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第五章 『キスが落ちる』
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しおりを挟む守屋君と部屋の前で別れると、私は急いでエレベーターに乗り、中に設置してあった大きな鏡で顔を確認すると、顔は思っていた通り真っ赤だった。
「キ……キス……した」
守屋君と……キス、した。
唇に残る生温かい感触を思い出し、私はぶんぶん首を振る。
これまでの25年、色恋沙汰がただの一つもなかった私にとってはとても大きな出来事で、守屋君にとっては流れでしたとしても、私にとっては、本当に大きくて。
キス……したんだ。
私は火照る頬を両手で包むと、もう一度鏡に目をやる。
やっぱり私の顔は林檎のように赤くて、でも、こんな時に浮かんだのは奈古君の顔で、何が一体どうしたいのか、ちっともよく分からなかった。
そしてトボトボアパートに帰る中、私はアパートの敷地の前で、意味が分からず顔が浮かんだ奈古君と、バッタリ会ってしまったのだ。
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