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ー光ー 第十章 鬼使神差
第百三十八話 取り憑かれ
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そしてあっという間に蒼海アジュール国は滅びてしまった。
王や他国へ移動できなかった神々は皆亡くなった。
無事に他国へ避難できた神々の数は少ない。
避難できた神々の多くは玲瓏美国へ避難し、玲瓏美国の大広間では泣き叫ぶ声が絶えず沈んだ空気が広まっていた。
「おかぁさん、おとうさぁん......」
先程の子供は美ルーナの近くで涙を流している。
美ルーナはその子供の背中をさすって気を落ち着かせているが、美ルーナの顔色も悪い。
「王も王妃も......王一族やここにいない神々は皆亡くなってしまいました...」
美ルーナの両親は既に亡くなっている。
王とは美ルーナの兄のようだ。
美ルーナには兄弟が四神いた。
女神は美ルーナ一神だけで、他は皆蒼海アジュール国に残っていたはずだ。......ということは皆殺されてしまった。
美ルーナは口を両手で抑え、下を向いた。
肩が震えている。
目からは涙がこぼれ落ちた。
「状況を......教えてくれないか?」
美梓豪は小さな声で言った。
中には思い出したくない神だっているだろう。
先程の子供のように、親が目の前で殺された記憶が脳に焼き付いている者もいるのだから......。
すると二十代ぐらいの痩せ型の男神が身体を震わせながら言った。
「......空が暗くなったと思ったら...急にドロドロした生物が大量に現れて.........次から次へと神が食べられたり殺されたりしていきました......それもすごい速さで......」
周りにいた神も頷いた。
それを聞いて美梓豪は眉をひそめた。
「他には何か......」
「あ......あいつが......」
別の目を真っ赤に染めた血だらけの神が顔を青ざめながら言った。
「あいつ......?鬼神のことか?」
美梓豪は恐る恐る聞いた。
鬼神が現れたということは知っている。
既に報告が来ているのだから。
「鬼神もそうなのですが......」
「鬼神以外に......ま、まさか......鬼使神差か?!」
美梓豪がそう言うと遠くにいた神も頷いた。
美梓豪はゾッとした。美梓豪だけでは無い。大広間にいる玲瓏美国の神々は皆目大きく見開いた。
まさか鬼使神差通りのことが本当に起こるとは......。
「一体誰なんだ......?」
「て......天光琳です!」
それを聞いた瞬間、大きく見開いた目はさらに大きく開いた。
まさか知っている神だとは思わなかった。ましてや孫など......。
「本当に光琳なのか!?」
美梓豪は信じなかった。見間違いではないだろうか。天光琳はそんなことをする神ではない。
そしていつも『琳くん』と呼んでいた美梓豪が『光琳』と呼んだ。これは天光琳を悪として親しくしたくないと言う意味ではない。単純に今『琳くん』とあだ名で呼ぶ訳にはいかないからだ。
すると、美梓豪は突然顔色を変えた。
そういえば一番最初に襲われたのは桜雲天国だ。そして鬼神に狙われていたのも......天光琳だ。
「......光琳......」
「父上、光琳くんは鬼神に取り憑かれているのだと思います。......光琳くんが神を殺すような神ではないはずです......」
「...わかっている......」
美朝阳がそう言うと美梓豪は頷いた。
美鈴玉や美暁龍たちも頷いた。
しかし蒼海アジュール国の神々や玲瓏美国の護衛神などは微妙な顔をしている。
「早く光琳を止めねば......神界のためにも......あの子のためにも......」
目を覚ました時に天光琳は苦しむことになるだろう。
取り憑かれているとはいえ、記憶はあるはずだ。
天光琳の性格からして「取り憑かれていたのだから天光琳は悪くない」と言っても聞かず、自分を責め続けるだろう。
もう既に何ヶ国か滅びているが、今からでも遅くは無い。
「ですが......光琳くんの洗脳が解けたとして......その後は"どうなってしまう"のでしょうか......?」
美鈴玉がそう言うと、美梓豪は下を向いた。
