消えない残響:ずっと、誰かがいる

あめとおと

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第一話 ずっと、誰かがいる

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これは、ある地方都市の格安物件に引っ越した大学生、A君から聞いた話です。

そのアパートは築30年。
不自然なほど家賃が安かったのですが、事故物件サイトには何も載っていませんでした。

間取りはごく普通のワンルーム。
ただ一つ変だったのは、クローゼットの扉が、外側から「南京錠」で施錠されていたことです。

不動産屋は「前の住人が潔癖症で、勝手に付けただけです。鍵は外しておきましたから」と笑っていました。


違和感

住み始めて一週間。A君は、夜中に「カリ、カリ……」という小さな音で目が覚めるようになりました。

音の正体はすぐに分かりました。あのクローゼットの内側からです。

「ネズミかな」

そう思って扉を叩くと、音は止まります。
しかし、数分経つとまた「カリ、カリ……」と。まるで、爪で木を引っ掻くような音が続くのです。


隙間

ある夜、A君は気づきました。

クローゼットの扉が、数ミリだけ開いているのです。

しっかり閉めたはずなのに、中から押し出されたような隙間。
そこから、「古い生ゴミと、カビが混ざったような臭い」が漂ってきます。
彼は怖くなり、ホームセンターで強力なガムテープを買い、扉を隙間なく目張りしました。

「これで大丈夫なはずだ」


異変

その日の深夜、A君は金縛りにあいました。

体は一ミリも動かない。
耳元で、「……あ……け……て……」という、枯れた老女のような、あるいは子供のような、判別のつかない声が聞こえました。

視線を必死に動かすと、クローゼットが見えました。

バリ、バリ、バリ!!

凄まじい音を立てて、内側からガムテープが引き剥がされています。

指先。爪が剥がれ、血に染まった細い指が、中から隙間に突き立てられていました。


結末

A君は意識を失い、翌朝、友人に助け出されました。

彼はすぐに引っ越しましたが、今でも後遺症に悩まされています。

何が一番怖かったのか。

後日、業者がクローゼットの中を調べたところ、クローゼットの壁の裏側に、人間一人分が入れるほどの「隠し空洞」が見つかったことではありません。

その空洞の壁一面に、
「おまえがでていけ。ここはわたしのばしょだ」
という文字が、すべて「人間の歯」で削り取られて書かれていたことでもありません。

一番の恐怖は、A君が逃げ出した後の部屋に、次の入居者が決まったという連絡が来た時です。
不動産屋の担当者が電話でこう言ったそうです。

「あぁ、あの部屋ですか? 次の方には『クローゼットは絶対に開けないこと』という条件で、さらに安くして貸し出しましたよ。前の住人(A君)さんが付けてくれたガムテープ、補強しておきましたから」

今、あなたの背後にある扉や隙間、しっかり閉まっていますか?


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