名前で激しくネタバレする推理小説 ~それでも貴方は犯人を当てられない~ 絶海の孤島・連続殺人事件!

はむまる

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シーン14 ~謎は解けた~

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「フラグミール君!」

若い女性助手のところに、メイタンテーヌが珍しく真面目な顔で近づいてくる。

「あれ、どこにいってたんですか、メイタンテーヌさん。」

「イロケスゴイ夫人は今、どこに?」

「なんかさっき、シャワーを浴びるとか言ってましたよ。」

フラグミールは答えてから、牛乳瓶の底のようなメガネをキラリと光らせると、付け加えた。

「ゾンビ映画なんかだと、グラマーな美女がシャワーを浴びていると、だいたい襲われるーーと相場が決まってるんですがね。これはまあ、ゾンビ映画ではありませんから。」

「そうか。シャワールームは二階の奥まったところだっけ?」

「そうだと思いますが、、、どうしました?」

確信に満ちた足取りで、メイタンテーヌは今来た道を戻り、階段に向かって歩いていく。目で追いかけるフラグミールに対して、ポツリと言った。

「夫人に会いに行く。」

「ちょ、ちょっと! まだ、シャワーを浴びてる最中かもしれませんよ!」

「、、、関係ない。」

これはおかしい、とフラグミールは思った。

この人、何か理由をつけて、イロケスゴイ夫人のシャワー姿を覗こうとしてるんじゃないかしら。

「おや、どうしたのかね、マヨエルホー君。」

階段の近くにいたボンクラー警部補が、声をかけた。

「ちょっと、ボンクラー警部補! この人を止めてもらえません?」

すたすたと歩くメイタンテーヌの襟のところを、ボンクラー警部補はひょいとつかんだ。

「うぐぐぐぐ」

メイタンテーヌの首がしまる。

「な、、、何をやってるんですか! これから、行かなきゃいけないんだ! 夫人のところへ!」

「警部補、そのまま捕まえといてください、この人、イロケスゴイ夫人のシャワーを覗こうとしてるんじゃないかと思って」

追い着いたフラグミールが、厳しい顔で言う。

「何だと、マヨエルホー君、ついにストレスで、おかしくなったか」

「失礼な! 私はいつだって頭脳明晰、正常です!」

警部補の手から逃れようとするメイタンテーヌと、後ろから腕をつかむフラグミール、さらにボンクラー警部補が絡まり合った。お互いに、グググ、と力をこめる。

「いたたた、、、痛い! なぞがーー謎が解けたんだ! これから、確認する必要がある!」

フラグミールに前髪をわしづかみにされながら、メイタンテーヌは叫び声をあげた。

~~~

一方そのころ、イロケスゴイは優雅にシャワーを浴びていた。

すらりと伸びた足、くびれのある、引き締まったウエスト。そこから上にあがっていくと、豊かな乳房が見える。ただしバストトップは、残念ながら腕と、湯気に隠れていて、よく見えない。

長い髪は水に濡れ、その水が背中をつたって、形のよいヒップラインを経由して下に落ちて行った。

イロケスゴイの強烈な色気が、シャワールーム中に、もうもうと立ち込めている。

本作が映像化されれば、これぞ、まさにサービス・シーン、という感じだったが、残念ながらこれは文字ベースの小説であった。

しばらくして、イロケスゴイは頭にタオルを巻き、胸付近はバスタオルを巻きつけてシャワールームを出てきた。

シャワールームとつながっている自分の部屋で、リラックスして鏡を見つめる。

それから振り返り、フフと誰かに向かって微笑みかけた。何かが、順調に進んでいるとでもいうのだろうか。

その時だった。ガヤガヤと人の声がした。

「、、、だから、、、言ってるでしょ、、、なぞが、、、」

「まだ、シャワー中かもしれませんから!」

「マヨエルホー君、、、行くなら一緒に行こうじゃないか、、、!」

