新たな世界へ導かれた俺と、迎え入れてくれたきみ。

皇ひびき

文字の大きさ
29 / 38
歩み寄る闇

4

しおりを挟む

 翌日学校に向かっためいが、いつも通り、前から3列目にある自身の座席に座る。

『今日も何事もなく、乗り切れるといいな。 お兄さんまた迎えに来てくれたら、すごく嬉しいのにな…』

 鳴はそんな事を、ほっこりとした気持ちで考える。
 不意に斜め左側の通路に人影が見える。綻んでいた顔に、緊張が走る。
 また何やら、近づいてくる彼らに、背筋に悪寒が走った。

『また蹴られるのかな。ここにいる存在は嫌い…。 でもこんな行動したら嫌われるだろう。 そんな反面教師だと思えば、嫌いだけど苛める人も、文句も言えない弱い私も存在する意味がある…』

 恐らく、この時の鳴は諦めていた。 理由もわからない理不尽な行為も、何もかもに対して…。

 けれど『同じ土俵には降りない』それだけは決めていた。

 想像したみたいに、座っている机の前面から並んだ男子が前側の左右の席に手を付けて蹴り込んでくる。

 休み時間の間、飽きもせず順番に、代わる代わる蹴って来る。

 少し『私が何をしたというの…』も仄暗い感情も芽生えてくる。

 けれど大怪我をしないのが、一番だと耐える。

 強く蹴り込まれて、席ごと後ろに倒れそうになって、後ろの席へと反射的に、手をついて体勢を戻す。

 それが気にいらなかったのだろう。

 鳴の後ろの座席で体制を直せないように、もっと後ろへと下げていく。

 絶望的な気持ちでその光景を見守る鳴。

 本人は気がついてなかったのだろうが、恐らくその場の空気に鳴自身も飲まれていたのかもしれない。

 容赦なく次の攻撃がやってくる。 次も机が後ろへと倒れ込む程強く衝撃がやってきた。

『なんとか立て直さないと……』

 そう思った鳴は、反射的に腕を後へと伸ばすも、下げられた席には届かなかった。

 首の後を下げた机の端に、強く打ち付けた鳴は、そのまま意識を失った。

 真っ青な顔色で微動だにしなくなった鳴。 自分達が命を奪いかねない事に初めて気がついた男子達。

 ざわつく生徒に、何やら異変を感じたのか、理科を担当している教師が、教室へと顔を出すと、真っ青な顔色で倒れたままの鳴を目にする。

「何があったのかあとで聞くわ、今すぐ救急車を呼びましょう」

 そう言って、たまたまボケットに入れていたのか、スマホの
操作をする。

「でも……」

 このままでは僕たちが……、そう口にしたかったであろう男子は、途中で口を噤む。


 私達は関係ないよね
と言う態度をしていた女子達も、教室に残される。

 動かなくなった鳴が、救急車で運ばれて行くのを、ただただ見守る他なかった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...