すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ

文字の大きさ
7 / 64
第一章 出会い編

出会い編 7

しおりを挟む
7.


『悠介って全然男らしくないよね。頼りないしつまらない』
『悠介の顔が気に入って告白したけど……ほんとに顔だけでウンザリする』
『この変な服全部捨ててよ! 俺に恥かかせないで!』
『悠介は何も喋らないでくれる? イライラするから』
『俺は悠介を抱きたい。抱かせろよ』
『どうせお前はその顔で男を誘ってるんだろ?』
 
 これまで付き合ってきた元恋人たちは皆口々にそう言った。悠介の外見を重視し、自分のステータスとして支配下に置こうとしていたのだ。しかし何を言っても何をしても自分色に染まらない悠介にヒステリーを起こし、そして最終的には別れを告げて離れていった。
 顔が好きだという理由で告白してきて、いざ付き合ってみると悠介の個性的な性格が受け入れられず、悠介の外見以外の全てを否定し、最終的には彼氏と呼べるような扱いではなくなる。どの男も高確率で暴力をふるい、そして見せつけるように堂々と浮気をした。
 高身長ではあるが、細く少し女性的な見た目の悠介を抱きたいとストーキングしてくる男もいた。
 前者に対して悠介は悠介なりに相手を想い大切にしていたつもりだった。できる限り相手に合わせ、相手の好みになろうと努力した。それでも相手には足りなかったようで、結果はいつも同じだった。そして悠介は人と違う自分が全部悪いんだ、と思うようになっていった。
 元々低い自己肯定がさらに低くなり、生きてる意味さえ考えるようになった。それでも、悠介は可愛い、悠介は悪くにゃい、悠介の良さを知ろうともしにゃい、と言ってくれるニャーが傍にいてくれて支えてくれているから生きてきてこられた。
 顔が好きと言われて告白され、顔だけだと否定され、今度こそはと思っても同じ事の繰り返しで、いつしか悠介は傷付くことを恐れ、元々の対人恐怖症も相まって人と関わることを極端に避けるようになったのだ。そして祖父の代からお世話になっている優しく温かい人達がいる商店街から出なくなった。
 そもそも悠介は可愛い男が好きなわけではない。イケメンで男前なカッコイイ男が好きなのだ。しかし言い寄ってくる男は皆、自分の可愛さを知っていてそれをアピールしてくるような子たちで、そうではない悠介好みの男の場合は相手もタチだった。それでも悠介は自分を好きだと言ってくれる彼らを尊重し、それなりに好きだと思っていた。とはいえ後者はどうしても無理で、危なかったことは何度もあったが運良く今まで抱かれたことはない。
 そういういくつもの辛い事が重なって悠介は疲れ果ててしまい、もう無理だと思った。自分と本当に愛し合える人なんてこの世にはいない、もうこれ以上傷付きたくない。あんな悲しい思いをするのなら、一生ニャーと二人で静かに暮らしていく方が幸せだと心の底から思ったのだった。


 
「……すけ! 悠介!」
 ニャーに呼ばれて、悠介はハッとして我に返った。いつの間にか過去を思い出し、思考に耽っていたようだ。
 悠介は呼んでくれたニャーの頭に手を添え、優しく撫でる。いつだってニャーは呼び戻して支えてくれる。悠介に、安心と幸福を与えてくれる。
「ごめんごめん。ぼーっとしてた」
 そう言ってニャーにこれ以上心配させまいと笑う悠介は内心を隠そうとしていても隠しきれずに悲し気で、悠介が母親のお腹の中にいる時から一緒にいるニャーには悠介が考えている事が手に取るように分かった。
「今までのヤツらは気にする必要にゃいニャ。みんにゃ悪いやつニャ。記憶から消すニャ」
「……悪いやつかどうかは分からないけど……でも、そうだね……ニャーの言うとおりだよね」
 頭では分かっていても、ニャーにはそう返事をしても、心の傷はトラウマとなり簡単には癒えてくれず、いつでも優しく愛してくれるニャーに心配をかける事しかできないなんて情けない、と自分を嫌悪しキュッと唇を噛んだ。
「ニャーはいつだって悠介の味方ニャ」
「……うん。ニャーがいてくれないと俺は生きていけないよ。嘘じゃないよ、ほんとだよ」
 ニャーは悠介から離れる気は微塵もないが、それでも先に言ったように悠介には悠介を大切に想い愛してくれるパートナーが必要だと思っている。
 そして柊一郎が悠介に好意を寄せているということは確実だと思っているし、悠介も柊一郎に好意を持っている。それでも悠介は過去に囚われて怯え、これまで以上に閉鎖的になっているのだ。もどかしい気持ちで二人を見守るしかないのか、と悠介を見つめながら思う。
「……さて、そろそろお店閉めようか。ニャーも手伝ってよ」
 ニャーに見つめられ少しいたたまれなくなった悠介は努めて明るく言った。
「ニャーはにゃにも持てにゃいニャ」 
「俺も何も持てないよう……」
「悠介はニャーより大きいのに力がにゃいからニャ」
「そうだよ。俺、力ないんだからニャーが運んでよう」
 そう言って拗ねたような顔をしながらうんしょうんしょとワゴンを店内へ運んでいる悠介に小さく笑って、ニャーは誰にでも優しく少し頼りないけれど、穏やかで真面目で純粋な悠介には辛い過去に囚われずいつまでも笑っていて欲しいと心から思った。
 
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

隣の大学院生は、俺の癒しでした。

結衣可
BL
仕事に追われ、残業ばかりの日々を送るサラリーマン・斎藤悠真(32)。 感情を表に出すことも減り、「今日も誰ともしゃべらなかったな」と思いながら帰宅する毎日。 そんなある夜、隣の部屋から漂ってきたカレーの香りとともに、インターホンが鳴る。 「作りすぎちゃって……よかったらどうぞ」 そう微笑んで皿を差し出したのは、隣に住む大学院生・風間緒人(25)。 栄養学を学びながら料理好きの緒人は、気づけば週に一度は“おすそ分け”をするようになる。 最初は戸惑いながら受け取っていた悠真だったが、温かい食事と緒人のさりげない気遣いに、 長い間感じたことのなかった「人の温もり」に心が揺らいでいく。 雨の日に差し出されるタオルや、疲れた体に沁みる味噌汁。 やがて二人で食卓を囲む夜、体調を崩したときの看病……。 少しずつ距離が近づくたびに、悠真は自分でも驚くほど笑顔を見せ、心を許してしまう。 逃げ腰のサラリーマンと、世話焼きの年下院生。 すれ違いと優しさの間で揺れる二人の関係は、いつしか「癒し」から「恋」へと変わっていく――。

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

【完結】少年王が望むは…

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
 シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。  15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。  恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか? 【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

手紙

ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。 そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

処理中です...