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【第2部】第1章 湖畔離宮

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「すごい人だな、マーレット。これも、叔父上の治世の賜物なんだろう」

「そうですね」

私たちは、朝市に訪れていた。

朝市には、多くの人が訪れており、多いに賑わっている。

クレイン殿下は、装飾品を売っている露店の前で足を止める。

「これを頂けるか」

クレイン殿下は、湖畔で取れる丸石が付いた髪飾りを指差した。

「マーレット、動かないでくれ」

クレイン殿下は、ぎこちなく私の髪に今購入したばかりの髪飾りを付けてくれた。

「とてもお似合いです、新婚さんですか?」

露店の女性店主が、私たちに微笑んで聞いてくる。

「ああ、妻に湖畔の景色を見せたくて、こちらに来たんだ」

クレイン殿下は、店主に笑って答える。

私たちの後ろには護衛の者もいたが、人混みに紛れていたために、店主は気が付いていないのだろう。

「でしたら、お客さんは運がいい。今日は、湖の霧も晴れていて、きれいな景色が見れるはずですよ」

そう言うと、店主はいくつかの観光名所を教えてくれた。

私たちは、店主にお礼を言って店を後にした。

店を離れる時に、店主が私に小声でささやいた。

「今、隣国の王太子殿下が来てるらしいのだけど、……もしかして、お嬢さんの旦那さんが王太子殿下だったりして、……って冗談よ、こんな店に来るわけないわよね」

そう言った後、女性店主は「お幸せにね、それ、とても似合っているわ」と笑顔を見せた。

私は、女性店主に微笑んで、「ありがとう」と言ってクレイン殿下のもとに行く。

「クレイン殿下、ありがとうございます。大切にします」

私は、クレイン殿下に髪飾りのお礼を言った。

クレイン殿下は、照れくさそうに周りを見渡して言う。

「さて、次はリブート殿たちのお土産を探そう」

私たちは、多くの店を見て回った。

露店には、装飾品だけでなく、衣類や食べ物、いろんな物が売っている。

私は、おじい様たちのお土産とは別に、クレイン殿下への贈り物を購入していた。

「クレイン殿下、少し屈んで頂けますか」

私は、湖畔で取れる丸石で作られたペンダントをクレイン殿下の首に掛ける。

「ありがとう、マーレット。しかし、いつの間に買ったのだ、全然気が付かなかった」

私は、クレイン殿下を驚かせるために、こっそり護衛の者に頼んで、髪飾りを買った店で買って来てもらっていたのだ。

「私は、とてもお似合いだと思いますが、もし、気に入らなければ……」

「いや、大切にする。マーレット、ありがとう」

クレイン殿下は、嬉しそうに微笑みながら言ってくれた。

しばらく歩くと、目の前に湖が拡がる。

女性店主の話の通り、今日は霧が晴れていて、太陽の光でキラキラと輝く水面がよく見えた。

対岸の木々の緑と、空の青さ、湖の透明感が目に飛び込んでくる。

「素敵な景色ですね、クレイン殿下」

「ああ、この景色をそなたに見せたかったのだ」

足下には、丸石が転がっている。

私たちは、互いに贈り合った丸石を使った装飾品を身に付けていた。

私たちは、しばらく湖の景色を見ていた。
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