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セックスをしない夫婦
2話
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昼休みはいつも少し憂鬱だ。
うちの職場の社食は手頃な値段で味も悪くないから、多くの社員が利用している。私もその一人だ。
だけど、一緒に食べる人との会話には時折息が詰まるものがある。
「田辺さん、聞いてる?」
こくん、と今日のAランチのハンバーグをほとんど噛まずに飲み込んでしまった。
聞いてますよ、と必死に柔らかな声を装って答える。
なら、いいけど。少しでも気を悪くすると途端に面倒になる人がそう納得してくれて、ほっと息を吐いた。
落ち着いて味わうことも出来ない。家で正樹と一緒に食べた朝食が懐かしい。つい数時間前のことなのに。
「だからね、うちの旦那ったら」
うんうんと頷いて、聞いてますよアピールを繰り返す。周りの人も似たようなものだけど少しずつ違う
そうなんですねー。うちもですよ。そういうの嫌ですよね。左右から飛んでくる言葉たち。
そんな相槌、一体どこから湧いてくるのだろう。私はちっとも良い言葉が浮かんでこないから、こうしてひたすら頷くことしか出来ない。
入社したばかりの頃はまだ一人で食べたり、その時々で食べる人が違ったからよかった。
でもだんだんと食べる人が固定されていくうちに、息が詰まるようになった。元々人と一緒に食事をするのは好きじゃない。正樹は特別枠だ。
今では同じ部署の女性陣のほとんどが固まって食べるようになり、他の席に座ろうとすると、こっちよと手招きされるのだ。
アリ地獄に招かれてるみたい、なんて酷いことを思ってしまう。
楽しい人は楽しいのだろう。きっと。私が楽しめないだけで。私が悪いのだ。
でも正直に言うと、一日の中で一番苦痛な時間だ。今日みたいな会話の時は特に。
「やっぱりずっと仲良し、なんてわけにもいかないわよね」
そうよね、そうに決まってるわよね。促される返答に、期待された答えに、微かに目眩がした気がした。
結婚相手と上手くいかない愚痴を吐くのは自由だ。人間同士なのだから上手くいかない時もある。
でも、それをどこも同じなのだと安心しようとするのはどうしてだ。全く同じ夫婦なんてどこにいるというのだ。
そう思うのに、昨日あんな風にスマホで検索した自分を思い出して、この人と何も変わらないじゃないかと苦しくなる。
ぎゅう、と膝の上で握った拳が痛かった。
「えー、うちは仲良しですよ」
ふっ、と息が出来た気がした。
その言葉を発したのは、まだ結婚して一年にもなってない向坂さんで、あっけらかんと告げる様子がひどく輝いて見えた。
「そりゃあ、向坂さんのところは新婚だからね」
新婚のうちはね、うちだってね。と先ほどと比べればまだ少しは息のしやすい会話に戻って、思わず涙が出そうなほど安堵する。
自分の意見を臆さずに言えるって、一体どれだけ世界が輝いて見えるのだろう。
うちの職場の社食は手頃な値段で味も悪くないから、多くの社員が利用している。私もその一人だ。
だけど、一緒に食べる人との会話には時折息が詰まるものがある。
「田辺さん、聞いてる?」
こくん、と今日のAランチのハンバーグをほとんど噛まずに飲み込んでしまった。
聞いてますよ、と必死に柔らかな声を装って答える。
なら、いいけど。少しでも気を悪くすると途端に面倒になる人がそう納得してくれて、ほっと息を吐いた。
落ち着いて味わうことも出来ない。家で正樹と一緒に食べた朝食が懐かしい。つい数時間前のことなのに。
「だからね、うちの旦那ったら」
うんうんと頷いて、聞いてますよアピールを繰り返す。周りの人も似たようなものだけど少しずつ違う
そうなんですねー。うちもですよ。そういうの嫌ですよね。左右から飛んでくる言葉たち。
そんな相槌、一体どこから湧いてくるのだろう。私はちっとも良い言葉が浮かんでこないから、こうしてひたすら頷くことしか出来ない。
入社したばかりの頃はまだ一人で食べたり、その時々で食べる人が違ったからよかった。
でもだんだんと食べる人が固定されていくうちに、息が詰まるようになった。元々人と一緒に食事をするのは好きじゃない。正樹は特別枠だ。
今では同じ部署の女性陣のほとんどが固まって食べるようになり、他の席に座ろうとすると、こっちよと手招きされるのだ。
アリ地獄に招かれてるみたい、なんて酷いことを思ってしまう。
楽しい人は楽しいのだろう。きっと。私が楽しめないだけで。私が悪いのだ。
でも正直に言うと、一日の中で一番苦痛な時間だ。今日みたいな会話の時は特に。
「やっぱりずっと仲良し、なんてわけにもいかないわよね」
そうよね、そうに決まってるわよね。促される返答に、期待された答えに、微かに目眩がした気がした。
結婚相手と上手くいかない愚痴を吐くのは自由だ。人間同士なのだから上手くいかない時もある。
でも、それをどこも同じなのだと安心しようとするのはどうしてだ。全く同じ夫婦なんてどこにいるというのだ。
そう思うのに、昨日あんな風にスマホで検索した自分を思い出して、この人と何も変わらないじゃないかと苦しくなる。
ぎゅう、と膝の上で握った拳が痛かった。
「えー、うちは仲良しですよ」
ふっ、と息が出来た気がした。
その言葉を発したのは、まだ結婚して一年にもなってない向坂さんで、あっけらかんと告げる様子がひどく輝いて見えた。
「そりゃあ、向坂さんのところは新婚だからね」
新婚のうちはね、うちだってね。と先ほどと比べればまだ少しは息のしやすい会話に戻って、思わず涙が出そうなほど安堵する。
自分の意見を臆さずに言えるって、一体どれだけ世界が輝いて見えるのだろう。
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