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番外編
未来へ
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秋に出来たお米も、醸造してお酒になった。出来ることも増えてきた。
そして雪の季節にブロッコリーや、白菜、長ねぎといった野菜を育てながら、生簀の魚に餌をやる。
冬には作れる作物が少ないので、牧草をがいっぱい育てて保管する。
そうして、冬の寒さに凍えながらも、家族の温かさに包まれ、春を迎えた。
「お米のお酒もできたし、お花見したいね~」
牧場内でそんな場所あったかな……? 思いを馳せると牧場内でも桜の咲く木はあった。
「またご飯作って、お花見を楽しもうか!」
「シフォは僕らが知らないことばっかりやりたがるね。何すればいい?」
九本の尻尾をゆらゆらと揺らしながら、雨夏も指示待ちのようだ。
「みんなで春っぽいお弁当作って、桜の木の下で食べようよ!」
キャビンでお重を見た記憶があったので、一人で取りに行く。シルにはお酒を取りに行ってもらい、雨夏にはロッジで桜餅や草餅といった材料さえ揃えばできるキッチンでスイーツをお願いする。
私はお重を探し出し、洗ってから水を切る。
ロッジから持ってきていた筍ご飯でおにぎりを作る。冷凍庫にしまっておいた柚子の皮のスライス、菜の花を軽く湯がいたものを、ボウルに入れておいた白米に混ぜ合わせ、酢や砂糖塩などを入れて味をつけた。これらを豆腐を作った際に、用意しておいた油揚げを甘辛く煮たものを袋に見立てて入れる。
お重に筍ご飯で作ったおにぎり、いなり寿司、雨夏の好きな唐揚げ、焼いたウインナーを詰めていく。
お弁当には卵焼きは欠かせない。そうして甘さ控えめでマヨネーズとパセリを入れ、旨味を加えた卵焼きを焼いていく。
あとはお酒用にグラスを3つカバンに入れ、雨夏のいるロッジへと合流する。
スイーツもお重に詰め、シルが戻ってきたところで、桜に見える木があった場所にシートを敷く。
お弁当を広げると、シルは黄色と緑が際立つ卵焼き、雨夏は狐らしくというべきか、菜の花のいなり寿司に手を伸ばす。
私は久しぶりに口にするウインナーを味わって食べる。
「あ…、お米のお酒は初出しだね。お口にあうといいけど」
そう言いながら、グラスにかつて日本酒と呼んでいたものをつぎ、シルと雨夏に振る舞う。
美味しそうに目を細め味わう二人に、安心の為か笑みが浮かんだ。
きっと私達は平和なまやかしであるこの世界に居続けることは出来ない。幸せだけど、いつか過去の柵に向き合わないと、本来の私や彼らと違うものになってしまうだろう。
いつまで続くのかわからないけど、きっと今はみんな過去と戦うための力をためている期間だと思う。私にとっても。
このいつ終わるかはわからない、まやかしのようなこの世界で、平和な時間を、他の人からしたらたわいないかもしれない笑顔を。
現実へ向かう為の力にしたい。いつか大きくはばたく為に。現実逃避にしか見えないかもしれないけれど、私達は未来へ向かって生きている。
そして雪の季節にブロッコリーや、白菜、長ねぎといった野菜を育てながら、生簀の魚に餌をやる。
冬には作れる作物が少ないので、牧草をがいっぱい育てて保管する。
そうして、冬の寒さに凍えながらも、家族の温かさに包まれ、春を迎えた。
「お米のお酒もできたし、お花見したいね~」
牧場内でそんな場所あったかな……? 思いを馳せると牧場内でも桜の咲く木はあった。
「またご飯作って、お花見を楽しもうか!」
「シフォは僕らが知らないことばっかりやりたがるね。何すればいい?」
九本の尻尾をゆらゆらと揺らしながら、雨夏も指示待ちのようだ。
「みんなで春っぽいお弁当作って、桜の木の下で食べようよ!」
キャビンでお重を見た記憶があったので、一人で取りに行く。シルにはお酒を取りに行ってもらい、雨夏にはロッジで桜餅や草餅といった材料さえ揃えばできるキッチンでスイーツをお願いする。
私はお重を探し出し、洗ってから水を切る。
ロッジから持ってきていた筍ご飯でおにぎりを作る。冷凍庫にしまっておいた柚子の皮のスライス、菜の花を軽く湯がいたものを、ボウルに入れておいた白米に混ぜ合わせ、酢や砂糖塩などを入れて味をつけた。これらを豆腐を作った際に、用意しておいた油揚げを甘辛く煮たものを袋に見立てて入れる。
お重に筍ご飯で作ったおにぎり、いなり寿司、雨夏の好きな唐揚げ、焼いたウインナーを詰めていく。
お弁当には卵焼きは欠かせない。そうして甘さ控えめでマヨネーズとパセリを入れ、旨味を加えた卵焼きを焼いていく。
あとはお酒用にグラスを3つカバンに入れ、雨夏のいるロッジへと合流する。
スイーツもお重に詰め、シルが戻ってきたところで、桜に見える木があった場所にシートを敷く。
お弁当を広げると、シルは黄色と緑が際立つ卵焼き、雨夏は狐らしくというべきか、菜の花のいなり寿司に手を伸ばす。
私は久しぶりに口にするウインナーを味わって食べる。
「あ…、お米のお酒は初出しだね。お口にあうといいけど」
そう言いながら、グラスにかつて日本酒と呼んでいたものをつぎ、シルと雨夏に振る舞う。
美味しそうに目を細め味わう二人に、安心の為か笑みが浮かんだ。
きっと私達は平和なまやかしであるこの世界に居続けることは出来ない。幸せだけど、いつか過去の柵に向き合わないと、本来の私や彼らと違うものになってしまうだろう。
いつまで続くのかわからないけど、きっと今はみんな過去と戦うための力をためている期間だと思う。私にとっても。
このいつ終わるかはわからない、まやかしのようなこの世界で、平和な時間を、他の人からしたらたわいないかもしれない笑顔を。
現実へ向かう為の力にしたい。いつか大きくはばたく為に。現実逃避にしか見えないかもしれないけれど、私達は未来へ向かって生きている。
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ほのぼのとしたノーストレスのスローライフ。
シルや雨夏がそれぞれ事情を抱えながらも、日常を通して本物の家族のように打ち解けていって微笑ましかったです。
ただシフォンの背景があまり見えてこないのが少し寂しく思えます。可愛いには可愛いのですが。
ありがとうございます。続編でそこら辺を描けたらいいなと思います。