5 / 33
本編
4(シルフィ視点)
しおりを挟む
僕は見知らぬ部屋で目を覚ます。
森の中にいたはずなのに…、血を流しすぎて命を落とすかもしれないと覚悟もしていたのに。
体に巻かれた清潔な包帯と、肌けた洋服。誰かが手当をしてくれた? 血をわけた兄弟にすら、邪魔だと消されそうな僕を?
そばにあったテーブルには、僕が身につけていた洋服が綺麗に洗われ置かれていた。
寒くないと思ったら、手当をしてくれた存在は、タオルケットをかけてくれたらしい。
「ここから逃げ出すにも洋服は着ないとな…」
そう独りごちると、血まみれだったはずのシャツやズボンを身につける。
今まで体験したことのない、フワリとした手触りと香りに思わず感動してしまう。
「何をどうすれば、こんな風に洗い上がるのか…」
そんな事を考え込んでいると、優しい乳の香りが漂ってきて、控えめとはいえ腹が鳴る。
香りに呼ばれるように、厨房の様な場所に足を踏み入れると、見知らぬ女性が何やら食事を取っていた。
ふわふわと柔らかそうな金色をたたえた、腰まで伸ばした髪に、優しそうな緑の瞳。美味しそうに何かを食していた。
ふと僕に気がついた様に視線を上げ彼女は口を開いた。
「たまたま採った中に傷に効くらしい薬草があったから作ってみたの。食べる?」
少し戸惑いながらも僕はうなずいた。
変なものを盛られる可能性はあるけれど、手当した身体を見て僕は、思い直した。
「何故助けた?」
「自殺願望でもあった? だったら助けてごめんなさいなのかな…」
「すまない。そういう意味ではなかった……、気配消しを使ったはずなのに何故見つけられたのかと不思議で…」
まだじくりと痛む傷を抑えながらも僕は言う。
少し考え込んだ様子の後に、彼女は口を開いた。
「私が特殊で見えてしまったみたい。確かに血の臭いもしなかったし、近くに行くまでわからなかったわ」
一旦、言葉を切ってから、また言葉を続ける彼女。
「ホウ草っていう薬草で、お薬兼食事を作ったから食べてみて」
「ホウ草!?」
たいした事も無げに彼女はいうけれど、レア中のレアな薬草だ。身分を隠して冒険者として生きているとはいえ、元王族であった僕でも口にした事などなかった。
今回も王位継承の邪魔だと、刺客を送られてしまった。何度となく命を狙われているけれど、今回は用心で持ち歩いていた魔導具のおかげで、紙一重で助かっただけだった。
王位…、そんなものには興味がないのに…。兄上はどうしたらそれを信じてくれるのだろうか。
暗い気持ちになり、少しうつむくと、彼女に勘違いをさせたみたいだ。
「嫌いだった? 薬だから我慢してね。ついでくるわ」
そう言うと有無を言わさずに彼女は立ち上がり、美味しそうな香りのする椀を僕に手渡して来た。
森の中にいたはずなのに…、血を流しすぎて命を落とすかもしれないと覚悟もしていたのに。
体に巻かれた清潔な包帯と、肌けた洋服。誰かが手当をしてくれた? 血をわけた兄弟にすら、邪魔だと消されそうな僕を?
そばにあったテーブルには、僕が身につけていた洋服が綺麗に洗われ置かれていた。
寒くないと思ったら、手当をしてくれた存在は、タオルケットをかけてくれたらしい。
「ここから逃げ出すにも洋服は着ないとな…」
そう独りごちると、血まみれだったはずのシャツやズボンを身につける。
今まで体験したことのない、フワリとした手触りと香りに思わず感動してしまう。
「何をどうすれば、こんな風に洗い上がるのか…」
そんな事を考え込んでいると、優しい乳の香りが漂ってきて、控えめとはいえ腹が鳴る。
香りに呼ばれるように、厨房の様な場所に足を踏み入れると、見知らぬ女性が何やら食事を取っていた。
ふわふわと柔らかそうな金色をたたえた、腰まで伸ばした髪に、優しそうな緑の瞳。美味しそうに何かを食していた。
ふと僕に気がついた様に視線を上げ彼女は口を開いた。
「たまたま採った中に傷に効くらしい薬草があったから作ってみたの。食べる?」
少し戸惑いながらも僕はうなずいた。
変なものを盛られる可能性はあるけれど、手当した身体を見て僕は、思い直した。
「何故助けた?」
「自殺願望でもあった? だったら助けてごめんなさいなのかな…」
「すまない。そういう意味ではなかった……、気配消しを使ったはずなのに何故見つけられたのかと不思議で…」
まだじくりと痛む傷を抑えながらも僕は言う。
少し考え込んだ様子の後に、彼女は口を開いた。
「私が特殊で見えてしまったみたい。確かに血の臭いもしなかったし、近くに行くまでわからなかったわ」
一旦、言葉を切ってから、また言葉を続ける彼女。
「ホウ草っていう薬草で、お薬兼食事を作ったから食べてみて」
「ホウ草!?」
たいした事も無げに彼女はいうけれど、レア中のレアな薬草だ。身分を隠して冒険者として生きているとはいえ、元王族であった僕でも口にした事などなかった。
今回も王位継承の邪魔だと、刺客を送られてしまった。何度となく命を狙われているけれど、今回は用心で持ち歩いていた魔導具のおかげで、紙一重で助かっただけだった。
王位…、そんなものには興味がないのに…。兄上はどうしたらそれを信じてくれるのだろうか。
暗い気持ちになり、少しうつむくと、彼女に勘違いをさせたみたいだ。
「嫌いだった? 薬だから我慢してね。ついでくるわ」
そう言うと有無を言わさずに彼女は立ち上がり、美味しそうな香りのする椀を僕に手渡して来た。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる