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本編

34(アレク視点)

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 リルの赤みが引いた頃、俺達は執務室へと戻った。仕事もたくさんあるっていうのに、余計な事を…。

 だけど、リルと思い合っていることがわかって幸せな時間だった。


 執務室へと帰ると、ひらひらと手をふる叔母の姿が目に入る。

「あたしはミリ・スレイブ。アレクの叔父の妻だから、叔母に当たるのかな」

 その後、ニヤニヤと俺を見ているのは気の所為ではないはず。

「叔母さんのせいで余計な誤解を受けただろ…」

「ふふっ。嫌だなぁ、いいきっかけになったの間違いじゃないかなぁ」

 そういうと、叔母さんは
 不敵な笑みを浮かべる。

 俺は椅子に座り、リルを手招きし、膝の上に座らせる。ワタワタと焦るリルが可愛い。

 ロイさんやリリアさんの前だけど、リルが可愛いから、つい膝に乗せたり抱きしめたりと、スキンシップをしてしまう。

 ロイさんには苦笑していたが、「婚姻まで清い関係でいてくださいね」と、目が笑ってないだろ…な顔で言われるし、リリアさんには「良かったわね。好きだったのでしょう? アレク様の事」とリルがかわれている。

「リ~ル! 本当は俺の事を嫌なの? 好きだって言ってくれたのは嘘なの? それなら、諦めるけど……」

 困った顔のリルにそういった。諦める気なんてない。リルの気持ちがついてきていないなら、その気になってくれるまでアピールすればいいだけだ。

「そんなことはないのです。ただ…、思いを向けられるのになれていないので…手加減して欲しいというか……」

 元婚約者のせいで、自信がないと言う事なのだろうか…。

 ロイさんやリリアさんも『あの馬鹿相手じゃ仕方ない』とでも言いたげに歪んでいる。

「婚約者になったら、もう少し甘えてくれるかな? 前のバカな婚約者のようなことはしない! リル以外に好かれても、ただの迷惑だからね。不特定多数に好かれて嬉しい気持ちが理解できない…。どう考えても面倒だろう……?」

「生きている事が知られたら、王国に目をつけられてしまうかもしれませんよ……?」

 リルの瞳は不安気に揺れている。

「構わないよ」

「また精霊様の力欲しさに、あの方が言い寄ってくるかもしれません……」

 ここまでスレイブ領の事を発展させておいて、今更だろ。リルが居ない生活に俺もセイルもフィールだって、ロイさん達や領民だって戻れない。

「自分でやらかした事を都合よく相手に無かったことにしろって? 本当にそんな事をやらかすなら屑だな。話なんて聞く価値もない。絶対守る」

「精霊様の感謝を忘れたら、今までの気持ちでいられないかもしれませんよ?」

 精霊の加護を受けていても、無意識にその力に奢らず、人のために使うリル。そんな彼女だから惹かれたんだと思う。
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