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9話
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「結局誰がやったかは重要ではない。こんな能力が世の中にはあるということさ」
なにかしら、これは夢?
「誰一人として、もう目を覚ますこともないだろう。完全にやられちまってる」
「君は多分犯人を知っているだろう。だが、君は残念なことに精神を深く病んでいて、真相は闇のままだ」
「まぁ、とはいってもあくまで証拠がないというだけの話で、私は既に誰がやったか見当はついているんだがね」
とある一日のボスとの会話。
ただ、一体どこで何の事を話をしていたかサクラコの記憶は非常にぼんやりとしていた。
現実だったか夢だったかも曖昧だった。
思えばあれから私は。私の人生は夢と現実の境界線がずっと不確かだった。
「おーい、朝だよぉ」
急に胸のあたりがくすぐったく感じる。
五感による感覚を頼りにするにしても、私が他者の夢に入る時は、夢の中でさえ五感がはっきりしているのだから、キリがなかった。ただ一つ今が現実だと言える根拠はボタニカルのメンバーがそこにいるからだった。
「うぅ……」
何かくすぐったいどころか、もっと具体的に胸のあたりを触られているような感じがする。
触られている!?
「ちょっと!」
「うわっ!」
サクラコが飛び起きたために、小柄なアベリアはベッドの場外へ吹き飛ばされた。
「いったーい! サクラコってベッドの上だと乱暴なのね」
「な、なにを言うんですか、私が寝ている隙にいきなり胸を触ってきておいてっ!」
「触ってっていうより割としっかり揉んでたけど……?」
「なっ」
サクラコは朝っぱらから顔を真っ赤にした。
「最低です、破廉恥です! なんでそんなことするんですかっ」
「えー、だって、全然起きなかったんだもん。良いじゃん、ただの朝揉みだよぉ」
「朝揉みなんて言う日課の様な言葉を造り上げないでください!」
「良いじゃない、女同士なんだし。お陰で気持ち良く目が覚めたでしょ?」
「なっ、こんなの最低の寝起きランキング上位です!」
「あはは、やっぱりサクラコって面白い」
サクラコからすれば、アベリアの方がよっぽど良い性格をしていると思った。
こんな冗談が生き甲斐のような性格をしていながら、サクラコよりも七歳ほど年上である。
短く切られた茶色い髪。顔に少しそばかすは見られるけれど、肌は白く鼻筋は良く通っていて、何より愛嬌たっぷりの笑顔を絶やさないため、とても男性に人気があった。
「そろそろ気合い入れなよ、サクラコ。モミジのことはわかるけれど、チームCのことで心を痛めているのはサクラコだけじゃないんだからね」
「い、言われなくてもわかっています!」
サクラコはアベリアに茶化されながらも、掛け時計を見ると既に正午へと近づいている事実に気づき、急いで寝間着をスーツ姿に着替えることにした。
応接室に到着すると、小太りで独身の中年男性オダマキが、いやらしい目つきで注意してきた。
「困るよぉ、サクラコ君。一応ここは一般的には中小建設会社のビルということになっているんだからね。受付に綺麗なお姉さんが居ないのは不自然だろう?」
「一部の言動にセクシャルハラスメントを感じますが、仰る通りです、大変失礼いたしました」
サクラコは一階のエントランスで受付を担当している。
ボタニカルは自分達の組織を匿うことに関しては手を抜いていない。
本当に存在するのと同等レベルで建設会社としての職務を、各自遂行しているのだ。
ただ、とはいっても、実際に職務の大部分を行っているのは、ボタニカルの息がかかっている外注である。
このチームAが属するAビルにはオダマキやサクラコを含めても9人しかいない。
それぞれが割り振られた職務を日々実行しているが、当然それだけで人手が足りるわけがないのだ。
あくまで業務は仮初のものであった。
定時になり、即座にビルのシャッターが降りる。
サクラコの、建設会社『アイバナ建設』としての業務は終了した。
寝坊で大遅刻をかましたサクラコにはもっとお灸が据えられても良さそうなものだったが、実際のところ、取引先の企業が来て受付が応対することなど稀である。経営方針そのものが『なるべく目立たない』に尽きるのだから、年間通して多少赤字でも『中小企業』っぽさが出ていれば問題がないのだった。それゆえに、わざわざこの会社にこぞって営業に来る部品会社等限られていた。
また、ここ最近、サクラコの調子が不調であることは、一応はアイバナ建設社長扱いになっているオダマキ自身良く理解しており、彼女に無理をさせる気など毛頭ないのだった。
なにかしら、これは夢?
