鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
134 / 184
ー光ー 第十章 鬼使神差

第百三十三話 老師

しおりを挟む
「......老師...」


 草沐阳だ。まだ生きていたのか。草沐阳は息を切らし、服は血だらけである。
 なんとか逃げ切ったのだろうか。しかしもう体力はないように見える。


「光琳......こっちへ来い...。ソイツと一緒にいちゃダメだ」


 もうそのセリフは聞き飽きた。
 皆ダメと言うが、そもそも居場所を無くしたのは皆ではないか。
 それにもう天光琳は大勢の神を殺している。
 これはもう神ではない......悪神だ。

 悪神になった天光琳は落暗のもとから離れたとしても、神界のルールにより封印されてしまう。

 ならば悪神として楽しい人生を送ろうじゃないか。


「行かないよ」

「何故だ......神を殺して楽しいか......?光琳はそんな神じゃないだろう......」

「楽しいよ、凄く。だって、今まで僕のことをいじめてきた奴らが死んでいくんだもん。楽しすぎてたまらない」


 草沐阳は目を大きく見開いた。
 天光琳がそんなことを言うはずがない。
 小さい頃から天光琳の面倒を見てきた.....。こんなの天光琳ではない。

 草沐阳は扇ではなく剣を構えた。

 天光琳は右手から黒い光を出し、黒い光は剣の形と変わった。


「光琳......俺はお前とは殺し合いたくない」

「......」


 草沐阳は落暗に視線を向けた。
 落暗は後ろで天光琳に力を移している。


 (全てはこいつのせいなんだ。こいつを倒せばきっと......)


 草沐阳は落暗に向かって走っていく。
 そして落暗の前へ行くと剣を振り下ろした。
 しかしその直前で天光琳が横から庇い、天光琳の剣で弾かれた。


 (重い.....)


 最近天光琳と剣術の修行をしていなかった。
 天光琳の一撃はとても重くなっていた。

 そして今まで草沐阳は天光琳に負けたことがなかったのだが、今は天光琳の攻撃から身を守ることしか出来なくなってしまった。

 これは鬼神の力のせいなのだろうか。
 それもあると思うが、今までの努力を見ているとこれも努力の結果だと思える。

 ......しかし師匠として負けてはいられない。
 天光琳に怪我をさせるつもりはない。そのため、剣さえ手から離れてくれれば良い。

 草沐阳は力強く剣をぶつけた。
 これでよく天光琳は剣を落としていた。

 ......が、今はどうだろうか。
 パキっと何かが割れる音がした。
 なんと草沐阳の剣にヒビが入ってしまったのだ。


 (まずい......)


 そう思った瞬間、天光琳の強力な一撃が草沐阳の剣にぶつかった。
 すると剣は割れ、破片がパラパラと地面に落ちた。

 と、同時に天光琳は草沐阳の右肩を斬りつけた。

 草沐阳は右肩を抑え、しゃがみ込んだ。

 武器はこれしか持ってきていない。
 武器が置いてある小屋の付近にはドロドロの生物がいて行くことが出来なかった。
 草沐阳は立ち上がり剣を捨て、扇に持ち替えた。

 すると天光琳も剣を今度は扇の形へ変えた。


「合わせてくれるのか。......さすが光琳だ」


 我を忘れているような状態でも、天光琳の優しさが見えてくる気がした。
 扇と剣では戦い方が違う。
 天光琳は無意識だったようで一瞬戸惑った様子を見せた。


「もうやめよう......殺しは光琳に似合わない」

「......」


 天光琳は迷いがあるのか攻撃をせず下を向いている。
 すると落暗が天光琳のもとへ歩いてきた。
 草沐阳は扇を使って落暗に攻撃をした......が、落暗は左手で結界を張り、攻撃は弾かれた。

 そして落暗は天光琳の肩へ手を置き、なにか囁いている。
 そして話終わると天光琳は殺意のある目で草沐阳を見つめた。


「光琳、ソイツの話には乗るな」


 何を言ったのかは分からない。しかし良いことでは無いだろう。
 今の天光琳は落暗に洗脳されていて、何を言っても皆は敵で落暗が仲間だと思うだろう。
 落暗を倒すしかないのだろうか。

 草沐阳は舞い始めた。
 天光琳ではなく、落暗に向かって攻撃をする。
 しかし天光琳は落暗を庇うように攻撃をする。
 落暗は結界を張り、草沐阳の攻撃が落暗に当たることは無い。

 そして今まで神の力を使えなかった天光琳なのだが、小さい頃からずっと舞や修行を続けてきたため、鬼神の力が使えるようになると比べものにならないぐらい強かった。

 舞いは美しければ美しいほど威力は高い。完璧と言っていいほど美しい舞をする天光琳の威力は恐ろしいほど高いのだ。

 天光琳は鬼神の力で作りだした無数の針を草沐阳に向かって放った。


「......!」


 草沐阳は避けようとした......が、何故か手足が動かなかった。


 (糸!?)


 いつの間にか手足に糸が絡みついていた。
 黒い糸とはいえ、細いため糸が絡みついたことに気づかなかった。


「ぐっ......」


 草沐阳は避けることが出来ず、全て刺さってしまった。
 激しい痛みが身体中に伝わり、立っていられない。今すぐにでもしゃがみたいのだが、糸のせいでしゃがむことが出来ないのだ。

 しかし足が震えてきちんと立つことができない。そのため体重が全て糸が絡みついている手首にかかる。
 手首は糸によって切られてしまうのではないかと言うぐらい強い痛みが走る。
 草沐阳は扇を落としてしまった。

 天光琳はゆっくりと草沐阳に近づいた。


「強く...なったな......」


 草沐阳はカスカスの声で言った。
 天光琳は表情を少しも変えず、右手に鬼神の力で作った剣を持った。


「ははは......まさか......教え子の光琳に...やられる......とは......」


 草沐阳は悔しそうに......いや少し悲しそうに苦笑いをした。
 そして目を閉じた。
 もう死ぬ覚悟は出来ている。


「さようなら」


 天光琳は草沐阳の胸を狙って斬りつけた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...