すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ

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第四章 告白編

告白編 1

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「柊一郎さん……ありがとうございます……」
 いつでも気にかけて心配してくれる柊一郎に思わずそう言うと、悠介は少し頬を染めて俯いた。視線の先にはニャーの尻尾が揺れていて、悠介は小さく笑う。
「いや、結局俺は何もしてませんから……」
「そんなことないです……こうしていつも気にかけてくれて……迷惑ばっかり掛けちゃって……」
「迷惑だなんて思ったことないです。俺は、犬山さんも、ニャーも大切に想ってますから」
 柊一郎の言葉に胸が詰まる。嬉しい。悠介は素直にそう思う。しかしそれを伝えることはできない。
「犬山さん。まずは傷の手当しましょう」
 柊一郎にそう言われ、悠介は自分が酷い状態だということにようやく気付いた。服もボロボロで、泥だらけだ。悠介は慌てて立ち上がろうとして、脚に力が入らずグラリ、と体が傾いた。倒れる、そう思った瞬間に温かいものに体が包まれた。衝撃はない。
「急に立ったら危ないですよ」
 フワリ、と爽やかな香りが悠介の鼻孔を擽った。悠介の体温が一気に上がる。
「あ……っ」
「大丈夫ですか? 脚に力が入らないみたいですね……そのまま座っていてください」
 柊一郎は悠介を腕に抱いたままそっと椅子に座らせると、救急箱借りますね、と言ってニャーと一緒に奥の部屋へと消えていく。悠介は返事もできないいまま胸を押さえ、どうにかこの大きく早く打つ鼓動を落ち着かせようとする。意外としっかり筋肉がついていた体と腕。そしてイケメンらしい爽やかな香り。これまでも距離は近かったと思うが、意図的ではないにしろこうして抱き締められるなんて思いもよらなかった。こんな不意打ちで平静を保つなど無理な話だ。悠介は俯いて瞼をギュッと閉じる。
「……犬山さん? どうしました? どこか、痛いですか?」
 悠介の様子に慌てて駆け寄った柊一郎は悠介の肩を抱く。心配してくれいるのは分かっているが、これでは心臓がもたない。悠介はそう思うと顔を上げる。
「だ、大丈夫です……」
「本当ですか? 無理しないでください。傷、見せてください」
 柊一郎は基本的に悠介の「大丈夫」は信用していない。いつも無理をしている事を知っている。柊一郎は少し強引かとも思ったが、隠される前に手当をしてしまおうと悠介の前に回ってしゃがみ込んだ。
「……ひどい傷ですよ……大丈夫なわけないです」
 悠介の状態に眉根を寄せて顔を顰める。頬には赤く擦りむけた痕、手首や腕には小さな切り傷と擦り傷が幾つも刻まれている。なかでも膝はズボンの膝部分が大きく破れ、血が垂れるくらい出ていて、一番ひどい傷だった。
「……夢中で……全然気が付かなかった……です……」
 悠介は、認識してようやくズキンズキンと痛み出した傷に苦笑する。顔も、腕も手も脚も、全部痛い。もう、少しも動かせない。悠介は困ったように柊一郎にチラリと視線を向けた。
「痛いですよね……消毒するので、もっと痛いと思います……」
「……っ、だい、じょうぶです……多分……」
「少しだけ、我慢してくださいね……」
 柊一郎は痛々しい悠介の傷口を見つめ、キュ、と唇を噛んだ。そして意を決して消毒液を取り出し、優しく消毒をし始めた。


 
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