「誰一人として、もう目を覚ますこともないだろう。完全にやられちまってる」
「君は多分犯人を知っているだろう。だが、君は残念なことに精神を深く病んでいて、真相は闇のままだ」
「まぁ、とはいってもあくまで証拠がないというだけの話で、私は既に誰がやったか見当はついているんだがね」
とある一日のボスとの会話。
ただ、一体どこで何の事を話をしていたかサクラコの記憶は非常にぼんやりとしていた。
現実だったか夢だったかも曖昧だった。
思えばあれから私は。私の人生は夢と現実の境界線がずっと不確かだった。
「おーい、朝だよぉ」
急に胸のあたりがくすぐったく感じる。
五感による感覚を頼りにするにしても、私が他者の夢に入る時は、夢の中でさえ五感がはっきりしているのだから、キリがなかった。ただ一つ今が現実だと言える根拠はボタニカルのメンバーがそこにいるからだった。
「うぅ……」
何かくすぐったいどころか、もっと具体的に胸のあたりを触られているような感じがする。
触られている!?
「ちょっと!」
「うわっ!」
サクラコが飛び起きたために、小柄なアベリアはベッドの場外へ吹き飛ばされた。
「いったーい! サクラコってベッドの上だと乱暴なのね」
「な、なにを言うんですか、私が寝ている隙にいきなり胸を触ってきておいてっ!」
「触ってっていうより割としっかり揉んでたけど……?」
「なっ」
サクラコは朝っぱらから顔を真っ赤にした。
「最低です、破廉恥です! なんでそんなことするんですかっ」
「えー、だって、全然起きなかったんだもん。良いじゃん、ただの朝揉みだよぉ」
「朝揉みなんて言う日課の様な言葉を造り上げないでください!」
「良いじゃない、女同士なんだし。お陰で気持ち良く目が覚めたでしょ?」
「なっ、こんなの最低の寝起きランキング上位です!」
「あはは、やっぱりサクラコって面白い」
サクラコからすれば、アベリアの方がよっぽど良い性格をしていると思った。
こんな冗談が生き甲斐のような性格をしていながら、サクラコよりも七歳ほど年上である。
短く切られた茶色い髪。顔に少しそばかすは見られるけれど、肌は白く鼻筋は良く通っていて、何より愛嬌たっぷりの笑顔を絶やさないため、とても男性に人気があった。
「そろそろ気合い入れなよ、サクラコ。モミジのことはわかるけれど、チームCのことで心を痛めているのはサクラコだけじゃないんだからね」
「い、言われなくてもわかっています!」
サクラコはアベリアに茶化されながらも、掛け時計を見ると既に正午へと近づいている事実に気づき、急いで寝間着をスーツ姿に着替えることにした。
応接室に到着すると、小太りで独身の中年男性オダマキが、いやらしい目つきで注意してきた。
「困るよぉ、サクラコ君。一応ここは一般的には中小建設会社のビルということになっているんだからね。受付に綺麗なお姉さんが居ないのは不自然だろう?」
「一部の言動にセクシャルハラスメントを感じますが、仰る通りです、大変失礼いたしました」
サクラコは一階のエントランスで受付を担当している。
ボタニカルは自分達の組織を匿うことに関しては手を抜いていない。
本当に存在するのと同等レベルで建設会社としての職務を、各自遂行しているのだ。
ただ、とはいっても、実際に職務の大部分を行っているのは、ボタニカルの息がかかっている外注である。
このチームAが属するAビルにはオダマキやサクラコを含めても9人しかいない。
それぞれが割り振られた職務を日々実行しているが、当然それだけで人手が足りるわけがないのだ。
あくまで業務は仮初のものであった。
定時になり、即座にビルのシャッターが降りる。
サクラコの、建設会社『アイバナ建設』としての業務は終了した。
寝坊で大遅刻をかましたサクラコにはもっとお灸が据えられても良さそうなものだったが、実際のところ、取引先の企業が来て受付が応対することなど稀である。経営方針そのものが『なるべく目立たない』に尽きるのだから、年間通して多少赤字でも『中小企業』っぽさが出ていれば問題がないのだった。それゆえに、わざわざこの会社にこぞって営業に来る部品会社等限られていた。
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