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本編

29(レイス視点)

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 レイが部屋を出たと、ティーファからの伝言を貰い部屋出ると厨房に向かうと、レイは父上と何か会話し別れたあとも何か考えていた。ふとした悪戯心で、後ろから忍び寄ると声をかける。

「考え事?」

 僕はレイの驚いた顔が可愛く見えて笑って言った。

「厨房にまたいくんでしょう? 僕も一緒に行くよ」

 行こう? レイの手を掬い取り、手を繋いで歩く。レイシアにもあまりした事のない行為だ。

 わたわたとしたレイに、気がついて「いや?」と聞くと、顔を真っ赤にして、そのまま大人しくついてくる。

「あら、厨房に行くの?」

 意味あり気に僕達の繋いだ手を見て微笑みながら言う。

「は…、はい! レモンで酵母を作りたいので! 日数がかかるから、今のうちにやっとこうかなって思いまして…」

「そういえば、時間がかかるのよね…。手伝える事がありそうだわ。仲のいい二人には邪魔かしら」

 母上の勢いに負ける様にして、レイは同行者を増やした。

「そんなこと言うと、レイが照れちゃうでしょう!」

「そういうレイスも心做しか顔が赤いわ~、ふふっ」

「母上~…」

 つい恨みがましい声で、僕は訴えてしまう。

 三人で、普段足を運ぶ事のない母上の登場に、料理長達はただただ困惑しているみたいだった。

 レイは、手を洗いレモンの皮を剥いて、白い薄皮を丁寧に剥がしていく。

 包丁でレモンをスライスすると、蜂蜜をもらい蜂蜜レモンを作る要領で、消毒をしてもらった少し大きなな瓶に詰めていく。

 またレモンの皮も砂糖につけて、レモンピールなる物を作るらしい。

「これで5日程おいて、上下にひっくり返してたらら、酵母が出来ると思います。せっかくお母様に来ていただいたので、パンチェッタの時間を5日程進めて頂くことは出来ますか?」

「良いわよ、5日くらいね」

 そういうとパンチェッタに手をかざし、何やら呪文を唱える。

 パッと見の変化はよくわからなかったけど、熟成させてなくても美味しいので、味見分だけ水で洗い流し、一口サイズにして、フライパンで焼く。

「脂身から出た油を使って目玉焼きとかも美味しいんですよ!」

「食べてみたいわ!」

「うん! 今度作って欲しいな」

 僕達がねだると、困ったように約束してくれる彼女が愛おしい。母上は気をよくしたらしく、酵母も時間をすすめるかと確認を始めた。

「ハチミツレモン? とか言うのの方は、時間進めなくていいのかしら?」

 遠慮をしていたらしいレイは、甘える事にしたらしい。

「大体5日くらいで、シュワシュワとしだすはずなんですが…。お願い出来ますか?」

 母上が時間を進めると、ハチミツレモンだった代物が、明らかに泡立ち始める。

「おぉ! すごい!」

「役に立ったみたいで良かったわ。今日は時間があるから、レイちゃんの作業を見てるわ。また何かあったら言ってね」

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