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24話
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結局、サクラコは審査員として双方の料理を味見したが「どちらも美味しい、満点」という取り留めもない言及をした。彼女が勝ち負けという概念に然したる興味がないことは明白だった。
だが、その評価にハスもカモミールも、やけに満足気だった。まるで初めから料理対決などどうでも良かったかのように。
料理が完成したことを知らせると、空腹だったのかすぐに一同は介した。
「皆、ハスとカモミールに感謝しなさいよね」サクラコはそのように前置きするつもりだったが、テント張り組がアズサ以外ヘトヘトになっているのを見て自重した。どうやら、アズサにこってり絞られたらしい。
「鬼だよ、鬼」
ガーベラがぶつくさと文句を言っている。
「いただきましょうか」
全員が着座し、サクラコがそう述べると、一同はそれぞれ食べたいものから頬張り始めた。
ガーベラはスプーンを手に取り、どうやらカレーを一番に頂くようだ。
だが、ガーベラはスプーンを口へ投入すると、刹那の内にそのまま吐き出した。
「汚っ!」
隣にいたリナリアが冷ややかな目を向ける。
だがガーベラはそれどころではないという様子で「か……か……か……」と、悶えながらコップの水をがぶ飲みした。そして、それでも足りないのか、付近にあった大型のペットボトル飲料水に口を直接つけてごくごくと体内へ入水した。
「辛い!」
飲み終わった後、ガーベラはそう叫んだ。
「辛い、辛すぎる! まだ口が痛いよ!」
ガーベラは目元から水滴が流れている。
さて当然のことではあるが、そのようにガーベラが先見して仰々しいアピールをしているのだから、一同カレーには一旦手を置けば良いものである。
しかしながら、「辛い」と言われれば、さてそれがどのくらいのものなのか、と気になってしまうのが人情というものであった。
かくして、その場にいた全員がそのカレーの辛さに苦悶の表情を浮かべることとなった。
「な、なんだこれは……」
調理したはずのカモミール自身が最も、驚嘆と混乱の表情を見せていた。
「え、これ、誰がつくったの」
ケホケホと咳を繰り返しながら、至極真っ当な追求意見がアベリアからあがる。
「ぼ、僕だけど……」
カモミールは水を飲む合間で返事をする。
一同はそれを聞くと、当然ながらカモミールをギロリとを睨んだ。
「カモミール、こういう冗談いらないんだけど……」
アズサがいの一番に口を開く。アズサは皆より一際頬に涙をしたため、最早その顔は乙女のそれではなく般若のそれだった。どうやら辛いものは相当苦手なようであった。
カモミールは両手を前に出して左右に振り、違うんだ、というアピールをする。
「た、たしかにつくったのは僕だけれど! 僕はその……アズサとかもいるし甘口を意識して作ったはずなんだよ!」
だがその台詞にカチンときたのか、アズサは語気を更に荒げた。
「は? 何? 私が辛いのが駄目な軟弱女だって言うの?」
しまった。カモミールは酷く狼狽しつつも弁明した。
「い、いや、ちょっと待って、全然そんなことは言ってないよ!ただ僕は」
カモミールは自分も口の中がヒリヒリしているたろうに、アズサを必死で宥めようとする。
だがアズサはもう頭が沸騰してしまったようだ。
「べ、別に私! 全然口の中なんて平常運転なんだけど! でも、でも皆が楽しみにしてた夕飯にこんな真似するなんて許せないだけなんだけど!」
そうは言いつつも明らかにメンバーで一番辛そうな表情しているアズサ。どう考えても私怨である。
「おーっと、カモミールとアズサの第一ラウンドが始まるか―?」
ガーベラは口のダメージが少し和らいだのか、余計な煽りをする。
さて、特に乱痴気騒ぎが大好きな面々において、一度盛り上がる議題が起こってしまえば、治めることはとても難しいのだった。
メンバー達は、周囲の観光客に申し訳なくなるほどに、ガヤガヤと最早カレーの話題とは全く関係のない各々自分の言いたい放題、売り言葉に買い言葉を続発させた。
特にアズサはカモミールの胸倉を掴みだし、収集が尽きそうにない。
こういう時、それを治めることができるとすれば、それはサクラコにおいて他ならなかったが、サクラコ自身は尋常ではない冷や汗をかきながら、口をつぐんで目をキョロキョロさせているのだった。
だが、その評価にハスもカモミールも、やけに満足気だった。まるで初めから料理対決などどうでも良かったかのように。
料理が完成したことを知らせると、空腹だったのかすぐに一同は介した。
「皆、ハスとカモミールに感謝しなさいよね」サクラコはそのように前置きするつもりだったが、テント張り組がアズサ以外ヘトヘトになっているのを見て自重した。どうやら、アズサにこってり絞られたらしい。
「鬼だよ、鬼」
ガーベラがぶつくさと文句を言っている。
「いただきましょうか」
全員が着座し、サクラコがそう述べると、一同はそれぞれ食べたいものから頬張り始めた。
ガーベラはスプーンを手に取り、どうやらカレーを一番に頂くようだ。
だが、ガーベラはスプーンを口へ投入すると、刹那の内にそのまま吐き出した。
「汚っ!」
隣にいたリナリアが冷ややかな目を向ける。
だがガーベラはそれどころではないという様子で「か……か……か……」と、悶えながらコップの水をがぶ飲みした。そして、それでも足りないのか、付近にあった大型のペットボトル飲料水に口を直接つけてごくごくと体内へ入水した。
「辛い!」
飲み終わった後、ガーベラはそう叫んだ。
「辛い、辛すぎる! まだ口が痛いよ!」
ガーベラは目元から水滴が流れている。
さて当然のことではあるが、そのようにガーベラが先見して仰々しいアピールをしているのだから、一同カレーには一旦手を置けば良いものである。
しかしながら、「辛い」と言われれば、さてそれがどのくらいのものなのか、と気になってしまうのが人情というものであった。
かくして、その場にいた全員がそのカレーの辛さに苦悶の表情を浮かべることとなった。
「な、なんだこれは……」
調理したはずのカモミール自身が最も、驚嘆と混乱の表情を見せていた。
「え、これ、誰がつくったの」
ケホケホと咳を繰り返しながら、至極真っ当な追求意見がアベリアからあがる。
「ぼ、僕だけど……」
カモミールは水を飲む合間で返事をする。
一同はそれを聞くと、当然ながらカモミールをギロリとを睨んだ。
「カモミール、こういう冗談いらないんだけど……」
アズサがいの一番に口を開く。アズサは皆より一際頬に涙をしたため、最早その顔は乙女のそれではなく般若のそれだった。どうやら辛いものは相当苦手なようであった。
カモミールは両手を前に出して左右に振り、違うんだ、というアピールをする。
「た、たしかにつくったのは僕だけれど! 僕はその……アズサとかもいるし甘口を意識して作ったはずなんだよ!」
だがその台詞にカチンときたのか、アズサは語気を更に荒げた。
「は? 何? 私が辛いのが駄目な軟弱女だって言うの?」
しまった。カモミールは酷く狼狽しつつも弁明した。
「い、いや、ちょっと待って、全然そんなことは言ってないよ!ただ僕は」
カモミールは自分も口の中がヒリヒリしているたろうに、アズサを必死で宥めようとする。
だがアズサはもう頭が沸騰してしまったようだ。
「べ、別に私! 全然口の中なんて平常運転なんだけど! でも、でも皆が楽しみにしてた夕飯にこんな真似するなんて許せないだけなんだけど!」
そうは言いつつも明らかにメンバーで一番辛そうな表情しているアズサ。どう考えても私怨である。
「おーっと、カモミールとアズサの第一ラウンドが始まるか―?」
ガーベラは口のダメージが少し和らいだのか、余計な煽りをする。
さて、特に乱痴気騒ぎが大好きな面々において、一度盛り上がる議題が起こってしまえば、治めることはとても難しいのだった。
メンバー達は、周囲の観光客に申し訳なくなるほどに、ガヤガヤと最早カレーの話題とは全く関係のない各々自分の言いたい放題、売り言葉に買い言葉を続発させた。
特にアズサはカモミールの胸倉を掴みだし、収集が尽きそうにない。
こういう時、それを治めることができるとすれば、それはサクラコにおいて他ならなかったが、サクラコ自身は尋常ではない冷や汗をかきながら、口をつぐんで目をキョロキョロさせているのだった。
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