鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第二章 悪神との戦い

第三十話 眠り

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「......?」

「俊熙...?」

「......!!」


 天俊熙は目が覚め、ベッドから起き上がった。近くに天麗華が立っていた。

 宿に着いたあと、疲れきって眠ってしまったのだろう。外は薄暗くなっている。


「光琳は!?」

「まだ目を覚ましていないの......」 


 天麗華は横を見て、悲しそうに言った。
 横にはもう一台ベッドがあり、ベッドの上には上半身を包帯
 で巻かれた天光琳が横になっていた。


「無事...ですよ...ね...?」


 天俊熙は恐る恐る聞いた。


「えぇ、今は眠っているだけみたい......良かったわ......」


 天麗華は天光琳の頭を撫でながら言った。


「俺たちを庇うなんて......あ、麗華様は怪我は...大丈夫なんですか...?」

「大丈夫よ。貴方が結界で守ってくれたもの」


 天俊熙が心配そうに聞くと、天麗華は少し微笑みながら言った。

 天麗華には防御結界の能力がない。

 そのため、天俊熙は倒れてしまった天光琳と天麗華を守り、天麗華は結界の中から悪神に攻撃をしていた。

 しかし、天麗華の攻撃は避けられ、結界は簡単に壊されてしまった。


「あの悪神...何者なんだ......。麗華様の攻撃を避けるなんて......」

「恐らく神界の者ではないわ......」


 天麗華は奇跡の神で、桜雲天国...いや、神界の中で一番強い神だ。

 しかしあの悪神は天麗華の攻撃を軽々と避けたのだ。神界の神だとは思えない。

 二神はしばらく黙って考えていると、扉をノックする音が聞こえた。


「入っても大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」


 この声は天浩然だ。

 天麗華は早歩きで扉の前へ行き、扉を開けた。


「父上...!」

「俊熙、目が覚めたのか。良かった...」


 天浩然は天俊熙の姿を見てほっとした。しかし、隣で横になっている天光琳を見て、また表情が暗くなった。


「光琳は...まだ目覚めないのか......。今頃天万姫はすごく心配しているだろう...」

「宇軒様は...?」

「国の仕事で忙しいから二日ここで君たちの様子を見たあと、城に戻ったぞ。帰っても三神のことはすごく心配していた」


 天宇軒は桜雲天国の王だ。城から長く離れることは出来な
 い。

 天俊熙はある事に気づいた。


「あれ...二日...?...ってことは俺、何日眠っていたんですか!?」

「三日間よ」

「三日...?!」


 天麗華は優しく答えた。天俊熙は一日しか経っていないと思っていたため、目を大きくして驚いた。


「恐らく神の力を使いすぎたのよ。結界を張るのに結構使うでしょう...?」


 防御結界を張る能力は、神の力を大量に消費してしまう。
 神の力は一日に使える量が決まっていて、一日経てばまた元通りになるのだが、使いすぎてしまうのは危険だ。

 それなのに天俊熙は何度も結界を張った。

 そのため、神の力を使いすぎてしまったのだろう。
 神の力を使いすぎると、エネルギーも消費される。また使いすぎると、倒れてしまったり、動けなくなってしまう。

 天俊熙はただ疲れて眠ってしまったのではなく、神の力を使いすぎて倒れてしまったのだろう。そのため、目覚めるのに時間がかかった。


「俊熙、傷はどうだ?まだ痛むか?」


 天浩然がそう言うと、天俊熙は体を動かしてみた。


「少し痛みますが、大丈夫です」


 人間なら、まだ動くことが出来ない程の大怪我をしてしまったが、神は治りが早い。また、医術に長けている神が回復の
 能力を使ったため、今は痛みは少ない。

 天麗華も少しは痛むが、普通に動けるほど回復したのだろう。


「そういえば父上、なぜ俺たちを助けに来ることが出来たのですか?」


 天俊熙は気になって聞いてみた。


「護衛神の一神が城に戻ってきて、状況を伝えてくれたのだ。それで、このままでは危ないと思い、俺と天宇軒はすぐに玉桜山へ向かった。もし護衛神の一神が状況を伝えに来なかったら......」

