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新たなる一歩
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しおりを挟む自転車をカラカラと押しながら、家へと歩を進める鳴と碧。
家へとついた鳴が迷わず口にする一言。
「ただいま~」
まだ泣きたい気持ちはあるのだろうけれど、元気なふりをしているのが少し痛々しい。
そう感じながらも碧も気がつかないふりをする。
「ただいまって?」
よく耳にするけれど、意味合いはよくわかっていない碧が問う。
痛々しいと感じてしまう自身の感情を、誤魔化すためにもちょうど良かったからかもしれない。
「う~ん… 気にしたことなかったけど、聞き慣れないと不思議に感じちゃうんだね…」
そう淡く笑うと、考え込む鳴。
「今帰ったよとか、ただいま帰りましたとか、色々言い方はあると思うけど…。 帰りましたよの挨拶みたいなものかなぁ…」
「そうなのか?」
不思議そうに言う碧。
「そうだね。 無言で帰ってきたら家族にもわかんないし、帰りを知らせるためもあるのかな…。 あんまり深く考えないで言ってたから、自信あまりないけどそういう事じゃないかな…」
「そうなのか…。 じゃあ俺も言ったほうが良いのか? ただいま……」
驚いたみたいに目を丸くしていた鳴が、笑っていう。
「おかえりなさい。 ふふっ、一緒に帰って来たのに不思議だけど、帰ってきた人に返す挨拶だよ。 もし良かったら、出かけて帰ってきた時に、言ってくれたら私が帰ったとき、大抵お母さんお仕事で、一人だったし嬉しいかも」
なんて事を言われ、碧も返す。
「おかえり、鳴。 これでいいのかよ」
……と、頬を少し赤らめ顔をそらしながら言う碧に、思わず笑いがこぼれた。
「二人共おかえりなさい。 碧くんは迷わなかった?」
パタパタとフローリングの上を、スリッパで歩く音をさせながら、千聖が笑顔で迎えてくれる。
「お母さん、ただいま」
「千聖さん、ただいま…。 えと、迷わず一応鳴に会えました…。 俺が自転車に興味持ったから、鳴が公園で練習させてくれてたから、帰り遅くなりました。 心配かけてたら、すんません…」
千聖は、鳴と碧の顔色を見る様に、二人に視線を送った。
「別に迷ってないなら良かったわ。 二人共ご飯作るの手伝ってくれる?」
「うん!」
元気よく鳴が言うけれど、料理自体したことがないからか、自信のない碧。
「やった事ないんで、教えてもらえるなら…、興味はあります」
手伝うの宣言か、役立たずだとの自己申告とも取れない発言をした。
「でも、興味はあるんだ…。 そういえば……、ウクレレも弾き方知らないのにいじってたね。 好奇心旺盛な感じが動物的で可愛いかも…」
鳴に可愛いとからかわれると、なんとなく落ち着かない碧は、「とっとと、台所行くんだろっ!」と、語尾を荒げる様にそう言った。
「じゃあ、ご飯みんなで作ろうか!」
そう言って笑う鳴の言葉に、キッチンへと足を運ぶ3人だった。
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