君と一緒に。

皇ひびき

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本編

一人じゃなくて

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 何故だろうか。私がここにいる理由。拾った経緯そんな話を無防備にもしてしまった。

『小娘一人では不安だろう? しばらくパンとやらの礼について行ってやろう』

 正直世間知らずな自覚はある。見知らぬ生き物でも、慣れるまでの間だけでも、ついてきてくれるなら嬉しい。

「私はローゼ。さっき話したみたいに家名は捨てたわ」

『我は黒銀のドラゴン、レオンだ』

「レオンって読んでも?」
 
『では、我もローゼと呼ぼう。しかし、このままの姿は目立つか…』

 小さな手を見やりながらレオンは言ったと思うとボフリと軽い音がし、煙に包まれた。

 その後姿を現したのは、20歳程の青年だろうか。体と同じような黒みの強い銀色の髪、深緑を映したような深い緑の瞳の男性。

 白いワイシャツ、ダークグレーのカマーベスト、黒のノータックのデザインでスラリと見えるトラウザーズ姿がよく似合う。

「逆に女の人に目立ちそうですよ?」

「そうか? まぁ、とりあえずここからは離れた方がいいんだろう? だったら、詳しい話は場所を変えてからにしよう。持ってく荷物忘れるな」

 そういうとレオンは、外へと出ていく。

 青年になると、テレパスの様な会話ではなくなるんだなぁ…、そんなどうでもいい感想を抱きながら、わたわたとレオンの後を追った。

 レオンが立ち止まった場所に着くと、木々がなく拓けた所だった。

「ここでいいか…」

 そう言うと、レオンはまたもや、ポフリと煙をあげ、今度は大きな黒いドラゴンに姿を変えた。

『これが我の本来の姿だ…』

「ドラゴン? の姿の時はテレパシーなんだね」

『ローゼよ…、最初に抱く感想がそれなのか…?』

「え? 駄目だったかしら。うーん……、大きくてきれいな黒い体ね」

『震えるとか怯えるとか、反応があるだろう…。もういい。背中に乗れ。それから、ローゼも纏めて姿隠しの魔法を施す…』

「ありがとう! お邪魔します」

 ヨジヨジと登ろうとするも、ツルツルしたウロコから滑ってうまく登れない。

「もう少し待ってね……」

『見ていられない……』

 そういうとレオンは、ワシっと私の体を掴んで背中に乗せる。

『しっかり掴まれ』

「ふぇ? どこに?」

『もういい。バインド』

 レオンかそう言うと、彼の背中に固定されたみたいだった。

 レオンが続けて『クリア』というと、私とレオンの体が半透明になった。

「これで術の効果外の者には見えないはずだ。行くぞ」

 そう言うと、レオンは大きな翼を広げて、大空へと躍り出た。

『我は金は集めていないので、また旨いものをくわせてくれ』

「はあぁ~?」

 そんな会話をしながら、透明な塊は、空の彼方へと消えていった。
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