「俺たちは死んでましたね...」

「あぁ...」


 天浩然は小さく頷きながら言った。



 外はもう暗くなった。天光琳はまだ眠っている。


「今日もゆっくり宿で休みなさい。俺は一旦城に戻って、兄上にこの状況を報告してくる。また明日の朝来るからな」

「あ、分かりました」


 天俊熙は頷いた。兄上とは天宇軒のことだ。
 天浩然は天麗華にも言った。


「麗華、今日も二神を任せたぞ。......まだ怪我が治ってないのに悪いな...」

「いいえ、大丈夫ですよ」


 天麗華は微笑みながら言った。  


「ありがとう。...それでは」


 天浩然はそう言って、部屋を出た。


「明日...目が覚めると良いけれど...」


 天麗華は眠っている天光琳の横に座り、再び天光琳の頭を撫でながら言った。


「俺が...もう少し強ければ...」


 天俊熙は力不足だったと自分を責めた。
 天麗華も同じことを思っているだろう。


「痛かったよね......ごめんね......」


 天麗華は涙を流しながら言った。
 天俊熙もつられて涙が流れてきたが、両手で顔を隠した。
 そしてしばらく沈黙の時間が流れていった。




「あの...麗華様、疲れていませんか?何日もちゃんと寝ていないですよね......」

「え...?なんでわかったの?」


 天俊熙は宿屋の女将さんから貰ったお茶をテーブルに起きながら、天麗華に言った。天麗華は驚いた。


「いや...なんとなくです。俺が寝ている間、ずっと俺たちの面倒をみてくださったのかな...って思いまして......そうですよね...?」

「ふふ、そうね......少しは寝たけれど、ちゃんとは寝てないの。でも、嫌ではなかったわ。......ちょっと疲れちゃったけど」


 天麗華は微笑みながら言った。しかし、その笑顔は疲れと天光琳が目覚めない不安が混ざっていて、いつもの明るい笑顔ではない。


「休んできても大丈夫ですよ。今夜は俺が代わりに天光琳のそばに居ますから」

「でも...貴方は今日目が覚めたばかりでしょう...?」

「麗華様だって全然休んでないじゃないですか。俺は沢山寝たんで、大丈夫です。......むしろ寝すぎて眠れないかもしれないですし......」


 天光琳は苦笑いしながら言った。


「なら...頼んでも良いかしら...?」

「大丈夫ですよ!」


 天麗華は天光琳の頭を撫でるのをやめて、立ち上がった。


「ありがとう。でも、貴方も完全に怪我が治ったわけではないのだから、少しは寝なさい。私は隣の部屋にいるから、何かあったらすぐに呼んでね」


 そう言って天麗華は部屋の扉を開けた。


「分かりました。おやすみなさい」

「おやすみなさい」


 そして天麗華は天光琳をちらっと見てから、部屋を出た。





「......」


 部屋は静かになった。

 天俊熙は先程テーブルに置いたお茶を両手に持ち、ゆっくり
 と飲んだ。


 (久しぶりにお茶を飲んだ気がする)


 お茶は冷たく、全然飲んでいなかったため、とても美味しく感じた。

 天俊熙は時計を見た。午後十一時を過ぎていた。

 天俊熙は部屋の明かりを消し、ベッドに横になった。
 ...しかし全然眠くならない。

 天俊熙は起き上がり、座った。天光琳に変化は無い。
 夜は冷えるので天俊熙は天光琳に掛布団をもう一枚かけた。
 そしてもう一度横になった。

 しばらく眠れなかったが、一時間後、天俊熙はやっと眠りにつくことが出来た。
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