「ちょっと、警部補まで、、、もしかしてあなたも、覗きたいだけなんじゃないんですか!?」

まずい。

とっさにイロケスゴイが機敏に動き始める。バタバタとあわてふためいた後、クローゼットのドアをバタンとしめた。

同時に、ドアがガチャリと開く。

メイタンテーヌ、ボンクラー警部補、フラグミールの順に部屋になだれ込んできた。

「あっ! ほらイロケスゴイさんがバスタオル姿だ、だめです、部屋を出ましょう!」

「ご夫人、あなたに聞きたいことがある。」

いつになく真剣な表情で、メイタンテーヌが口を開いた。

「なんですか? 今はこんな格好ですから、少し外で待っていて頂けませんか?」

世の中のすべての男性を魅了するような猫なで声で、イロケスゴイが言った。ボンクラー警部補は、もうクラクラしている。

「謎がとけたんです。それについて、、、あなたのご意見を伺いたい」

メイタンテーヌは部屋の中にずかずかと入りながら、しゃべり続ける。目線はイロケスゴイの方に油断なく向けられている。

「おや、そのクローゼットの前から一歩も動こうとしませんね」

人差し指で、前髪をかきあげながら言った。

「、、、クローゼットの中に、隠しているものでもあるんですか?」

とたんに、キッ、とイロケスゴイがメイタンテーヌを睨みつけた。凄みのある、迫力のある表情だ。しかしそれは一瞬のことで、また男性を誘惑するような、甘い表情に戻って言った。

「たいへん申し訳ないのですが、失礼ではないですか? この場はいったん、お引き取り下さい。あとで下に降りていきますよ」

「いいや、だめです」

メイタンテーヌが、冷静に言った。

「この部屋に何か不審なものがないか、調べたい。あなたに隠蔽されては困る、今すぐにです」

あくまで、攻撃的な態度を崩さない。ただ、横で見ているフラグミールも、少しずつ不思議に思い始めた。

イロケスゴイが、何か非常に焦っているように見える。また、メイタンテーヌの言う通りで、何かを隠しているようにも思われた。

もう少し、二人の会話を聞いてみてもよいのではないかーーと思わせる、何かがあった。

「マヨエルホー君、人の家のクローゼットやら、なんやらを開けて回るっていうのも、さすがに失礼じゃないかね。特にここは女性の部屋だ。下着が入っていたりするかもしれんから、鑑識が来るまで、待った方が、、、」

ボンクラー警部補がなだめるように言ったが、メイタンテーヌは低い声で言った。

「下着なんかより、もっとすごいものが出てくるかもしれませんよ。」

「?」という表情の警部補に向かって、言葉をつないで言う。

「、、、この事件の、真犯人、、、とかね。」

次の瞬間だった。

メイタンテーヌはばっとダッシュすると、少しだけイロケスゴイの肩を押した。あっとイロケスゴイが体勢を崩す。

スローモーションになる中、胸に巻いていたバスタオルが、はだけて落ちるーーいや、落ちない、落ちない。

すんでのところで、イロケスゴイが腕でバスタオルをささえ、胸を隠した。

そのすきに、メイタンテーヌはバッと、クローゼットのドアを開けてしまった。

「あっ!」

「、、、あ、、、ああ、、、」

ボンクラー警部補と、フラグミールが驚愕した。三秒ほど、時間が止まる。

クローゼットの中には、人が隠れていた。

一同の視線が、その人物に注がれた。

男は、やがて観念したのか、ふてぶてしい表情でクローゼットから出てきた。

「あなたは、、、あなたがなぜここに、、、」

ボンクラー警部補が、あえぎながら言った。

「あなたが、犯人だったんですね。」

メイタンテーヌはいまや、自身に満ち溢れている。

それから、クローゼットから出てきた人物をビシッと人差し指でさすと、高らかに宣言した。


「連続殺人事件の真犯人は、あなただ!

 スグシヌンジャナイ・コヤーツ!!」
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