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『エピローグ カラフル』
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しおりを挟む~鳰都~
イブの日、私は初めて奈古君の部屋で一夜を共にした。
多分、いや、絶対に、物凄くぎこちなかったと思う。
自分をさらけ出すとは、あんなに恥ずかしいとは、いくら部屋が真っ暗でも、あれは、ちょっと……思い出すだけで……うわぁ……。
朝方、一足先に目が覚めた私は、同じベッドでまだ寝息を立てている奈古君を間近で見つめる。
寝顔も整っていて、テレビや雑誌から抜け出してきたかのようだ。
こんなにカッコ良い人が自分の彼氏だということ、たまに今でも実感が沸かない瞬間がある。
すぅ、すぅ、気持ち良さそうに寝ている奈古君を起こさぬようベッドから出ると、私はキッチンに立った。
何か朝ご飯を作ろかと思って冷蔵庫を開けると、お茶やスポーツ飲料などの飲み物と、二人が大好きな焼きプリンが六つも入っている。
私用にも、と奈古君が買い溜めしてくれているのは知っていたけれど、こんなに買わなくても……。
それにしても殆ど食材の入っていない冷蔵庫を見て、私は再びベッドのある奥の部屋に入ると、借りていた奈古君のスウェットを脱いで、昨日着ていた私服に着替える。
その後、そそくさと自分のバッグを持ってスーパー……はまだ開いていないか。コンビニにでも行こうとしたのだが──
「……鳰さん?」
小さな物音が耳についたのか、眠そうに目を開けた奈古君が、ゆっくり上半身を起こす。
「あ……寝てていいですよ。ちょっとコンビニに、朝食買いに行ってきます」
「え、あ、そうなんですね。俺も行きますよ」
「奈古君はゆっくり寝てていいですよ」
「いえ、行きます」
──奈古君だ……。
咄嗟に昨夜の奈古君がバンッと脳内で再生され、背を向ける。
「じゃあ……私は外、出ておきますね」
恥ずかしい、恥ずかしい……あの奈古君と、私は……。
外でふーっと息を吐くと真っ白で、その光景を見ていると、奈古君は一分もしないうちに出て来てくれた。
「うわぁ、すご、雪結構積もってますね」
「……ですね」
「なんか鳰さん、そっけない」
「……そんなことないですよ」
「昨日のこと、照れてるんですか? 可愛い」
ふっと笑った奈古君は私の手を握ると、早朝から近くのコンビニへ二人で歩いてゆくが、こんな経験もまた初めてで、ちょっとのことで浮かれる自分がいる。
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