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第二章 『何かが始まる時』
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しおりを挟む「みやちゃんだ、仕事お疲れ様です」
「あっ、も、桃園君、こんばんは」
「こんばんはー、みやちゃんは今日もお美しいですね」
合コン合コンばっかり言っていたのに、鳰さんを見た途端、目を輝かせる桃園。
「鳰さん、桃園今から合コンなんです」
俺が横から口を出すと、鳰さんは一瞬固まって、その後いつもの苦笑い。
「そ、そっか。い……いい、ですね。合コンかぁ」
「ちょっ奈古、お前、横から余計なこと言うなよ」
「やっぱり俺パス、合コン興味ないわ」
言うと、林田に頭を下げて、俺は一人歩き始める。
後ろでは桃園が鳰さんに、めいいっぱいのフォローをしていたが、あいつは一体何してるんだろう。
桃園は鳰さんのこと、ちゃんと気になってるんだよね? 普段そういう素振り、見せてるよね?
何で合コンってキーワードが出てくるわけ。ちょっと俺には、理解できないんだけど……。
しかし三人を置いて一人歩いていると、門を出てすぐの所で、誰かにシャツの裾を握られた。
ビクッとして横を見ると、そこは下を向く鳰さんが立っていた。呼吸が少し乱れている、走ってきたのだろうか。
「……何かあったんですか?」
「え、いや……あ、あの、合コン……な、奈古君は行かなくて良かったのかなって」
「俺はいいですよ」
「わ、私のせいですか」
「いえ、鳰さんは全然関係ないので」
何を責任感じてます、みたいな表情をしているのだろう。ホントに、断るタイミングに鳰さんがちょうどいただけで、彼女は関係ない。
「スーパー、寄って帰ろうと思ってます。鳰さんは、このまま帰られますか?」
「あ……いえ、わ、私も買い物できたらと思ってました」
「んじゃ、行きますか。スーパー」
返事は返ってこなかったが、二人距離を空けて歩きながら、近場のスーパーを目指す。
俺は無言でも平気。でも鳰さんはそうじゃないかもしれない。
見るからに、気遣いばかりしていそうなイメージ。
「今日、鳰さんの夕食は何の予定なんですか」
「い、家に野菜はあるので、あとは……や、焼き魚でもしようかなって」
「へぇ、自炊されるんですね。普段からされるんですか?」
「ま、まぁまぁしますかね……奈古君は?」
自炊はたまにする、でも弁当や総菜を買うことも多く、見習いたいくらいだ。
沈黙を挟みながらも、ポツポツ話をしながらスーパーに到着すると、籠を持って乳製品コーナーから見ていく。
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