世間が何を言おうとも、私たちは夫婦です。

蒼キるり

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夫が働かない夫婦

33話

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 手紙を書いて渡すというだけの行為を、優也が『話した』ということにしてくれたことは少しばかり予想外だった。
 でも、それが優也の優しさだということは分かるから素直に嬉しかった。
 いつだって優也は、私のことを考えて言葉を選んでくれる。

 あの後、ドア越しなら少し、話すことが出来た。
 そして私がやりたいと思っていることが終わったら、またゆっくり話そうと約束した。
 眠る前に見た優也の顔はいつもと変わらなくて、そのことに喜べばいいのか悲しめばいいのかは分からなかった。
 でも、少なくとも安心は出来たから、その日はそのまま眠りについた。

 優也は優しい。だから、私はいま、動けているのだ。
 スマホを耳につけると、緊張の為か熱くなった耳にひやりした冷たさが伝わる。
 ふ、と息を吐く。大丈夫。落ち着いて。顔を見ながら話すわけではないのだから。大丈夫。
 ふいに、電話が繋がる。もしもし、と震えそうになる声で言う。


「はじめまして、こんにちは」


 電話越しに聞こえる明るく優しい声に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。
 こんにちは、と今度は幾分か落ち着いた声が出せた。
 大丈夫。きっと話せる。

 田辺さんが話したという相手の話を聞いた時、興味深いとは思っても自分が話をしたいとは正直思わなかった。
 でも、興味はあった。私に出来るとは思わなかったけど。
 だって、田辺さんはその人に会ったと言っていた。私はそれは出来ない。
 でも、その人がしようとしていることには、どうしても興味があって、私は断られることを承知でメールを送っていた。
 話すのは電話ではダメか、と。それなら、もしかしたら私でも出来るかもしれない。だって、顔は見えないから。もしかしたら、そんな思いだった。
 断られると思っていた。でも、返事は思っていたものとは違った。
 直接会ってもいいし、電話でもいい、メールでも、手紙でも、なんでもいい。
 あなたの想いを伝えてくれるなら、なんでも構わない。あなたらしい話し方で話してほしい。聞かせてほしい。あなたの、あなたたちの話を。

 その言葉にひどく、背中を押された。
 認められた気がした。許された気がした。自分が嫌いな自分を。無理に責めなくてもいいのかもしれない、と。

 だから、私はこれから話をする。
 顔も見たことのない人と。これから先、きっと会わない人と。
 顔を合わせずに、自分の心をさらけ出す。


「よろしく、お願いします」

「ええ、こちらこそ」


 私たちは間違いなく夫婦だと言い切っていたその人に。
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感想 4

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みんなの感想(4件)

ジャック
2019.02.03 ジャック

実際にも二組目の夫婦スタイル(婚姻届けを出さない)は最近だとたまに居るよね。
一組目は見たことも会った事無いけど…(汗)

解除
ジャック
2019.02.01 ジャック

恋人や夫婦よりも家族愛?そのうち夫側もみてみたいかな。

2019.02.01 蒼キるり

いつもコメントありがとうございます。夫視点は考えてなかったですね。話が一段落した後に書いてみたいな、と思いました!ありがとうございました。

解除
ジャック
2019.01.30 ジャック

ここまでの感情だと、恋愛って言うよりは大事な友達レベルかな?

解除

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