4 / 44
本編
1
しおりを挟む
薄暗く鬱蒼とした森の中を、私は不安げに歩き続ける。なぜこんな事になったのだろう。
あの方に思いなどなかったから、婚約の破棄なら謹んで受けただろう。
それに不誠実に女性達へと言い寄るあの方を、私は嫌悪こそすれ、愛してなどいなかった。
けれど、後ろ盾の為と結婚を、王家に強要されていた。だからこそ、両親も泣く泣く承諾したのだ。
私が消えねば、思い通りの方との婚姻など、出来ないと思ったのだろうか。冤罪をかけられ、着のみ着のまま、この森へと連れてこられた。
そして、両親に会うこともままならず、この魔族領の森へと捨て置かれた。
魔物に会ったら殺されてしまうのだろうか……。けれど、もしも話が通じるなら、共生出来るのではないだろうか。そんな淡い期待を胸に、私は当て所もなく歩き続けた。
どれほど歩いただろうか。私の前に小さな小屋が見えてきた。鬱蒼とした森は暗さを増し、小屋からぼんやりともれた灯りが目に入る。
ここにいるのは、魔族かもしれない。けれどこのまま野宿した所で、生き残れるのだろうか。
深呼吸をし、覚悟を決めると、そろりそろりと足を進め扉を叩いた。
「どなたかいらっしゃいませんか?」
カタリと音がして、扉が開いた。
「誰だ。君は何しにこんなところへ来たんだ?」
そう言いながら、綺麗な金髪に輝くような緑の瞳をした、眼鏡をかけた長身の男性が小屋から出て来た。
黒いスーツの様な服装が、似合っている。そんな事を考えている余裕はないけれど、相手が人の様に見えたので安心してしまったのかもしれない。
「突然とこの森に連れて来られて、捨て置かれました…。私を乗せた馬車は、すぐさまきた道を戻って行ってしまいました…。一晩だけで良いですから、泊めて頂けないでしょうか…?」
「ここに? 一晩? 君はここが怖くないのか…?」
「怖くないと言ったら、嘘になると思います…。けれど…、言葉が通じるならお互いの、なにか力になれると思うのです…」
「………人間にしては、珍しい考え方をするんだな」
「そうでしょうか」
安心したのだろうか。空腹を訴えて、鳴り出すお腹に頬が染まる。
「腹が減っているのか。食料らしい食料は持ち歩いてないんだ。この地はあまり植物が実らない…。魔獣を狩って食料にするくらいしかないんだ…」
「そうなのですか…。家の周りの土地と、キッチンをお借りしても?」
「それは構わないが、僕の話を聞いていた?」
「ではお借りしますね…。ありがとうございます」
そう言い、私は外に出る。確かに野菜などを育てるには、不向きな土地のようだ。
魔法を使い周りの土質を変えれば、多分出来る…。
あの方に思いなどなかったから、婚約の破棄なら謹んで受けただろう。
それに不誠実に女性達へと言い寄るあの方を、私は嫌悪こそすれ、愛してなどいなかった。
けれど、後ろ盾の為と結婚を、王家に強要されていた。だからこそ、両親も泣く泣く承諾したのだ。
私が消えねば、思い通りの方との婚姻など、出来ないと思ったのだろうか。冤罪をかけられ、着のみ着のまま、この森へと連れてこられた。
そして、両親に会うこともままならず、この魔族領の森へと捨て置かれた。
魔物に会ったら殺されてしまうのだろうか……。けれど、もしも話が通じるなら、共生出来るのではないだろうか。そんな淡い期待を胸に、私は当て所もなく歩き続けた。
どれほど歩いただろうか。私の前に小さな小屋が見えてきた。鬱蒼とした森は暗さを増し、小屋からぼんやりともれた灯りが目に入る。
ここにいるのは、魔族かもしれない。けれどこのまま野宿した所で、生き残れるのだろうか。
深呼吸をし、覚悟を決めると、そろりそろりと足を進め扉を叩いた。
「どなたかいらっしゃいませんか?」
カタリと音がして、扉が開いた。
「誰だ。君は何しにこんなところへ来たんだ?」
そう言いながら、綺麗な金髪に輝くような緑の瞳をした、眼鏡をかけた長身の男性が小屋から出て来た。
黒いスーツの様な服装が、似合っている。そんな事を考えている余裕はないけれど、相手が人の様に見えたので安心してしまったのかもしれない。
「突然とこの森に連れて来られて、捨て置かれました…。私を乗せた馬車は、すぐさまきた道を戻って行ってしまいました…。一晩だけで良いですから、泊めて頂けないでしょうか…?」
「ここに? 一晩? 君はここが怖くないのか…?」
「怖くないと言ったら、嘘になると思います…。けれど…、言葉が通じるならお互いの、なにか力になれると思うのです…」
「………人間にしては、珍しい考え方をするんだな」
「そうでしょうか」
安心したのだろうか。空腹を訴えて、鳴り出すお腹に頬が染まる。
「腹が減っているのか。食料らしい食料は持ち歩いてないんだ。この地はあまり植物が実らない…。魔獣を狩って食料にするくらいしかないんだ…」
「そうなのですか…。家の周りの土地と、キッチンをお借りしても?」
「それは構わないが、僕の話を聞いていた?」
「ではお借りしますね…。ありがとうございます」
そう言い、私は外に出る。確かに野菜などを育てるには、不向きな土地のようだ。
魔法を使い周りの土質を変えれば、多分出来る…。
0
あなたにおすすめの小説
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる