【本編完結】貴方のそばにずっと、いられたらのならばいいのに…。

皇ひびき

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本編

8(レイス視点)

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 今日はレイが僕らの為に朝食を作ってくれると言う。どうしてだろう、食堂へと向かう足取が軽い。

「今朝はレイちゃんが作ってくれると聞いたのだけど…」

 昨日下準備の後に報告をしたら。瞳を輝かせた父上と母上がいた。
 僕も父上も、母上もすごくワクワクしている。

 料理が楽しみなのもあるけれど、レイ自身からやりたい事を言われたからかもしれない。

 食堂に着くとレイもこちらに来て席へとついた。

「楽しみだね~」

 母が嬉しそうに言う。少し不安そうなレイに、「ありがとう、嬉しいよ」そう言って、笑顔で頭を撫でるとどうしていいのかわからないといった体で顔を真っ赤にして、俯向いてしまう。

 なんだろう…。この可愛い生き物は……。義妹には感じた事のない感情が湧き上がりそうになる…。

「出来るのは家庭の延長だと思いますが…」

 そう言う彼女の作った料理が、テーブルに並べられていく。いつもの様に食べきれない程の料理が所狭しと並んでいるわけではない。

 グラスに注がれたオレンジ色の綺麗な液体。それを口に含むと、爽やかな柑橘の味と香り、そしてつぶつぶとした舌触りがなんとも楽しい。
 僕はチーズの乗っているパンを切り分けながら、彼女のおすすめだという、ハムと目玉焼きを少し取り、黄色く染まったパンを口へと運ぶ。卵の柔らかい味わい、感じたことのないパンの柔らかさに、口に頬張った瞬間、瞳を見開き驚きを隠せない。

「美味しいよ、ありがとう」

 そう伝えると、はにかむ様に笑うレイが愛らしかった。

 もう片方の蜂蜜をかけて食べてみるとお菓子の様に甘く香る。

「全然味が違うんだね」

 父上がそう言うと、不安そうに、お口に合いますか? そういう彼女が愛らしくて仕方ない。何が違うと言うのだろう。見た目は変わりなくレイシアなのに、仕草が違う。恥ずかしそうに僕達をみる姿も、遠慮がちに歩み寄ろうとする姿も、力無い小動物みたいで庇護欲が刺激されるのだろうか。

 赤い野菜たっぷりのスープに口をつけると、トマトの爽やかな酸味と、野菜から滲み出る柔らかい甘み。ハムが含む塩分や肉の味が滲み出ていて満足感を得られる。薬でしか取ったことのないハーブの香りが口いっぱいに広がってすごく美味しいと思った。

 こんな料理が作れるなら確かに食事に物足りなさを感じても仕方ない。

 サラダをフォークに差し込み、意を決して口にする。生の野菜はあまり味がないのと青臭く感じてしまって得意ではなかった。けれど、レイが作ってくれたのだから残さず食べなければ…、そう思い口にすると、シャキシャキとした食感としょっぱいような酸っぱいような不思議な液体がかかっているおかげか、全部美味しく食べられた。というか、まだあるのならおかわりをお願いしていたかも知れない。

 今まで美味しいと思っていた料理は、なんと単調な味付けだったのだろう……。

 公爵家の食事がこれを期に変わる気がした。
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