鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
105 / 184
ー光ー 第八章 佳宵星国

第百四話 毒

しおりを挟む
 その日の夜、夕食の時間はとても静かな時間だった。
 星連杰は一神だけ遠くに座り、三神は近くで固まって食べた。
 昔は王一族は沢山いて、大勢でここに集まり食べていたそうだ。
 それなのに今は......とても寂しい感じがする。

 星連杰はめんどくさい男神と聞いていたが、普段はあまり話さないそうだ。
 天光琳もだんだん緊張が和らいでいき、星玉風と天麗華と話しながら楽しい時間を過ごした。


 ......しかしこの後。

 天麗華は湯浴みに行き、天光琳は一神で部屋に戻っていた。
 すると、近くから星玉風と星連杰の話し声が聞こえてきた。
 天光琳はサッと隠れ、二神が過ぎるのを待つことにした。


「玉風。なぜ光琳を途中で呼び出した?......"計画が台無しになった"じゃないか」


 (......計画...?)


 盗み聞きをするつもりでは無かったのだが、自分の名前が聞こえ、つい聞いてしまった。


「申し訳ありません。......しかし、こうするしかなかったのです」

「なぜだ?」


 星玉風の声は朝、星連杰と話していた時のように声のトーンが低かった。


「麗華さんが光琳さんと一緒に食べたいと申しておりましたので......」


 一つ引っかかる。
 本当に一緒に食べたいと言っていたのだろうか。
 確かに天麗華なら言いそうだが、なぜ呼び出した時、その事を言わなかったのだろう。
 また天光琳の食べられない食べ物がある......と行っていたことも気になる。


「そんなの断れば良い。なぜ俺の計画というのにそれを邪魔した?お前は俺より偉いのか?......はぁ...」


 星連杰はため息をついた。


「もう少しで"光琳を殺せそうだった"のに」


 (......!?)


 天光琳は驚いて思わず声を出してしまいそうだった。
『殺せそうだった』......聞き間違えではない。はっきり聞こえた。
 天光琳の手足は震え始めた。
 もしかしたらあの料理には本当に毒が入っていたのか?


「なぜ光琳さんを殺すのですか?」

「光琳は"麗華を我が国の神にするという計画に邪魔な存在"なんだ」

 (......姉上を......?僕は...邪魔......?)


 訳が分からない。一体星連杰は何を考えているのだろうか。


「最近、二位の国、玲瓏美国が力を上げてきた。恐らく美梓豪は神王になりたいのだろう。我が国はいつ美国に追いつかれるか分からない。だから、お前と奇跡の神である麗華を結婚させれば麗華は我が国の神となる。そうすれば我が国の評価はさらに高くなり、美国に追いつかれることはないだろう」

「そういうことだったのですね」


 星玉風はまるで知っていた......かのように軽く返事をした。 
 まさかそんなことを考えていたとは。


「しかし前回麗華が来た時、俺がお前との婚約の話をしたところ麗華は断った。まだ天国にいたいと。......きっと光琳が国の評価を下げているから、それを何とかするためにまだいたいのだろう」


 天光琳は天麗華に婚約の相談をされたなんて聞いたことがなかったため、驚いた。
 本来ならば上位の国の神になれるなんて良いことだ。しかし天麗華は断った。


「だから光琳は邪魔なんだ。光琳がいなくなれば麗華は我が国の神になるだろう。今回麗華だけではなく、光琳も我が国に呼んだのはそれが理由だ」


 天光琳はだんだん腹が立ってきた。
 天麗華を自分の国の評価をあげるために使うとは。
 それに......


 (姉上には伽耶斗さんがいるんだから)


 今でも天麗華は京極伽耶斗のことを想っているだろう。
 確かに星玉風はかっこよくて女神から大人気だ。しかし天麗華はそんな簡単に惚れたりはしない。


「とりあえず今日はもういい。明日だ。明日、朝食に毒を混ぜる。今度は邪魔をするなよ?」

「......分かりました」


 星玉風は止めることなく、低い声で返事をした。
 天光琳はどうすれば良いのか分からなくなった。
 明日死ぬのか......?死にたくない。どうすれば逃げられる。

 星連杰と星玉風はそのまま通り過ぎ、天光琳は走って部屋に戻った。

 部屋に戻ると既に天麗華が居た。


「光琳......?」

「姉上......」


 天光琳は泣きながら天麗華のそばで座り込んだ。


「やだ......僕...死にたくない......」


 天麗華はなんのことかよく分からず、目を大きく見開いて驚いたあと、天光琳の頭を撫でた。


「ゆっくりでいいから話してくれる......?」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...