続きは第一図書室で

蒼キるり

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1.新入生歓迎会

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 俺が通う高校には図書室が二つあるらしい、ということを知ったのは、入学してすぐの新入生歓迎会で配られた冊子に付いていた学校の地図を見ている時だった。
 第一図書室、第二図書室、と一つずつに名前をつけられたそれは一見酷く無駄なものに見えた。だけど第一図書室は俺たちの教室の棟とは違う棟の端にある。何処となく行く人が少ないのではないかとも思えた。
 だから放課後、暇つぶしにでも行ってみようと思ったのは、後から考えると本当に偶然だったのかどうか怪しい。
 ともかくその時の俺は気軽にそんな事を考えていた。ちらりと視線を動かすと舞台では先輩達が部活動紹介の真っ最中だった。
 特に目を引くものはないから、申し訳ないと思いつつも小さく欠伸をする。先生は出来る限り部活には入れと言っていたが、この調子では決まりそうもない。
 高校に入学したばかり。まだ授業も慣れないし、そつなくクラスの奴とは話をするものの特別仲の良いやつも出来ていない。慣れてないものばかりのこの時期に、部活動まで決めさせるというのは、仕方ないとは言えいかがなものか。
 そんなことを朝食中に愚痴ったら妹に「当たり前じゃん」と一蹴された。
 ちなみに妹は今年中学一年で文芸部に入るらしい。
 そもそも、文化部にしようと思っていたのにこの高校少なすぎるだろ、と心の中で呟いてみる。
 中学は三年間帰宅部をやっていたから、高校からは何か始めるかと思ったが甘かったらしい。……でも運動部に入ると毎日だろうし、それは困る。
 放課後少しくらいは暇が潰せないといけないから、委員会にでも入ろうかと考えたものの、それはそれで急な委員会とかあったら困るからやめた。
 というかほとんどボランティアな委員会を真面目にやる奴の気が知れない。
 ため息を吐きつつぐるりと首を回すと、ふと隣のクラスの奴に目が止まった。
 冊子を見ているか舞台を見ているか、もしくは寝ているかの集団の中で一人全く関係ないであろう本を読んでいる姿は先生達も咎められないような雰囲気があった。
 全く悪びれる調子もなさそうにぴんと背を伸ばして、時折目を細めつつ眼鏡の位置を整えている。
 少し神経質そうだが、顔も整っているし女子からは人気がありそうだな。
 というか俺も本はよく読むけどあんな目立つ事はとてもじゃないが出来ない。
 ああいう奴はもう部活が決まっているのだろうか、それとも入る気がない余裕なのだろうか、と一瞬考えたもののあまり横を向いているのも目立つかと思い、俺はまた冊子に目を落とした。
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