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ー悪ー 第一章 アタラヨ鬼神
第二十八話 みんなと違う
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アタラヨ鬼神に帰還した。
二神が塔の外へ出ると、大きな拍手が鳴り響いた。皆しっかり見てくれていたようだ。
「さて、人間たちの不幸な姿、見ましょうか」
シュヴェルツェが指を鳴らすと、今度は鬼神王ではなく人間たちが映し出された。それも数え切れないほどの人間たち。それぞれ仕切られていて、一度にたくさん見ることが出来る。
病気で亡くなる者、罪人と間違えられ殺される者、食べ物がなく餓死する者、流行病にかかり息を引き取った者......など。不幸にすると言っていたが、どれも亡くなっている。次から次へと人間の命は散る。
「あはははっ」
「人間たちが消えていく!」
「おもしろーい!」
鬼神たちの声が聞こえた瞬間、鬼神王の心はトゲが刺さったかのようにズキっと痛み、ドクンと大きな鼓動がなった。
「見てみてあそこの人間!」
「ほんとだ!おもしろいね」
「笑っちゃう!」
「......」
笑いがやまない。鬼神王の鼓動はますます大きくなる。
「ちゃーんと見ておりましたよぉ、鬼神王様!流石ですねぇ、あはは」
メリーナも笑っている。
そう、皆は笑っている。
しかし。鬼神王は笑っていない。焦りと困惑の表情を浮かべている。
「これって......笑っていいことなの......?」
「......えぇっと......聞き取れませんでした、すいません!もう一度お願いします!」
鬼神王は小さな声で言ったため、メリーナは聞き取れなかったようだ。メリーナは聞き返したが、鬼神王は口を開かなくなった。
(これは亡くなってるんだよ......命が消えているんだよ......それなのになんで皆笑ってるの...?......メリーナまで......)
鬼神王は自分と鬼神たちの見えている世界が違うように感じた。
笑う要素がひとつもない。
しかし皆は笑っている。拍手をしたり飛び跳ねたり、指をさして笑ったり。そして鬼神王を褒める。
「何が面白いの......?」
「鬼神王様......?どうしたのですか?」
先程まで笑顔で喜んでいたメリーナは、鬼神王が心配になり、笑顔が消えた。
(......!)
シュヴェルツェは目を細めてじっとこちらを見ている。その様子はいつもと違う。怒っているのだろうか。いつものような心配している様子では無い。
「......僕がおかしいだけなのかも」
「......え?」
鬼神王はそう言っ走り出した。鬼神たちで塞がっているが、鬼神王は鬼神たちを押しのけて走り去って行く。
「鬼神王様!!」
メリーナが叫ぶと、笑い声は一瞬で消えた。鬼神王が走り去ったことを知っている鬼神も入れば、先程自分を押しのけて通って行った鬼神は誰だったのか知らず、『あれは鬼神王様だったのか?』と困惑している鬼神達もいる。しかしメリーナはいちいち説明している暇はない。
メリーナは鬼神王の後を追う。しかしシュヴェルツェは追わなかった。腕を組んでなにか考え事をしている。その目つきはまるで威嚇している蛇のようだ。
皆は何があったのか、と周りの鬼神に聞くが皆は知らない。いつの間にか人間たちが不幸になっている姿を見る鬼神はいなくなった。鬼神王が逃げた先を見つめ、心配そうにしている。
なぜ逃げたのだろう。皆鬼神王のことを褒めていた。鬼神王を悪くいう者は一神もいなかった。
......それなのに何故だろう。
二神が塔の外へ出ると、大きな拍手が鳴り響いた。皆しっかり見てくれていたようだ。
「さて、人間たちの不幸な姿、見ましょうか」
シュヴェルツェが指を鳴らすと、今度は鬼神王ではなく人間たちが映し出された。それも数え切れないほどの人間たち。それぞれ仕切られていて、一度にたくさん見ることが出来る。
病気で亡くなる者、罪人と間違えられ殺される者、食べ物がなく餓死する者、流行病にかかり息を引き取った者......など。不幸にすると言っていたが、どれも亡くなっている。次から次へと人間の命は散る。
「あはははっ」
「人間たちが消えていく!」
「おもしろーい!」
鬼神たちの声が聞こえた瞬間、鬼神王の心はトゲが刺さったかのようにズキっと痛み、ドクンと大きな鼓動がなった。
「見てみてあそこの人間!」
「ほんとだ!おもしろいね」
「笑っちゃう!」
「......」
笑いがやまない。鬼神王の鼓動はますます大きくなる。
「ちゃーんと見ておりましたよぉ、鬼神王様!流石ですねぇ、あはは」
メリーナも笑っている。
そう、皆は笑っている。
しかし。鬼神王は笑っていない。焦りと困惑の表情を浮かべている。
「これって......笑っていいことなの......?」
「......えぇっと......聞き取れませんでした、すいません!もう一度お願いします!」
鬼神王は小さな声で言ったため、メリーナは聞き取れなかったようだ。メリーナは聞き返したが、鬼神王は口を開かなくなった。
(これは亡くなってるんだよ......命が消えているんだよ......それなのになんで皆笑ってるの...?......メリーナまで......)
鬼神王は自分と鬼神たちの見えている世界が違うように感じた。
笑う要素がひとつもない。
しかし皆は笑っている。拍手をしたり飛び跳ねたり、指をさして笑ったり。そして鬼神王を褒める。
「何が面白いの......?」
「鬼神王様......?どうしたのですか?」
先程まで笑顔で喜んでいたメリーナは、鬼神王が心配になり、笑顔が消えた。
(......!)
シュヴェルツェは目を細めてじっとこちらを見ている。その様子はいつもと違う。怒っているのだろうか。いつものような心配している様子では無い。
「......僕がおかしいだけなのかも」
「......え?」
鬼神王はそう言っ走り出した。鬼神たちで塞がっているが、鬼神王は鬼神たちを押しのけて走り去って行く。
「鬼神王様!!」
メリーナが叫ぶと、笑い声は一瞬で消えた。鬼神王が走り去ったことを知っている鬼神も入れば、先程自分を押しのけて通って行った鬼神は誰だったのか知らず、『あれは鬼神王様だったのか?』と困惑している鬼神達もいる。しかしメリーナはいちいち説明している暇はない。
メリーナは鬼神王の後を追う。しかしシュヴェルツェは追わなかった。腕を組んでなにか考え事をしている。その目つきはまるで威嚇している蛇のようだ。
皆は何があったのか、と周りの鬼神に聞くが皆は知らない。いつの間にか人間たちが不幸になっている姿を見る鬼神はいなくなった。鬼神王が逃げた先を見つめ、心配そうにしている。
なぜ逃げたのだろう。皆鬼神王のことを褒めていた。鬼神王を悪くいう者は一神もいなかった。
......それなのに何故だろう。
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