どうなってしまうのか......それは一つしかない。
「......封印...する」
「父上!ですが、光琳くんは!」
「知っているっ!!」
美梓豪が大声を出すと皆は黙り込んだ。
「......これは神王の俺でも変えられない決まりだ。神界で古くから決まっているルールなのだ。......いくら取り憑かれていたからと言っても......光琳が悪くないからと言っても......神を一神でも命を奪ってしまうと封印する決まりになっている......」
それは"神"として"命を奪う"ということは決して許されないものだからだ。
世界を作り、人間を生み出し、人間の願いを叶える世界で頂点的存在の神が、殺しなんてしてはならない。
どんな理由があろうと......それは変えられない。
「できるのであれば俺は封印したくない......だからといって、光琳をそのままにしておくことは出来ない」
皆は何も言えなくなり、下を向いた。
天光琳はもう幸せになることは出来ない。
天麗華たちの幸せを奪ったのだから、それは当たり前だ......と。
だが、天光琳は戻っても、恐らく封印される道を選ぶだろう。
それは美家一族、皆そう思っている。
「...光琳......」
✿❀✿❀✿
そして四年の月日が経った。
まだ新しい鬼神は誕生していないが、アタラヨ鬼神国の力はどんどん上がっていく。
毎日のように国が滅びていき、次は自分の国ではないかと皆焦り、夜も普通に眠れない。
また、鬼神と戦うのに備え、神の力を高くするよう、十歳以上になった神でも天光琳のように修行と稽古を始めた。
天光琳は修行と稽古を続けていたため強くなった。なら同じようにやれば強くなるのでは無いか?
鬼神の力を手に入れたばかりの天光琳は強いとはいえ、使える能力が少ない。
しかし、既に能力を多く持っている神々は今から修行と稽古を始めても天光琳に追いつくだろう......そう思っている。
......が。それはどうだろう。
今のところ、天光琳に傷一つでも付けることができた......という情報はない。
一体どれだけ恐ろしいのか......神王美梓豪でも相手にならないほど強いのだろうか。
奇跡の神も殺されてしまったことだ。
間違えなく、奇跡の神以上力がないと天光琳には叶わないだろう......。
王や他国へ移動できなかった神々は皆亡くなった。
無事に他国へ避難できた神々の数は少ない。
避難できた神々の多くは玲瓏美国へ避難し、玲瓏美国の大広間では泣き叫ぶ声が絶えず沈んだ空気が広まっていた。
「おかぁさん、おとうさぁん......」
先程の子供は美ルーナの近くで涙を流している。
美ルーナはその子供の背中をさすって気を落ち着かせているが、美ルーナの顔色も悪い。
「王も王妃も......王一族やここにいない神々は皆亡くなってしまいました...」
美ルーナの両親は既に亡くなっている。
王とは美ルーナの兄のようだ。
美ルーナには兄弟が四神いた。
女神は美ルーナ一神だけで、他は皆蒼海アジュール国に残っていたはずだ。......ということは皆殺されてしまった。
美ルーナは口を両手で抑え、下を向いた。
肩が震えている。
目からは涙がこぼれ落ちた。
「状況を......教えてくれないか?」
美梓豪は小さな声で言った。
中には思い出したくない神だっているだろう。
先程の子供のように、親が目の前で殺された記憶が脳に焼き付いている者もいるのだから......。
すると二十代ぐらいの痩せ型の男神が身体を震わせながら言った。
「......空が暗くなったと思ったら...急にドロドロした生物が大量に現れて.........次から次へと神が食べられたり殺されたりしていきました......それもすごい速さで......」
周りにいた神も頷いた。
それを聞いて美梓豪は眉をひそめた。
「他には何か......」
「あ......あいつが......」
別の目を真っ赤に染めた血だらけの神が顔を青ざめながら言った。
「あいつ......?鬼神のことか?」
美梓豪は恐る恐る聞いた。
鬼神が現れたということは知っている。
既に報告が来ているのだから。
「鬼神もそうなのですが......」
「鬼神以外に......ま、まさか......鬼使神差か?!」
美梓豪がそう言うと遠くにいた神も頷いた。
美梓豪はゾッとした。美梓豪だけでは無い。大広間にいる玲瓏美国の神々は皆目大きく見開いた。
まさか鬼使神差通りのことが本当に起こるとは......。
「一体誰なんだ......?」
「て......天光琳です!」
それを聞いた瞬間、大きく見開いた目はさらに大きく開いた。
まさか知っている神だとは思わなかった。ましてや孫など......。
「本当に光琳なのか!?」
美梓豪は信じなかった。見間違いではないだろうか。天光琳はそんなことをする神ではない。
そしていつも『琳くん』と呼んでいた美梓豪が『光琳』と呼んだ。これは天光琳を悪として親しくしたくないと言う意味ではない。単純に今『琳くん』とあだ名で呼ぶ訳にはいかないからだ。
すると、美梓豪は突然顔色を変えた。
そういえば一番最初に襲われたのは桜雲天国だ。そして鬼神に狙われていたのも......天光琳だ。
「......光琳......」
「父上、光琳くんは鬼神に取り憑かれているのだと思います。......光琳くんが神を殺すような神ではないはずです......」
「...わかっている......」
美朝阳がそう言うと美梓豪は頷いた。
美鈴玉や美暁龍たちも頷いた。
しかし蒼海アジュール国の神々や玲瓏美国の護衛神などは微妙な顔をしている。
「早く光琳を止めねば......神界のためにも......あの子のためにも......」
目を覚ました時に天光琳は苦しむことになるだろう。
取り憑かれているとはいえ、記憶はあるはずだ。
天光琳の性格からして「取り憑かれていたのだから天光琳は悪くない」と言っても聞かず、自分を責め続けるだろう。
もう既に何ヶ国か滅びているが、今からでも遅くは無い。
「ですが......光琳くんの洗脳が解けたとして......その後は"どうなってしまう"のでしょうか......?」
美鈴玉がそう言うと、美梓豪は下を向いた。
どうなってしまうのか......それは一つしかない。
「......封印...する」
「父上!ですが、光琳くんは!」
「知っているっ!!」
美梓豪が大声を出すと皆は黙り込んだ。
「......これは神王の俺でも変えられない決まりだ。神界で古くから決まっているルールなのだ。......いくら取り憑かれていたからと言っても......光琳が悪くないからと言っても......神を一神でも命を奪ってしまうと封印する決まりになっている......」
それは"神"として"命を奪う"ということは決して許されないものだからだ。
世界を作り、人間を生み出し、人間の願いを叶える世界で頂点的存在の神が、殺しなんてしてはならない。
どんな理由があろうと......それは変えられない。
「できるのであれば俺は封印したくない......だからといって、光琳をそのままにしておくことは出来ない」
皆は何も言えなくなり、下を向いた。
天光琳はもう幸せになることは出来ない。
天麗華たちの幸せを奪ったのだから、それは当たり前だ......と。
だが、天光琳は戻っても、恐らく封印される道を選ぶだろう。
それは美家一族、皆そう思っている。
「...光琳......」
✿❀✿❀✿
そして四年の月日が経った。
まだ新しい鬼神は誕生していないが、アタラヨ鬼神国の力はどんどん上がっていく。
毎日のように国が滅びていき、次は自分の国ではないかと皆焦り、夜も普通に眠れない。
また、鬼神と戦うのに備え、神の力を高くするよう、十歳以上になった神でも天光琳のように修行と稽古を始めた。
天光琳は修行と稽古を続けていたため強くなった。なら同じようにやれば強くなるのでは無いか?
鬼神の力を手に入れたばかりの天光琳は強いとはいえ、使える能力が少ない。
しかし、既に能力を多く持っている神々は今から修行と稽古を始めても天光琳に追いつくだろう......そう思っている。
......が。それはどうだろう。
今のところ、天光琳に傷一つでも付けることができた......という情報はない。
一体どれだけ恐ろしいのか......神王美梓豪でも相手にならないほど強いのだろうか。
奇跡の神も殺されてしまったことだ。
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