきてキリがないと書いてあった。俺様が行った時はそこまででもなかったんだが……。1週間程度っていう話だったが大分長引きそうではあるな」
……もう既にレイが遠征に行ってから2週間ぐらいの時が過ぎている。
私たちは今こんなに平和な街の中でのんびりしているというのに、レイを含め第1騎士団の兵士や国境付近の人々は毎日不安な思いをして過ごしていることを思うと心が痛い。
「今、自分たちだけこんな平和にのんびりしていいのか?なんて考えてたか?」
「えっ、ああ。そうですね……。私が国境付近へ行ったところで何も出来ないんですけどね」
「平和に暮らして生きるのが国民の使命だからいいんだよ。騎士団の奴らだって、それを望んでる。スミレが気にすることじゃない」
「そうです……ね。──って!なにするんですか!!」
いきなりがしがしと頭を撫でられる。
「そんな辛気臭い顔するな。今日は楽しもう、な?
それに、レイはスミレのこと絶対に忘れてないと思うぞ」
「……べっ別に忘れられてようが覚えられてようがどちらでも構いません!!」
激しく横揺れする白銀のふわふわのシッポ。このシッポの動きで、ルー様がからかっていることのはとても分かりやすい。
……スマホやケータイがこの世界にあれば直ぐに連絡を取れて安否確認ができるのにな。忘れられててもいいから大きな怪我をせずに帰ってくるのを待とう。
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