【本編完結】貴方のそばにずっと、いられたらのならばいいのに…。

皇ひびき

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本編

28

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 パンも捏ねて醗酵し、またこねて、二次発酵して焼いた。

 フライパンで、良い香りを漂わせているパンチェッタをお皿に乗せ、みんな仲良く実食…。

「ん、自分で作っておいてなんだけど、美味しい!」

「噛む度、ハーブの香りと程よい塩分が滲み出て、すごく美味しいよレイ!」

「すごく美味しいわ! 料理人の皆には悪いけど、レイちゃんの料理を食べた後だと、物足りないわね…。年下の子に師事するのは嫌かもしれないけど、色々レイちゃんから学んでくれると嬉しいわ」 

 お母様がそう言うと、

「レイ様が生み出す料理は、素材の味が生き、かと言って単調でもなく、複雑で繊細な味わい。私達もレイ様より色々教わりたいです! 厨房への立ち入りの許可をありがとうございます!」

「レイ様のおかげでどうしたら、美味しくなるのか…。その思考に広がりが持てました」

 料理長のラフェルさんと、料理人のファルトさんが言う。コクコクと他の二人が頷く。

「このパンチェッタはただ焼いても美味しいし、スープに入れてもコクが出るし、おすすめです!」

 野菜たっぷりでポトフなんかも悪くないな~。毎回ラフェルさん達に教えてるから、作る手間はなくなっていくし。

 ポークソテーに、じゃがいもや人参、青ものを茹でて、添えるのも悪くないかも。

 そんな思考の脱線をしていたら、「焼きたてのパンも頂いていいかしら…」そんな声が聞こえて、皆に渡す。

「あの人にも後で渡してあげたら喜ぶわ。だって他ならぬレイちゃんの手作りだもの」

 そういいながら、小さく千切って、口へと運ぶ。

「柔かいわ!」

「バターが効いていて、美味しいよ。これは父上に食べさせたら、また起業案件になりかねないね。はは…、すごい。」

「そうなんです。しっとりしてふかふかなんです。あちらのパンは…」

 少し前の世界での最後の瞬間と、レイシアさんとしての最後の瞬間を思い、口籠る。

 それを察したのか、お母様が言う。

「きっとレイシアはレイちゃんの中でおやすみしてるの。だから、罪悪感なんて持たないで」

 優しく淋しそうに、そうお母様は言ってくれた。私の前では明るく接してくれるけど、私は彼らの娘や妹を奪った存在なんだ。笑ってたら駄目なんだよ。

「レイ? 顔色が悪いよ…、大丈夫……?」

「はい…、部屋に帰って休ませて…、もらいますね」


 それ以降、私は公爵家の皆さんの顔を見るのが怖くて、部屋に籠もるようになった。

 食事はティーファさんに申し訳ないけど運んでもらい、最低限ティーファさんとは接するけど、他の皆さんには申し訳なくて苦しくて部屋に引き籠もるようになった。

 迷惑をこれ以上かけない様にと、頑張ろうとしてたけど。みんなが優しく受け入れてくれてるんだと、勘違いしてたのかもしれない…。優しいから責めないだけなのかもしれないのに。

 私の心はそうして閉じていった。
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