21 / 33
番外編
失われた記憶
しおりを挟む
「うぅ…、はっ…」
今日も悪夢で目を覚ます。夜中に頻繁に見る夢が段々と現実のものだと理解していく私がいる。
キャビンは以前の私の住んでいた部屋に酷似している。召喚された先で目覚めた力、全知を利用するだけ利用して、裏切った人々が恐ろしくて仕方ない。
こんな力欲しくなかったと願っていたからだろうか。記憶を失いキャビンへと逃げ込んだ日から、ランクが10とカンストしていた能力に制限がかかり、ランク1となっていた。
最初は夢だと思ったのに現実だったと思い知らせるように、夢は続く。
周りが私を裏切っているのだと、スキルは私に訴える。けれど、優しくしてくれた…、迎えてくれた人を疑うのがものすごく薄情に思えて、自分自身を騙していた。
「裏切られてなどいない、私の勘違いに違いない」と。
私は賢者として一部で持て囃され、アイデアを搾取され、金のたまごを生むアヒルにでも見えたのだろうか。気がつけば、道具のように利用されている事を偶然聞いてしまった。
全知のスキルが告げてくれていたのに。私は信じようとしなかった。どうしようもない、クズの様な人々を信じようとして、警告に蓋をした。
こんなスキルなんか欲しくなかった。失敗しながらも、笑い合えたり、励ましあえたりそんな関係を願ってただけだった。
夢を見ると辛くて苦しくて、外の空気を吸いに行く振りをして、声を殺して泣く日も多くなってきた。もし戻ってきた記憶をシルと雨夏に話したら受け入れてくれるだろうか。
迷惑をかけるのではないかと思うと、言い出せない。
そういう相手ではないとわかっているのに、踏み出す勇気が出ない。
雨夏の話はまだ深く聞いた事はないけれど、シルも言いたくなかった話を打ち明けてくれた。
身内に狙われている事なんて、話したくなかったはずだ。でも、私達を信じて話してくれたんだと思う。
きっと私も踏み出さなくちゃいけない。
記憶を完全に取り戻した日の朝、シルと雨夏に話があると切り出した。
私の口が重いのも、気にせず気長に「時間はたっぷりあるよ」そう笑って待ってくれて、私は少しずつ話していった。
記憶を取り戻した事。倉星志帆子という人間だった事。異世界召喚されて賢者として、道具の様に利用されてた事。外の世界で見つかると、迷惑をかけてしまうかもしれない事。
言葉は足りなかったかもしれないけど彼らに話した。
「ただでさえ知らない土地で、辛かったね…」
背中を撫でるように、宥めるようにシルは優しくポンポンとたたく。
雨夏は膝に乗り、ぬくもりを精一杯伝えてくれる。
『シフォがいたから、ワタシは救われたよ。何があってもここにいるよ? 家族って言ってくれたよね』
そう言ってスカートに顔を擦付ける。
まだ私はそんなに強くない。けれど、彼らを信じようとしているのに、裏切られる事を恐れる自分の方が怖かったし嫌いだった。
だから怖くても、一歩踏み出す私でいたいと強く思った。
今日も悪夢で目を覚ます。夜中に頻繁に見る夢が段々と現実のものだと理解していく私がいる。
キャビンは以前の私の住んでいた部屋に酷似している。召喚された先で目覚めた力、全知を利用するだけ利用して、裏切った人々が恐ろしくて仕方ない。
こんな力欲しくなかったと願っていたからだろうか。記憶を失いキャビンへと逃げ込んだ日から、ランクが10とカンストしていた能力に制限がかかり、ランク1となっていた。
最初は夢だと思ったのに現実だったと思い知らせるように、夢は続く。
周りが私を裏切っているのだと、スキルは私に訴える。けれど、優しくしてくれた…、迎えてくれた人を疑うのがものすごく薄情に思えて、自分自身を騙していた。
「裏切られてなどいない、私の勘違いに違いない」と。
私は賢者として一部で持て囃され、アイデアを搾取され、金のたまごを生むアヒルにでも見えたのだろうか。気がつけば、道具のように利用されている事を偶然聞いてしまった。
全知のスキルが告げてくれていたのに。私は信じようとしなかった。どうしようもない、クズの様な人々を信じようとして、警告に蓋をした。
こんなスキルなんか欲しくなかった。失敗しながらも、笑い合えたり、励ましあえたりそんな関係を願ってただけだった。
夢を見ると辛くて苦しくて、外の空気を吸いに行く振りをして、声を殺して泣く日も多くなってきた。もし戻ってきた記憶をシルと雨夏に話したら受け入れてくれるだろうか。
迷惑をかけるのではないかと思うと、言い出せない。
そういう相手ではないとわかっているのに、踏み出す勇気が出ない。
雨夏の話はまだ深く聞いた事はないけれど、シルも言いたくなかった話を打ち明けてくれた。
身内に狙われている事なんて、話したくなかったはずだ。でも、私達を信じて話してくれたんだと思う。
きっと私も踏み出さなくちゃいけない。
記憶を完全に取り戻した日の朝、シルと雨夏に話があると切り出した。
私の口が重いのも、気にせず気長に「時間はたっぷりあるよ」そう笑って待ってくれて、私は少しずつ話していった。
記憶を取り戻した事。倉星志帆子という人間だった事。異世界召喚されて賢者として、道具の様に利用されてた事。外の世界で見つかると、迷惑をかけてしまうかもしれない事。
言葉は足りなかったかもしれないけど彼らに話した。
「ただでさえ知らない土地で、辛かったね…」
背中を撫でるように、宥めるようにシルは優しくポンポンとたたく。
雨夏は膝に乗り、ぬくもりを精一杯伝えてくれる。
『シフォがいたから、ワタシは救われたよ。何があってもここにいるよ? 家族って言ってくれたよね』
そう言ってスカートに顔を擦付ける。
まだ私はそんなに強くない。けれど、彼らを信じようとしているのに、裏切られる事を恐れる自分の方が怖かったし嫌いだった。
だから怖くても、一歩踏み出す私でいたいと強く思った。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる