166 / 184
ー悪ー 第一章 アタラヨ鬼神
第十七話 殺し
しおりを挟む
鬼神王は二神の目の前で着地をした。
「鬼神王様......?」
「邪魔をしているの?」
鬼神たちは鬼神王の行動に理解しておらず、不安の声を上げる。今まで試合を邪魔したものはいない。それだと言うのに、試合中、横から入り込んだ。
鬼神はウェルシャの腕を掴む。ウェルシャは焦りの表情を浮かべていた。どうやら自分の過ちに気づいているようだ。サイフォンは立ち上がり、ウェルシャから離れた。殺されかけていたため、サイフォンの全身は震えている。
「殺そうとしたの?」
「......いえ......そういう訳では......」
「ほんと?」
この勝負、殺せば勝ちではない。相手が降参すれば良いのだ。それなのに相手を喋れなくさせ、殴り続けるのはおかしい。いくら鬼神に代わりがいるとしても、この方法は正しいとは言えない。
何より、鬼神王は勝負ごときで命を落とすのはおかしいと思っている。
「すいません......」
「なぜ......口を押さえていたの?」
優しく言っているつもりなのだが、ウェルシャの手が震えている。別にそんなに恐ろしい顔はしていないと思うが......。
「殺せば...強い者だと皆に思って貰えると思って.........」
まさか自分が強いと思わせるために殺そうとしていたとは。アタラヨ鬼神では殺神(さつじん)をしても罪を背負うことは無い。道端の石を蹴飛ばしたのと同じで、何も悪いことをしていないということになる。
「鬼神王様」
シュヴェルツェとメリーナも降りてきた。二神は何故鬼神王がウェルシャの腕を掴んでいるか知っている。
「別にルールを破っている訳では無いですよね!」
確かにそうだ。けれどそのやり方は本当に良いのだろうか。けれどルールは破っていない。鬼神王はなんとも言えなくなった。
「この決着はウェルシャの勝ちということにしよう」
シュヴェルツェはそう言ったあと、鬼神王を見た。そして小さな声で「どうしますか」と言った。「どうしますか」とは恐らくルールのことだろう。鬼神王はこのルールが気に食わない。けれど鬼神たちがなんとも思っていないのならば、自分がわがままを言って変える訳にはいかない。
けれど、このまま続ければまだ死者が出る可能性がある。
先程戦っていたウェルシャは走って出口まで行き姿を消した。サイフォンは恐らく仲の良い鬼神に肩を借り、邪魔にならないところで手当をしてもらっている。
「皆に鬼神王様の考えを伝えてあげてください。皆理解してくれますよ」
鬼神王は小さく頷いた。そして前を見る。
「この戦い、新しくルールを追加しませんか?......"相手を殺してしまったら両方敗北"......」
鬼神王様は自信なさそうに少し小さな声で言ってしまった。そのため、三、四階にいた神は聞こえなかったという者もいた。
「やはり勝負で命を落とすのは勿体ないと思うんです。いくら代わりがいると言っても、僕にとっては皆大切な仲間です。それに、死んでしまったら思い出が消えてしまいますよね......それってすごく悲しいことではないですか?」
鬼神王がそう言うと、数秒沈黙の時間が流れた。やはりダメなのだろうか。
「俺もそれ思った!」
突然、二階の方から声が聞こえた。鬼神王は声が聞こえた方を見る。すると、色々なところから声が聞こえてきた。
「私もそれいいと思います!」
「僕も少しおかしいって思ってた!」
「さんせーい!」
次々と賛成の声が聞こえる。鬼神王は目を丸くした。てっきり批判の声が上がると思っていたからだ。シュヴェルツェは「言ったでしょう」と言いながら鬼神王の肩をトントンと二回叩いた。
「私も思っていたんですよね。代わりはいるけど、私だったら死にたくないなって」
メリーナもどうやら賛成しているそうだ。けれど鬼神王はメリーナのある言葉に引っかかった。
「メリーナ、代わりがいるって言うの......やめない?メリーナは一神しかいないんだよ。僕はメリーナがいなくなって別の鬼神がくるのは嫌なんだ」
鬼神王がそう言うと、メリーナは驚き、そして微笑んだ。
「えへへ、分かりました!そうですよね、私は一神しかいませんよね」
「うん。こんなに頼りになる鬼神はメリーナしかいない。だから自分の命は大切にしてね」
メリーナは嬉しそうに微笑んでいる。これで分かってくれただろうか。......と、シュヴェルツェがこちらを見ていることに気づいた。......眉間に皺を寄せいる。
「ヴェル?」
「私は頼りになりませんか」
「あっ」と鬼神王は声を漏らしてしまった。シュヴェルツェも頼りになる。そうだ。頼りになる鬼神はメリーナとシュヴェルツェだ!
「大丈夫!ヴェルもだから!!」
「えへへ、ヴェルさんは怖いんですよー」
「今なんと......?」
メリーナは笑いながら逃げる。メリーナは先程鬼神王が言った言葉が嬉しかったのか、ずっと嬉しそうな顔をしている。その顔は実に可愛らしい。
「さて。戻りますか......」
とシュヴェルツェが振り返った瞬間、後ろからある鬼神が歩いてきた。
「鬼神王、勝負しよう」
「鬼神王様......?」
「邪魔をしているの?」
鬼神たちは鬼神王の行動に理解しておらず、不安の声を上げる。今まで試合を邪魔したものはいない。それだと言うのに、試合中、横から入り込んだ。
鬼神はウェルシャの腕を掴む。ウェルシャは焦りの表情を浮かべていた。どうやら自分の過ちに気づいているようだ。サイフォンは立ち上がり、ウェルシャから離れた。殺されかけていたため、サイフォンの全身は震えている。
「殺そうとしたの?」
「......いえ......そういう訳では......」
「ほんと?」
この勝負、殺せば勝ちではない。相手が降参すれば良いのだ。それなのに相手を喋れなくさせ、殴り続けるのはおかしい。いくら鬼神に代わりがいるとしても、この方法は正しいとは言えない。
何より、鬼神王は勝負ごときで命を落とすのはおかしいと思っている。
「すいません......」
「なぜ......口を押さえていたの?」
優しく言っているつもりなのだが、ウェルシャの手が震えている。別にそんなに恐ろしい顔はしていないと思うが......。
「殺せば...強い者だと皆に思って貰えると思って.........」
まさか自分が強いと思わせるために殺そうとしていたとは。アタラヨ鬼神では殺神(さつじん)をしても罪を背負うことは無い。道端の石を蹴飛ばしたのと同じで、何も悪いことをしていないということになる。
「鬼神王様」
シュヴェルツェとメリーナも降りてきた。二神は何故鬼神王がウェルシャの腕を掴んでいるか知っている。
「別にルールを破っている訳では無いですよね!」
確かにそうだ。けれどそのやり方は本当に良いのだろうか。けれどルールは破っていない。鬼神王はなんとも言えなくなった。
「この決着はウェルシャの勝ちということにしよう」
シュヴェルツェはそう言ったあと、鬼神王を見た。そして小さな声で「どうしますか」と言った。「どうしますか」とは恐らくルールのことだろう。鬼神王はこのルールが気に食わない。けれど鬼神たちがなんとも思っていないのならば、自分がわがままを言って変える訳にはいかない。
けれど、このまま続ければまだ死者が出る可能性がある。
先程戦っていたウェルシャは走って出口まで行き姿を消した。サイフォンは恐らく仲の良い鬼神に肩を借り、邪魔にならないところで手当をしてもらっている。
「皆に鬼神王様の考えを伝えてあげてください。皆理解してくれますよ」
鬼神王は小さく頷いた。そして前を見る。
「この戦い、新しくルールを追加しませんか?......"相手を殺してしまったら両方敗北"......」
鬼神王様は自信なさそうに少し小さな声で言ってしまった。そのため、三、四階にいた神は聞こえなかったという者もいた。
「やはり勝負で命を落とすのは勿体ないと思うんです。いくら代わりがいると言っても、僕にとっては皆大切な仲間です。それに、死んでしまったら思い出が消えてしまいますよね......それってすごく悲しいことではないですか?」
鬼神王がそう言うと、数秒沈黙の時間が流れた。やはりダメなのだろうか。
「俺もそれ思った!」
突然、二階の方から声が聞こえた。鬼神王は声が聞こえた方を見る。すると、色々なところから声が聞こえてきた。
「私もそれいいと思います!」
「僕も少しおかしいって思ってた!」
「さんせーい!」
次々と賛成の声が聞こえる。鬼神王は目を丸くした。てっきり批判の声が上がると思っていたからだ。シュヴェルツェは「言ったでしょう」と言いながら鬼神王の肩をトントンと二回叩いた。
「私も思っていたんですよね。代わりはいるけど、私だったら死にたくないなって」
メリーナもどうやら賛成しているそうだ。けれど鬼神王はメリーナのある言葉に引っかかった。
「メリーナ、代わりがいるって言うの......やめない?メリーナは一神しかいないんだよ。僕はメリーナがいなくなって別の鬼神がくるのは嫌なんだ」
鬼神王がそう言うと、メリーナは驚き、そして微笑んだ。
「えへへ、分かりました!そうですよね、私は一神しかいませんよね」
「うん。こんなに頼りになる鬼神はメリーナしかいない。だから自分の命は大切にしてね」
メリーナは嬉しそうに微笑んでいる。これで分かってくれただろうか。......と、シュヴェルツェがこちらを見ていることに気づいた。......眉間に皺を寄せいる。
「ヴェル?」
「私は頼りになりませんか」
「あっ」と鬼神王は声を漏らしてしまった。シュヴェルツェも頼りになる。そうだ。頼りになる鬼神はメリーナとシュヴェルツェだ!
「大丈夫!ヴェルもだから!!」
「えへへ、ヴェルさんは怖いんですよー」
「今なんと......?」
メリーナは笑いながら逃げる。メリーナは先程鬼神王が言った言葉が嬉しかったのか、ずっと嬉しそうな顔をしている。その顔は実に可愛らしい。
「さて。戻りますか......」
とシュヴェルツェが振り返った瞬間、後ろからある鬼神が歩いてきた。
「鬼神王、勝負しよう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
とある中年男性の転生冒険記
うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる