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第二章
24.お礼周りとパーンケーキ(6)
しおりを挟む「──おっお待たせしました!!!各種パンケーキでっです!!!!」
どーん!!と並べられたパンケーキ達。
1皿につきパンケーキ5枚は積み上げられており、高さ10センチはありそうな生クリームはまるで都内の高層ビルの様でとてつもないボリューム感を感じる。王女様とルー様以外はそれぞれ違うトッピングを選んだが、中でも目を引くのはやはりカサブランカパンケーキだ。カサブランカのユリのような大きな白い花は見た目がとてもゴージャスで添えられたイチゴさえも洗礼されているように感じ、食べ物というよりはアート作品のようにも見える。
「すごい、おいしそうなの」
「……アンジェ、食べ切れるのか?」
「いけるの。あんじぇのいぶくろは、むげんだいなの」
「そうか。だが……残したらダヴィッドさんが食べる……よな?」
「もっ、もちろんですよ……」
「……のこさないの」
莫大な量のパンケーキに狼狽える大人3名とプクッと頬を膨らませる少女1名。
王女様は無限大と言っているが、あの小さな体にこの量の食物が入るとは思えない。残したパンケーキの処理はルー様に擦り付けられたダヴィッドさんがすることになったようだ。
「ちっ、ちなみにカサブランカの花は魔法で砂糖菓子に加工してあるので食べれます!!!」
凄い。この花は食べれるのか。
しかも魔法で砂糖菓子になっているとは。経管栄養の時に作った滴下等もゴム製の物を魔法で透明にしていたし、この国の魔法技術はとても発展していると思う。
「いただきます。なの」
──いざ実食。
まずは、カサブランカの花を避けて下に埋もれているパンケーキをナイフで食べやすい大きさに切る。生クリームも付けずに先ずは生地の味から食べてみる。
「……溶けた」
「とけたの」
「溶けましたね」
「消えたぞ……?」
そう、溶けた。
口に入れた瞬間、生地が溶けたのだ。
ネチャっとした感じではなく、雲のようにふわっとした食感の後に滑らかに咀嚼によって出てきた唾液と混ざり合う感覚。
ほのかに甘く、生クリームやトッピングが無くてもこれだけで食べきれてしまうぐらいの美味しさ。
一同のナイフとフォークは止まる気配がない。
生地だけでも飽きることはないが、味のニュアンスを変える為に生クリームを乗せてみたりトッピングのイチゴを乗せたりしてもとても美味。
カサブランカの花の砂糖菓子も甘すぎないか不安であったが、優しい甘さの中に花の香りが広がり、パンケーキだけではなく一緒に頼んだ紅茶と合わせて食べても美味しかった。
雲のようなふわふわパンケーキに感動して思わず泣きそうだ。
「……かんしょくなの」
とても食べ切るとは思えなかった王女様が食べきった。
みてみて、と言われ王女様のお腹を確認するとぽっこりと膨らんでいる。
「いや、アンジェどころか俺様も食べ切れるか不安だったが余裕だったな」
「私も食べきれないと思っていましたが雲のようなパーンケーキは一瞬で胃に溶けていきました」
「とても美味しかったですね。前にダヴィッドさんに連れてきてもらったオムレツも空気のようにふわふわでしたし、シャルム王国の食べ物はとても美味しいです」
本当にシャルム王国の食べ物は美味しい。
特に料理をふわふわにすることに長けている気がする。仕事に慣れてきたら休日はカフェ巡りをして見てもいいかもしれないな。
「スミレ。たのしかったの。また、いっしょにいきたいの」
「ええ、よろこんで王女様。近いうちにご都合が宜しければまた行きましょう──」
──こうして、お礼周りを兼ねた私の休日は終わったのだった。
因みに王女様とダヴィッドさんは最後までパンケーキのことをパーンケーキと呼んでいた。
メニューにも“パンケーキ“と思い切り記載してあったが気が付かなかったのだろうか……?
ルー様も何時まで経っても放置し続けるから触れるに触れられなかった。
……まあ何あれ、とても楽しかったし息抜きになった。また皆と食べに行きたいな、パーン……ケーキ。
美味しかったし今度お礼も兼ねてソフィアさんにご馳走でもしようかな。
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